祥子は時計を見てみるともう直ぐ10時になるので
「では神山さん 私 本社に行きます」
神山は祥子と代々木上原駅の改札口に歩いていった
「ねぇあなた 今夜 必ずお迎えに来てね」
「うん 分った 8時ごろになると思うけど 必ず行きます」
祥子はその言葉を聞いて軽くキスをした
神山は祥子を見送ると現場に戻った
現場監督の高橋と話をしていると直ぐに時間がたった
「山ちゃん お昼はどうするの」
「うん まだ決めていないよ」
「そうしたら いつもの寿司屋に行く?」
「うん いいけど 現場は?」
「彼らと別行動だから平気ですよ」
「では 行きますか」
高橋は神山を誘って上原駅前の寿司屋に入った
神山は高橋に昨夜の出来事を話しロレックスを見せた
「いいじゃない なかなか似合っていますよ いいですね」
「だけど いいのかな こんなに頂いて、、、」
「大丈夫でしょ 社長は嬉しい気持ちを表して贈られたのだから」
「だけどさ 結局はご自分の財布でしょ?」
「う~ん まあ 余り気にしないほうがいいですよ」
神山は高橋の答えで余り詮索をしないようにした
世間話やNHKニュースなどの話題でお昼を食べ終え現場に戻った
墨出しの続きを高橋と見ながら検査していると携帯がなった
「はい神山ですが どうした」
銀座の杉田からの電話だった
「杉田です すみません」
「なにがあった」
「はい 今夜の造花ですが 届いたのを見ると
サンプルと全然異なり困っています」
「倉さんはなんと言っている?」
「質は落ちるがないよりましだろう と言っています」
「うん、、、そうしたら直ぐにサンプルと同じものを
すぐに入れるよう言ったか?」
「まだです」
「それは だめだ 倉さんに替わってくれ」
「倉さん 神山ですが 今 翔から聞きました すみません」
「おう 山ちゃん 来週にでも変えてもらおうや」
「そうですね ご迷惑をお掛けしてすみません」
「おう しかし 今回の件は
山ちゃんが悪いわけではないから心配するな」
「ありがとうございます ここを早く切り上げ銀座に戻ります」
「おう 翔だとどうしても相手が足元見るからな 頼むぞ」
「分りました すみませんが翔と代わってください」
「おう 翔 部長だ」
「はい 杉田です」
「兎にも角にも 納品をさせるな 直ぐに電話で確認してくれ」
「はい すみません」
「こちらが終ったら 直ぐに行く」
神山は杉田との電話を終えると上原の墨出しに集中した
大きな図面を広げ実際との誤差をなるべく抑えるように仕事をした
現場の大工の腕がいいのか アウトラインの墨出しは順調に行われ
細かい所については高橋に任せる事にした
「孝ちゃん これだけきちんと出ていれば問題ないと思うよ」
「そうですね 山ちゃんが居てくれると助かるよ」
「床は問題ないとして 後は柱周りの微調整ですね」
「このままの調子で行けば 多分問題なく済むと思うよ」
「そう願っています では銀座で仕事をしてきます」
「了解です 夜 来られる時までに終っていますから、、、」
「ほんと そう願っています」
神山は現場を出てタクシーで銀座に向かった
銀座についたのは4時少し前で
催事の納品業者が動き出す少し前の時間だった
部屋に入って奥村課長や由香里に挨拶をしながら自分の席に座り
今夜造花を納品する業者に電話をした
「神山ですが、、、」
担当者はまさか神山から電話があると思っていなかったのか
「すみません どうしても材料が間に合わなくて、、、」
神山は駆け引きに出た
「兎にも角にもこちらの要望どおりに出来ないのだから、、、」
「はい すみません、、、、、」
.