「まだ大きい声ではいえないけど アレックスグループです」
「えっ あのアレックスですか」
「そう 御殿場では専用館を建て展開します」
「へー そんなに規模が大きいのですか」
「ええ そんな訳でして 済みません うちの自慢話になりまして」
内藤は御殿場の話を切り上げたかった
しかし筒井はこの青年にどこにそんな交渉力があるのか知りたかった
神山より一つしか違わないのに会社の社長で
先代の母親から引き継いだ部下や取引先を上手に運営し
さらに自分の目で確かめた神山のような人材を適用し
会社を右肩上がりの業績を残している
筒井は財力だけではなく 内藤 一哉という人間の周りに
いい仕事が付いて来ているのだと思った
筒井はしかしそれだけでこのパーティーに何故参加したのか聞いてみた
「筒井さん よく読まれましたね さすがです」
「ええ 先ほどから考えていたのですよ どうしてって」
「実は 今日この場所で僕が奥さんにプロポーズをしたのです」
「うわぁー それは大変だ いいのですか 皆一緒で、、、」
この告白を聞いて間に座っている神山や祥子 奥村と倉元は
一同驚き 皆拍手してお祝いをした
普段控えめな内藤が参加したいと言った時に
普段と違う感覚だったことがようやく分りすっきりした
祥子が神山に
「いいお話しね ねぇ 部長どの、、、」
「そうですね 温かくて気持ちがいいですね」
祥子が皆にわからないようテーブルの下で神山の手を握った
神山が祥子を振り向くと祥子はこちらの目を見ていた
神山が手を解き時計をはずそうとすると真奈美が
「今晩だけは そのままにしてください」
「はい でももったいないし、、、でもそうします」
最初は心配顔だった真奈美もほっとして笑顔になった
奥村や倉元は神山が頑張れば頑張るほど鈴やの
実力が上がり仕事にもいい影響が出ると考えていた
倉元は呑んでいる勢いもあって
「山ちゃん 次はロールスロイスでも頂きか」
「そんな~」
「そうですよ 倉元さん 私だって持っていないんですから」
皆で笑いながら食事をしていると時間が過ぎていた
筒井が貸しきりの予定時間を過ぎている事に気づき
「皆様 ご多忙の中お集まり頂きましてありがとうございます
今夜は内藤社長のご配慮で貸切にさせて頂きましたが
そろそろ と言うより時間を過ぎてしまいました
これにて閉会にさせていただきます
これからも 神山部長の応援をお願いし 〆をさせて頂きます
山ちゃんこれからも 頑張ってください それでは」
テーブルを囲み皆で一本〆を行った
神山は立ち上がって改めて 内藤夫妻に深々とお辞儀をした
筒井と祥子に向かって軽くお辞儀をし 同僚にもお辞儀をした
内藤真奈美が神山に
「神山さん ありがとうございます 先ほど地酒が届きました」
「こちらこそ 美味しかったものですから」
「私も大好きですよ あの地酒」
「良かったです 喜んで頂いて これ大切にします」
神山は腕のロレックスを真奈美に見せながら言った
店を出るときに筒井が
「山ちゃん これから2次会に行こうよ 倉さんも一緒だし」
神山は内藤から貰ったロレックスを見てみると22時を指していた
お酒は充分いけるが部屋に戻って仕事をこなさなければいけなかったし
銀座では杉田がまだ仕事をしていると思った
「しかし 今夜は部屋に戻って仕事をします」
「そうか 内藤さんも一緒だぞ」
「ええ しかし 銀座もあるし、、、」
「分った 頑張ってくれよ」
神山は皆にここで失礼する事を告げると祥子が寄って来て
「私 奥様とお付き合いするのでごめんなさい」
「いいよ 帰ったら電話を下さい」
「はい 分りました それでは頑張ってね」
神山は内藤夫妻らに深々とお辞儀をし皆と別れた
そばに止まっていたタクシーに乗り込み手を振ったが祥子だけを見ていた
祥子は後ろの方で小さく控えめに手を振って答えた
一人になるとアルタからどんどんと増える謝礼金に戸惑っていた
そんな事を考えていたが 睡魔が襲ってきて目をつぶってしまった
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