「はい 大丈夫ですよ 取り皿などと一緒にトレーとラップを
用意させて頂いていますので お土産でお持ち帰りできますよ」
「そうか なるほど ありがとう 助かりますよ
しかし 凄い量ですね 魚も美味しそうだし ありがとう」
「では 私はこれで失礼します なにか不足していましたら
直ぐに伺いますので 電話をください お願いします」
「はい 今日は忙しい所 ありがとうございます」
駅前寿司の大将は亜矢子や母親に丁寧にお辞儀をすると御殿を後にした
暫くすると棟梁が儀式の準備を確認し 始まった
棟梁が棟木に幣束(ヘイグシ)を立て破魔矢を飾り 建物の四方に
酒・塩・米をまいて清め上棟の儀が無事に終了した
この後に亜矢子の挨拶があり そして母親の挨拶も行われた
棟梁が建築に携わる関係者の紹介と挨拶が行われ それが終わると
宴会になった
この時は洋子や由紀枝など女性軍が活躍をして 料理が手早く準備され
神山の音頭で乾杯が行われた
和やかに食べ始めると 亜矢子は棟梁たちにご祝儀を渡し始めた
後ろから母親がついて来て みなに丁寧にお辞儀をしていた
若い大工は 礼儀正しい母親の姿をみて 起立をしてご祝儀を受け取り
亜矢子と母親に丁寧にお辞儀をして挨拶をしていた
さすがに若い大工は良く食べ良く呑んでいた
椿は神山の隣に座り話しながら食事をしていたが
「神山さん 実は亜矢子さんが正社員を辞めたいそうなんですよ」
「やはり そうですか もっともこれだけの家ですから 仕方がないですね」
「ええ それで正社員は辞めても パートとして 都合がいいときに
日中だけお仕事をして貰おうと考えているんです」
「そうですね お母さんの具合もある事ですし
しかし 病院が直ぐ傍ですから 安心は安心ですね」
「ええ 聞きました この丘の下にあるそうですね」
「ええ 先生もいいお人柄ですよ 任せて安心です」
「へぇー そうですか それは良かったですね」
神山はやはり来る時がきたと思ったが それは仕方のない事だった
後出来る事は この家を出来る限り使い易く 住み易くする事だと思った
宴会が始まって1時間が過ぎただろうか 棟梁が亜矢子のところに来て
「桜川様 宴会をそろそろ切り上げたいのですが 如何でしょうか?」
亜矢子は驚いたが 時計を見ると12時なっていた
「はい お願いします でも まだ残っていますよ 食べてくださいね」
「はい 3時の時に又 頂きますよ でも皆さんでお土産にしてください
うちらは 少しあれば充分ですから はい」
「そうしたら ビールも残しておいて大丈夫ね」
「ありがとうございます」
棟梁は亜矢子に挨拶すると 関係者を集め始めた
神山が心配して亜矢子に聞くと 女性軍を呼び 料理のお土産を作り始めた
「亜矢子 そうそう このダンボールに入っているホテルの地酒だけど
お土産に出来るように熨斗紙が巻いてあるんだ 帰る人に渡さないとね」
「あっ そうか そうしたら勝間田社長に頼んでいくわ
私も 母が居るから早めにここを出ないといけないし」
「そうだね その話は僕から話しておくよ
そうだ 洋子たちにも分けないといけないから 今のうちに渡すよ」
「そうね 気が付かなかったわ ありがと ふふふ」
神山は地酒の入っているダンボール箱のところに勝間田社長を呼んで
理由を話し 皆に手渡すようお願いをした
「はい 大丈夫ですよ 今日は弟と最後まで居ますから
設備関係や玄関周りなど 確認事項がまだまだありますから はい」
「では お願いしますね」
神山は洋子たちを呼び 地酒のお土産を女性軍皆に配った
13時になると家を囲んでいた紅白幕が撤去され
準備していた木材や金物が敷地内に運ばれ始めた
この時間になると 家に居ると運搬の邪魔になり
施主や椿 神山など敷地内に居られなくなった
「では 神山さん お先に失礼します」
「はい ありがとうございます クーラーBOXは後日お返しします」
「はい 急がないでもいいですよ 余り使いませんから ははは」
「ありがとうございます では又 伺います」
「はい お待ちしております」
椿は亜矢子と母親に丁寧にお辞儀をし スカイラインでホテルへ戻った
「じゃ 私たちも帰りますね」
「ほんと 洋子たちが手伝ってくれたから 助かったよ ありがとう」
「いえいえ これだけ居ると何かと役に立つわね ふふふ」