「可愛らしいですね」
「ええ パリのホテルに宿泊した時 毎日見ていると
余りにもお気に入りになったので
帰国する時ホテルの方から記念に頂いてきました」
「へー メイドイン・パリ ですか」
「いいえ 使っているホテルはパリですが
製作はマイセンとおっしゃっていましたよ」
「なんと あのマイセンが 特注品を製作するとは驚きですね」
「ええ しかし東ドイツ時代のマイセンと
今は少し変わって来ているみたいですよ」
「具体的には?」
「例えば 東の時は伝統を守る為に必死でしたが
今は世界にもっとマイセンの良さを知ってもらう為に
世界各国でマイセン展示会を開いているそうです」
そう言われれば鈴やや他の百貨店でもだいたい3年周期の感じで
この頃マイセン展示会を行なっている
なるほど 販売政策の一環だったのか と思った
神山自身もマイセン展示即売会の会場装飾を担当した事があるが
そこまで気が付かなかった
「私はタバコでなくて ドライのスモールシガーを時々嗜みますよ」
「いや 凄い趣味ですね シガーとは」
「ええ あの香りが一日の疲れを癒してくれますから、、」
「どんな銘柄を 楽しんでいるのですか?」
「その日の気分にもよりますが カフェ・クレームが多いです
大きさはタバコと同じ位ですが 少し細身のところが可愛くて、」
「シガーって 結構きついでしょ」
「う~ん 私の場合 煙を飲み込まないでふかしているだけですから
そんなに感じませんよ お部屋の中にシガーの香りが
漂っているとすやすやと眠りにつけますよ」
「へー そのような癒しがあるんですね
それでしたら どうぞ僕なんかに遠慮しないで楽しんでくださいよ」
「よろしいですか? 女がタバコなんて嫌われますよね」
「そんなことは無いですよ ご自分の時間が楽しくなれば
問題ないでしょ それに 気分を癒す為に香りを楽しむのなら
是非 僕にも楽しませてくださいよ」
「お勧め上手ですこと た・か・く・ら・さ・ん」
祥子はキッチンの造り棚からいくつかスモールシガーを持ってきた
カフェ・クレーム(ブルー)、パンサー(デザート)、
ウイングス(ダーク バニラ)3銘柄をテーブルの上に置いた
「神山さんはシガーを吸われた事がありますか?」
「自分から すすんで吸った事は無いですね」
「そ・う・し・た・ら このウイングスが 良いかもしれませんよ」
「バニラの甘い香りの虜になると思います」
「では お勧めの逸品を頂きましょう」
祥子は今度はブランディーを持ってきた
ブランディーグラスに琥珀色の液体が注がれた
「では 乾杯!」祥子は湯上りのせいか ほほが薄っすらと
綺麗なピンク色に染まっていた
二人でブランディーを味わいながら ウイングスを楽しんだ
広い空間が甘いバニラの香りでおおわれた
とりとめのない話がひと段落すると
神山は少し眠ったくなったのか空あくびをした
「神山さん ごめんなさいね こんな遅くまでお付き合い頂いて」
「そんなことは無いですよ いつも遅いほうですから」
「でも神山さんは明日早いのでしょ そろそろ 寝ましょうか」
「そんなに早く出社しなくても大丈夫ですけど そろそろ寝ますか」
「私は あちら側のベッドで寝ますから
神山さんはこちらのベッドでお休み下さい」
「えっ 良いのですか 僕はむこうのベッドで構いませんよ」
「私は普段寝ていますから どうぞこちらのベッドでお休み下さい」
「では お言葉に甘えますよ
でも嫌ですよ 寝てからやっぱりこっちが良かったは」
「ええ ある得るかもしれませんね」
祥子は可愛い小悪魔の顔で言った
神山は立ち上がると甘いバニラの香りによった 祥子を見ながら
「では お先に失礼しますね おやすみなさい」
「ええ おやすみなさい ところで明日は何時にお目覚めですか」
「久保さんに合わせますよ」
10時の打ち合わせまでに出社すれば大丈夫だった
「私は10時にショッピングモールに向います 大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
「では8時ごろのお目覚めで平気ですね」
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