神山は以前ニーナ・ニーナの新作発表会の時
祥子に教えて貰った店に行く事にした
地下鉄まで歩くのが億劫なのと乗り継ぎが嫌だったので
タクシーで向かう事にした
東銀座の歌舞伎座に来るとタクシーが客を待って列をなしていた
銀座から赤坂を抜けて表参道についた時6時を少し前だった
繁盛しているのだろう 店のたたずまい脇にある緋毛氈の長いすに
数人が座り順番を待っていた
神山は予約を入れておいたので2階にある畳の個室に案内された
まだ祥子は来ていなかった
神山は生ビールと蒲焼のおつまみをたのんだ
2階建てのこの店は1階がテーブル席と少人数の個室で
2階は畳の大部屋と個室になっている
並んで順番待ちをし通される所は1階のテーブル席で
そこが満員になると2階の畳の大部屋に通される
畳の個室は運良くないとほとんど利用できない場所であった
生ビールと枝豆が出て来たときに祥子が現れた
「こんばんわ お待たせしました」
今朝 会っているのに暫くぶりで逢ったように錯覚を覚えていた
今夜の祥子はいつに無く輝いて見えたからだ
店舗の契約が取れた事の喜びからきているのか 明るい表情だった
「私 ここの生ゆばさしを食べたいな おいしいよ お勧めです」
「そしたら 追加しよう」
部屋の隅に置いてある電話で追加注文をした
程なく祥子の生ビールとつまみが来た
「契約が取れて おめでとう」
「ありがとうございます」
「では 乾杯」
二人はビールを呑みながら 今日の出来事を話し合っていた
祥子は筒井が林のことなどを そこまで考え抜いて采配を
している事をはじめて知った
「その話しからすると 筒井さんとしてはどうしても私が
上原に住まなければ成らなかったのね」
「そう だからホテルの件もタイミングがよかったのかもしれない」
「う~ん そうね」
祥子はそれ以上の詮索は止めた
生ビールを飲干した時に ひつまぶしが運ばれてきた
二人はうなぎの美味しさを順番に堪能した
神山は銀座で食べた事があった
最後は椀にだし汁を注ぎ食べるのが美味しかった
「わあ 美味しかったわ 神山さんと一緒だととても美味しいわ」
「ありがとうございます 僕も祥子さんと一緒だと楽しいよ」
二人は電話で会計を頼み襖を開けようとした時
どちらからともなく熱いキスを交わした
1階のレジで会計を済ませ表に出た
今夜は土曜日なのでうなぎ屋おおたの外では長椅子に座って
順番を待っている人が大勢いる
「祥子さん 明日の予定はどうなっているんですか」
時計は20時なのでまだ充分 最終電車に間に合うと思っていた
「明日は休みなんですが 朝一番で お仕事と私事で名古屋に
出張で6日の月曜日の午前中に帰ってきま~す」
「そうか う~ん 僕は明日は休みなんだけど どうしようかな」
神山は祥子にニーナ・ニーナ出向で祥子のマンションに住む事や
出向部長になることを伝え 明日は横浜から荷物を上原に
運ぶ事などを話すと祥子は自分のように喜び
「凄いわね おめでとうございます 私 凄く嬉しいわ」
「うん これから 分からない事があったら 直ぐ傍だから
なんでも聞きに来ていいよ もっとも分かる範囲だけどね」
本当は祥子を欲しいから今夜も泊まると言いたかったが
着替えが無いので躊躇していた
「神山さん すぐそこのお店で 明日の着替えとかを買えば
今夜は一緒に居られるでしょ それに買いおきしてもいいし」
「うん そうだけど」
「だったら 膳は急げ 行きましょ」
祥子は神山の手を取ってその店を案内した
アメリカンステージという店に入るとアイビーを中心とした
ファッションがところ狭しと店内に飾られていた
二人は神山に合う服やカジュアルシューズなど選んでいった
下着を選ぶときになって祥子が赤のビキニブリーフを選んだ
「えっ なんで赤なの」
「赤は 元気が出る色として言われていの ふふっ げ・ん・き君」
神山は祥子の勧めで赤いビキニを選んだ
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