2010年8月14日土曜日

Vol.35 出会い -3-3

祥子の顔が明らかに曇ってきたので
「そうしたら僕が筒井さんと話してあげましょうか」
「えっ そうして頂くと本当に助かります」
「でも ご迷惑ではないですか 筒井は出向の身ですし、、、」
「大丈夫ですよ 任せなさい」
神山は筒井との出会いや仕事を教えて貰った事を簡単に説明した
「それでしたら お任せしますね おねがいしま~す」
祥子の顔はぱっと明るくなった
神山はそんな祥子を見て愛おしく思えた

時計を見たら26時を過ぎていた
一仕事終わった安心感からか明るい声で
「神山さ~ん お風呂に先にお入り下さい」
「はい ありがとうございます お先に失礼します」
入り口左側に在るユニットバスに案内された
ドアを開けるとトイレットとバスが一緒になっていた
神山はそこでも驚かされた
正面のガラスからは夜景が綺麗に見渡せるのだ
バスも大きくて一人で入るのには大きすぎた
ジャグジー付きでガラス張りのバスなど入ったことが無かった
「着替えはここの棚において置きますね」
「はい 分かりました では早速失礼します」
ドアを閉め祥子が出て行った
神山は全部脱ぎ捨て バスに浸かった 気持ちよかった
バスの縁にメモリが刻んだダイアルが有った
ちょっと回してみたらバスの照明が暗くなった
壁にあったガラスが色を変え寝室を映し出していた

寝室からは幅の広い姿見だなと思って見ていたが
マジックミラーに成っていたのだ
ダイアルを一杯に回すと浴室内が真っ暗になり
フロアから天井までガラスと化したマジックミラーは寝室の
祥子が動いている様子が良く見えた
もう一つのダイアルを回すとトイレの照明が落ちた
これで完全にこの部屋は真っ暗になった
外からの光しか入ってこなかった
横にあるボタンを押すとジャグジーが作動し下から横からと
カラダを浮かす勢いで泡が出てきた
コントローラーでジャグジーの勢いを調整できた
そんなバスタイムを楽しみながらマジックミラーを眺めると
ベッドメイクをしている祥子を見ていた
カラダが前かがみになった時 
豊かなふくらみがTシャツの間から見えたような気がした
ベッドメイクが終わると大きい姿見の前に来た
神山の直ぐ目の前である 乱れた髪を直していた
ここからは低くてよく見えないが 
あの大きいベッドで二人で寝るのだろうか?
また 神山は不謹慎な事を考えてしまった
あらぬ事を考えていた時 祥子の姿が消えていた
バスのドアがノックされ少し開かれた

「あら 真っ暗 神山さん 何している~の」
「あっ そのぉ 今 色々あるコントローラーを触っていたら 
電気が消えて真っ暗になってしまいました」
「やだぁ~ そのガラスから私のことを観察していたのですか」
「あっ いいえ あの そんな 夜景を見ていました」
神山は訳の分からない事を言っていた
バスに浸かっていると夜景ではなく 夜空しか見えないのだ
「余りにも静かだから 寝てしまったのかと思いまして 
覗きにきたのよ よかったわ お風呂で寝ないでくださいね」
「すみません もう直ぐ出ます」
「いえいえ ごめんなさい 夜景をたっぷり満喫して下さいね」
祥子は意味深な事を言ってドアを閉め去っていった
神山はどきっとした 
自分が思い描いていた事を悟られてしまったと恥じていた
神山は部屋を明るくしてボディーシャンプーでカラダを洗った
いきり起った下半身に冷水を浴びせ鎮めようとしているが
なかなか治まらなかった
数分の間冷水を掛けていると段々と小さく普段の状態になった
着替えが置いてある棚に目をやると 
ターゴイズブルーのガウンとパンツがあった
触ってみるとシルクサテンの共生地で作られたものだった
顔に近づけると洗剤の良い香りがしていた
しかし洗濯済みという事は 以前に誰かが使った物なのかな?





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