2010年12月15日水曜日

Vol.158 若葉 -6-13

「筒井さん 山ちゃんと詰めをしますので先にお願いできますか」
「うん分ったよ では久保君 先に行きましょう」
皆がショップから出た後で
「はい これは社長から そしてこちらはカメラ代」
茶封筒を受け取った神山はその厚さに驚いた
「どうしたの こんなに」
「いいの 社長上機嫌だよ ほんと 僕らも大入り袋を貰った」
「よかったね では頂きます そうそうこれが領収書です」
「いよいよカメラマン誕生ですね」
「そんなこと無いよ」
「アウトレットのプリントがあったけど あれは誰が撮影したの?」
「あの写真は僕が撮影した」
「ほんと? あの写真がプレゼンで効いたよ」
「えっほんと 良かったね」
神山と高橋は筒井たちが向かった駅前の寿司屋に行った
店に入ると筒井の隣に祥子が座って反対側に
アルタの内野と田中が座っていた
神山は祥子の隣に座り高橋は内野と田中の間に入った
すでにビールがきていて田中と内野が皆にビールを注いだ
祥子にビールが注がれ高橋が
「それでは 今日はお忙しいところをありがとうございます
筒井さん 久保さん そして神山さん ありがとうございます
先ほどの最終確認で工事はスタートします
こんなに早く進められる事も皆様のお陰です
アルタからの気持ちです どうぞごゆっくりしてください
それでは 工事の無事を祈願して 乾杯」
高橋の音頭で皆乾杯をした
乾杯を合図に鮮魚の活き作りなどがテーブルに並べられた
思い思いに箸が進むなかで筒井が神山に話し掛けてきた
「今日のご予定はどうなっていますか?」
「これから銀座の店に行き それからは何も決まっていませんが」
「そうしたら今夜時間を作ってくれないか?」
「ええ いいですよ 連絡を待っています」
「うん 頼む 5時くらいまでには連絡をするよ」
神山たちは握り寿司を食べ『儀式』を終了した
祥子に
「先ほどの件で 少し遅くなります 先に済ませてください」
「何言っているの 私も同席よ」
「はあ?」
「だから 帰りは一緒ですよ」
「なんなの」
「今度はニーナ・ニーナが鈴やさんをご招待するのよ」
「はあ 大変だね」
「仕事が早く進んでいるので筒井も上機嫌なの」
「なるほど ありがとうです そうすると僕一人ではない訳だね」
「そうね 催事課の人と店長さんもお呼びする予定だって」
「えっ 店長まで」
「しかし 突然なのでスケジュールがまだ決まらないと言っていたわ」
二人が話していると背後から筒井が
「そうなんだよ 突然で失礼したよ
しかし完成の時には参加してもらうよ」
「そうですね オープンの時は参加してもらいましょう」
「久保君 それでは僕は先に会社に戻るよ」
筒井はアルタの高橋らとタクシーで会社に戻った
「これからどうするの」
「私は このまま会社に戻って今夜の準備です」
時計を見た神山はまだ時間があるので
「そうしたら 少し散歩しながら行こうか」
「ええ 気持ちがいいですね 久しぶり」
静まりかえった高級住宅街を腕を組んで歩いた
話題は御殿場アウトレットの話が中心だった
後楽園ドームがいくつ入るか分らない広大な敷地の事や
会場に入る店舗の話しなどで盛り上がった

丘を下りきると少し歩けば渋谷だったが
神山はタクシーを止めて祥子と乗った
運転手に青山3丁目を経由して銀座を告げると窓を開けた
4月らしい気持ちのいい爽やかな風が入ってきた
タクシーが信号で止まると 初夏の装いを楽しんでいる人で溢れ
横断歩道を歩く白のTシャツが眩しく映える季節になってきた
祥子の本社ビルがある青山3丁目には直ぐについた 
「それではお先に失礼します 今夜ね」
祥子を降ろすと銀座に向かった
事務所に着くと3時を少し廻っていた
「おはようございます お疲れ様でした」





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