2014年1月22日水曜日

Vol.1292 きんもくせい -1-71



「ありがとうございます そうか そんなに来ていないんだ」
「そうですよ もう随分と待たされました」
女将はクスクス笑いながら 奥座敷へ案内した 神山が
「女将 そうしたら今日は目出度いので いつもより上等の餌を一杯ね」
女将はクスクス笑いながら頷き襖を閉めた
「ナンですか 神山さん 上等の餌って」
「ははは テツに聞いてごらん なぁーテツ」
屋敷や杉田は顔を赤くして 下を向いてしまった
襖が開くと女将が生ビールや鮮魚のおつまみを運んできた
「はい 上等な餌を一杯お持ちしました 杉田さん屋敷さんどうぞ」
そう女将がいうと堪えきれなくなり 神山や洋子は大笑いをしてしまった
「女将 ありがとう あと照り焼きや簡単なてんぷらって頂けますか?」
「はいはい 上等な餌をたっぷりとお持ちしますね ふふふ」
女将も口を抑える事が出来ないで 笑いながら襖を閉めた
「さあ じゃお久しぶりでかんぱーい」
皆でジョッキをカチンと合わせ 乾杯すると絵里華がぐいぐいと呑んだ
「おぉー 絵里華ちゃん凄いね 良い呑みっぷりだ うん そうだ洋子
絵里華ちゃんのためにピッチャーを貰おう 特大のバケツピッチャー」
「はーい 注文してきますね バケツピッチャー ふふふ」
言われた絵里華は顔を赤くしたが物怖じしないで神山に
「だって 専務 杉田理事ったらいつも勢い良く呑みなさいって
だから修行っていうか訓練されているんですよ もう」
「ははは 翔 駄目だよ 苛めると後が怖いよ 程ほどに」
「はい 以後言わないようにします 絵里華ちゃん ごめんなさい」
杉田が深々とお辞儀をするので 絵里華は
「はーい お願いしますね ふふふ」
絵里華は嬉しいのか 生ビールをぐいっと飲干し
「あーあ 美味しいですね お昼のビールって ねぇー奈々子さん」
「ほんと美味しいわ ふふふ 翔ちゃんも専務のように こうやって
ビールを呑める所に連れて来てくれると点数が上がるんだけどなぁー」
杉田は何も言えないで 下を向いてしまった
「そうですよ 先輩 神山先輩と一緒だとビールが呑めるけど
杉田先輩と一緒だと ビールなしですからね もう少し考えてください」
「おいおい 翔をそんなに苛めなさんな 事情があるんだろう なあ翔」
「ええ 済みません みなさん あのぉー 挙式後のお金を、、、」
そこへ大きなピッチャーを女将と洋子が持って部屋に来た
「はい 絵里華ちゃん どうぞ ふふふ」
洋子が注ごうとしようとしたが 重たいので神山が注いだ
そうすると屋敷や奈々子もジョッキを空けて 神山に催促をした
「ははは はい 順番だよ」
注ぎ終わると神山は洋子に小声で
「洋子 部屋に戻ったら奈々子ちゃんに2千万渡してください」
洋子は何も言わずに頷いた
「さあ 奈々子ちゃん 絵里華ちゃん どんどん呑んで食べてね
今夜は徹夜でしょ 呑む方は程ほどかな ふふふ」
「洋子先輩 絵里華ちゃんは大丈夫ですよ テツちゃんや翔ちゃんよりも
全然 強くて ほんと男みたいな呑みっぷりですよ」
「へぇー そんなに強いの じゃ 二人とも安心ね ふふふ」

杉田の節約原因は挙式後の生活資金を安定させる為に 普段のお小遣いを
使わないよう努力し 会社での自由費もなるべく使わないよう努力していた
その結果 昼食や夕食時でも神山と違い 呑む事を極力避けていた
楽しく話が弾み食事が終わるとタクシーで帰社した
次長室に戻るとき安井奈々子を呼んだ
部屋に入ると奈々子は何か悪い事でもしたかと緊張していた
神山が洋子に合図をすると 2千万円の包みが出され
「奈々子ちゃん これはね 食事をするためにあげるお金だよ
催事課のみんなやGプロの仲間たちと呑んだり食べたり いいね」
安井奈々子は杉田の節約を知っているので 胸が熱くなった
「ありがとうございます 大切に使わせていただきます」
「うん翔も理事だしね もっとみんなに美味しいものをご馳走しなければ」
「はい 分かりました ありがとうございます」
「それで 足りなくなったら来なさい いいね」
「はい 本当に気を使ってくださり ありがとうございます」
「うん 元気出して ははは」
安井奈々子は洋子に見送られ次長室を出て行った
「そうね 杉田君だと 理事でしょ まだ200万円いかないでしょ」
「そうだよな まあ しかし理事だし 身内のご馳走は持たなければね」
「そうね いつもあなたが居るわけじゃないし ふふふ 見直したわ」
「おいおい 何も出ませんよ、、、 そうだ 今夜はどうしよう」
「そうか ねぇー久しぶりに上原の駅前寿司はどう? 桃子ちゃんや
由貴さん そうしたら泰子さんや香織さん真由美さんも呼べば」
「ははは そうしたら洋子に任せるよ お願いします」
「もう 自分で連絡するのが面倒なんでしょ もう 嫌ねぇー ふふふ」