アレルギー性なのかしら 肌に合わないと
すぐに荒れてしまうので付けない事にしているの」
「へー 凄い肌の持ち主なんですね
だって お化粧している人より全然綺麗で輝いているよ」
祥子は少し恥ずかしながら顔を赤らめた
お化粧をしない事の恥ずかしさと
肌の特異性を褒められた事に対してだった
神山はその赤くなり恥ずかしがっている顔を見逃さなかった
(お化粧をしないで大丈夫なんて よく言った ごめんなさい)
祥子は神山の顔をじーっと見つめ
「本当に綺麗? 輝いている? そう思っていますか?」
何かを訴えるような凛とした目つきで迫ってきた
神山は 言葉に詰まったが 自身思った本心なので言い切った
「本当に輝いていますよ 貴方のような女性を見たことが無い」
祥子は目を赤くなりながらも神山の目を見据えていた
(こんなに美しくて 凛としたところがあり なんという女性だ)
神山はなんとしても自分の女にしたかった
待っていたエレベーターが来た
箱の中でも祥子は神山の目を見つめていた
もしかしたら今朝でお別れかもしれない女に愛をこめてキスをした
グランドフロアに着いたときに
「ねえ 私のこと しょうこ って呼んで下さいね
だって まだ一杯お逢いしたいし
今夜も色々と作戦会議しなければだめでしょ だから」
祥子は神山の腕に自分の腕を絡ませ出口に向った
二人だけのフロアではハイヒールの音がリズミカルに響いていた
代々木上原の高級住宅街は朝9時だというのに
静寂で行き交う人もまばらだった
石壁で囲まれた門には黒塗りの車が横付けされ
主人を待つ運転手は無表情でバックミラーを覗いていた
この時間の出勤なので大会社の役員だろうと思われるが
それにしても立派な外車だった
4月の優しい風を受けながら二人は小高い丘を下っていた
腕を組んで離さない祥子は豊かなバストを
神山に押し付けて楽しそうに歩いていた
今日の祥子は濃紺で薄手の上下を着ていた
季節に合う色を選んでいるせいか 一見平凡に見えるが
シンプルなデザインとアクセサリーで輝いているため
周りの男も振り返っていた
「では 神山さん 有難うございました」
「私は少し早いので そこでコーヒーを飲みながら作戦を練ります」
「はい 久保さんがんばってくださいね」
「しょうこ ですよ もう ふふふ」
すこし甘えた口調で言いながらクスクス笑ってた
「はい 祥子さん」
「そうしたら会社に着いたら早速 筒井さんにアポをとって見ます
夕方になるかも知れませんが 必ず連絡を入れます」
「はい 吉報をお待ちしていますね」
「今夜の会合場所はその時に決めましょうか」
「そうしてください 私もここの交渉が終わったら
会社に行きますけど 夕方のほうが 落ち着いてお話できますよね」
神山と祥子は今夜また逢える事を約束したためか元気だった
「では」
「はい いってらしゃい」
改札口に行く神山の背に祥子は控えめながら手を振っていた
神山が事務所に入ると
「神山さん おはようございます
売場から電話が2件と伝言が来ています」
経理を担当している斉藤由香里が近づきながら伝えてくれた
席に座るとなるほど 電話連絡の内容と伝言メモが置いてあった
コーヒーを持ってきてくれた斉藤由香里が
「神山さん 夕べ帰っていないでしょ」
「えっ 分る?」
「分るわよ だって徹夜の時は着替えのシャツに着替えているでしょ
今朝の神山さんは 中途半端だもの」
よく観察してもらうことは別に構わないが
余計な詮索までは遠慮して欲しかった
「そしたらさ 売場でもサイズ分っているから
いつものシャツを2枚くらい買ってきて」
「は~い そしたらお昼ご馳走ね ありがとう」
由香里はお昼ご飯の約束事か神山の秘密を知り得た事の
喜びか嬉しそうな顔をしながら神山の社員カードを
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