ゴテンバ グランド インでは御殿場を中心にオリジナル地ビールの
販売をしているがくちこみで美味しさが伝わり生産が
間に合わない状態だという
現在16時間体制で生産しているが
まだまだ充分に間に合っていないと言う
アウトレットオープンに間に合わせ工場の増床計画が持ち上がり
増床工事は年内にも完成する予定だという
地ビールの売上は順調で御殿場駅ではほとんど午前中になくなり
駅周辺の飲食店からも増産の声が上がっているほどだった
話しこんでいるうちに終点の沼津駅についた
「タクシーで直ぐの所です」
桜川が率先してタクシーに乗り込むと10分もかからなかった
おおきな佇まいな鮮魚料理店の玄関をくぐると
「こんにちは 亜矢ちゃん」
「お世話になります おばさん」
「おばさん 銀座鈴やの神山部長さんと斉藤さん」
「こんにちは お邪魔します」
「神山さん こちらが私の叔母さんです」
「いつも亜矢子がお世話になっています」
「いえ 今回はこちらがお世話になりました」
「では 上の左側の奥がとってありますよ」
「どうもありがとう 叔母さん」
「ではごゆっくり していってください」
店は2階建てで1階は殆どの席が地元の人や
観光客などで埋まっていた
2階にあがるとやはり満室なのだろうか明るい声が聞こえた
部屋に通されると14畳くらいの広さの角部屋で
神山は窓を開け放し潮風を受けながら漁港を眺めた
由香里も神山の傍に行き外を眺め
「いいわね この様なのんびりした海の風景って」
「ええ しかし船が入ってくると又違った風景ですよ」
「ねぇ 神山さん 記念のショットを撮影したら」
「そうだね そうしよう」
神山は由香里からフィルムを貰い自分のカメラに装てんし
広角ズームレンズも取り付けてもらった
「はい 準備できました あとはシャッター押すだけです」
「ありがとう」
神山は アングルを決めるためカメラを横にしたり縦にしたり
ズームを操作してようやく最初の1枚を撮影した
席に戻ると電源を切らずにいたので由香里が教えてやった
「神山さん ここのダイアルがON、OFFのスイッチです」
「そうか ありがとう」
話を聞いていた桜川が
「昨日の撮影のときはお持ちでは無かったですよね」
「ええ そうなの 先ほど御殿場で購入されたんですよ」
由香里は昨日の撮影で上手に撮れていたことや今後 現場で
記録写真の撮影が増えたときのために購入した事を話した
「今夜は 取り説をよく読んで使えるようにするよ」
「そうしてくださいね」
カメラの話が一段落したときに襖が開き 料理が運ばれてきた
「こんにちは 亜矢子さん」
「こんにちわ お世話になります」
桜川と由香里が手伝って料理を並べた
伊勢えびの活き作りや鯛の刺身などが並べられたが
メインはマグロ料理だった
「亜矢子さん ごゆっくりとしていってくださいね」
「はい わかりました」
仲居が襖を閉めると
「では 改めて お近づきの乾杯」
3人が乾杯したビールもグランド インのオリジナルビールだった
「凄いね ここでも美味しいビールが頂けるなんて」
「ほんと 私も嬉しいわ」
二人が誉めてくれてので桜川が頼んで置いてもらっている事や
玄関で挨拶した叔母は父親の妹で旦那は中に調理場の中に
入って殆ど出てこないなど
ここのお店の事を話してくれた
桜川亜矢子はもともと地元生まれの地元育ちで
高校生の時父親を漁で遭難し亡くしている
大学を卒業し結婚をするが相手の浮気が原因で協議離婚をする
離婚後は亜矢子が母親の面倒を見ている
亜矢子自身は会社の寮でも良かったが
三島駅前の賃貸マンションで一人暮らしをしている
「なんで 会社の寮に入らなかったの?」
「ええ 寮だと気晴らしが出来ないじゃないですか
特に私のような勤務になると それでやめました」
「そうよね 会社で会っている人と寮でも会うとなるとね いやよね」
「そう 分るでしょ 由香里さん」
「ええ 亜矢子さんの言うとおりよ 学校を出たばかりとは違うしね」
女性同士 年が近いせいか話が良く弾んでいた
由香里は由香里で新しい話し相手が出来たようで
亜矢子は今まで付き合ってきたタイプと違うのかよく話した
神山がタイミングを見て
「ねぇ そうしたら 3人で記念写真を撮ろう」
「そうね」
「そうしたら 僕のカメラで撮影をしよう 三脚も有るしね」
「はい 神山部長殿」
由香里が少しくだけると皆大笑いし和んだ空気になった
カメラを三脚にのせ セルフタイマーをセットすると
神山を真中に女性が両脇に座った
由香里も亜矢子も手を膝の上に置いていたので
神山が両手を二人の肩を組むようにした時にシャッターが切られた
「ねぇ もう一枚撮りましょう 今の動いていたから」
由香里がそう言って セルフタイマーをセットし席に戻ると
今度は最初から3人がお互いの肩を組む体制でシャッターを待った
いつまで経ってもシャッターが切れないので 神山が
「由香里殿 まだですか?」
「ごめんなさい 見てきます」
みな少し緊張をしていたのか ため息がでた
由香里は 今度はきちんとセットしたから切れる筈ですと笑わせた
肩を組んで笑っているところが撮影された
由香里の失敗で心が打ち解けたかのように良くしゃべった
並べられた料理を食べられないかと思われたが 綺麗に食べた
神山はお会計を亜矢子に頼むと
「そんな ここは私が払いますから 神山さんは、、、」
「そんな事出来ませんよ お支払いしますよ 受け取ってください」
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