2010年8月28日土曜日

Vol.49 出会い -4-4

「うん 林君に辞められると困るので 
早急に人事異動をしなければいけないのだが、、、」
筒井はまた困った顔になった

「ほら林君は知っている通り 少し男癖が悪いところがあるだろ」
「はい 噂にはよく耳にします」
「既婚者だからと言って 旦那を御殿場まで連れては行かないと
思うのだよ それに旦那はこちらでの仕事だからね」
林恵美の旦那 林隆は東京を中心とした什器リース会社の社員で
百貨店やスーパーなど催事替えの時に什器類の入れ替えをしている
少人数の会社なので運転手から全てを任されていた
当然だが恵美との会話は少なくなる
「今 探しているのは 林君の面倒を見れる男を捜しているのだよ」
「えっ そんな~」
「だって よく考えたまえ 林君を一人にしたらどうなると思う
それこそ 御殿場計画はお釈迦になってしまうではないか」
「それはそうですけど しかし、、」
「企業を発展させるには ある程度犠牲が必要になって来るのだよ」
筒井は配下にある駒の情報を正確に把握していた
久保祥子のマンションに付いてもきちんと計算ずくであった   
新店舗となればいくら浜野由貴が頑張ってもなかなか売上は伸びない
そこで久保を近くのマンションに住まわせれば 
浜野の面倒を見ながら一人前に育て上げると確信していた
近くに居れば朝の準備や夜のミーティングなども
スムーズに行われるだろうと考えていた
神山は筒井の考え方には全面的には賛成できないが
企業として生き残るためには仕方の無い部分もあると考えていた
会社を成長させるには色々なファクターが有るが
筒井の先を読む目にはいつも敬服した

神山は化粧室に行くときに時計を見たら17時を指していた
座敷に戻る時 祥子の連絡をどのようにしようか考えていた
多分 賃貸借などの契約が取れ喜んでいる顔が浮かぶが
この状況だと電話出来なかった
襖を開けたら新しいおつまみが来ていて づけも置かれていた
席に座り筒井にこのづけを聞こうかと思ったときに襖が開いた
倉元が入ってきた
「おう やっているな」
神山がきょとんとしていると
「山ちゃん 匂いで分るのさ」
筒井と倉元は昼間の電話でここで会う事を約束していたのだ
倉元が入ってきたので神山は自分の座布団を下座に移し 
新しい座布団を上座に用意した

「今日は 店長の機嫌がいいから出てきた」
「よかったね 神山君」
筒井が満面の笑顔で言ってくれた
「お祝いだ」
神山は倉元にビールを注いだ
倉元と筒井は神山を誉めていたが自身はお尻がかゆかった
神山はこの二人の呑んべいと付き合うとここを出るタイミングが
無くなってしまうので
「倉元さん 実はもう一件打ち合わせが入っているので
ここで失礼させて頂きます」
「おう ご苦労さん」
「筒井さん 今日はご馳走様でした 色々と勉強しました」
「いやー 元気で頑張ってくれよ 銀座も頼んだぞ」
「はい 出来る限りがんばります」
神山は二人に礼をし座敷を後にした

外は赤く 夕焼けが銀座のビルを赤くしていた
神山は祥子に連絡を取った
「久保さん 神山です 遅くなってすみません」
「おつかれさまです 今 どちらに居るの?」
「銀座です 今まで筒井さんと打ち合わせをしていました」
「どうもすみません 私の為に大変でしたね 
こんな時間までごめんなさい」
「いえそんな事ないですよ どこで待ち合わせしますか」
「神山さんがご存知のところでいいですよ」
「そうしたら 表参道の有名なうなぎ屋おおたではどうですか?」
「ええ いいですよ 私も1時間くらいで出られますので
先にお店に入っていてください」
「はい 吉報をお知らせしますよ」
「わあ 嬉しい 待っていてくださいね」





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