筒井は神山に上原の入居先地図とキーカードを渡した
神山は地図を見ると 祥子のマンションと分かったが
ここはまだ知らない事にして 話を聞こうと思った
「随分と高級住宅街じゃないですか ここら辺って」
「うん 上原の店舗の事を第一に考えると ここが一番なんだ
それから そのうちに分かるから 話しておくけれど
ほらチーフの久保祥子君も ここに住んでいるんだよ」
「あの久保さんがですか そうすると連絡も密に出来ますね」
「うん そうなんだよ」
神山は嬉しかったが 喜びを隠して聞いた
「筒井さん 家賃はどうなっているんですか?」
「そうか まだ聞いていなんだね 上原はニーナ・ニーナ持ち
横浜の家賃はアルタさんが 負担してくれる事に決定しているよ」
神山はこれで少し纏まった貯金が出来ると喜んだ
「それでこのキーカードの暗証番号だけれど
社員カードと一緒の6桁にしてあるよ」
「はい ありがとうございます」
神山はこれで祥子と密に連絡が取れるだけじゃなく
行き来し美味しい料理も食べられると 喜んだ
「筒井さん 昨夜久保さんと一緒になりまして相談を受けました」
「そうか 昨夜は上野公園でお花見だったんだよ」
「僕が帰ろうとした時にばったりとお会いして
スタッフと呑みに行ったんですが 皆が帰った後
随分と上原のスタッフの件で悩んでいるみたいでした」
「そうか~ 君はどう思う 林君と浜野君を観て」
「僕自身は 浜野さんの方が明るくて品格があり
あの場所にはハマリ役だと思いますが、、、」
「う~ん 実際のところ僕自身も困っているのだよ
実は 林君があの店には私が向いている
上原に行かせてもらえないのなら会社を辞めると言い出したんだ」
「随分と 筒井さんを困らせますね」
「そこで 久保君には悪いけど
林君をあそこに行かせると伝えてあるのだが 困ったものだ」
神山はなぜ林が上原に固守しているのか聞いてみた
「思い当たるのは 売上に対してのインセンティブに在るみたいだ
銀座店は売上の何パーセントかを地場代として引かれるわけだが
上原は地代が固定なので売上がよければいいほど
それだけ余計にインセンティブが入ってくる仕組みさ」
「恐ろしいですね女は そこまでして自分がなりたいか ですよね」
「困ったものだ 本当にいい手がないか困っていたところなんだよ」
筒井は先ほどから困った困ったを連発していたが
何か妙案があるらしく 真に困った様子でもなかった
「実は神山君 内緒だけどな 絶対内緒だぞ」
「ええ なんですか」
「御殿場のアウトレットが出来ることを知っているかね」
「ええ 新聞などのメディアで騒がれていますよね」
「うん 後1年後位で立ち上がる所なんだけどね
そこの準備で林君に行ってもらう事を考えているのだよ」
「そうすると 銀座店はどうなるんですか」
「今回 神山君が銀座に来ているように
銀座は様変わりしようとしているんだ
そこで 本社にいる人間を 上原で少し鍛えてから
銀座の店長にしようと考えているのだ」
筒井は自分の考えを神山に話した
林が銀座にいる時に新人1名を育てる
その時 同時進行で上原でも浜野が新人を育てる
しかし上原で育てる新人は銀座店の店長で任せられるように
育て上げなければいけなかった
「えっ いっぺんに2名も銀座店に来るのですか 新しい子が」
「うん 実際問題販売実績がないと 任せることが出来ないだろな」
「いいお考えだと思いますが 本社事務がお手すきにならないですか」
「うん 僕が困っているのはそこなんだよ」
「久保君のようなスーパーウーマンがもう一人いてくれれば
本当に助かるのだが どうしたものか困っているんだ、、、」
筒井は手薄になる本社スタッフをどのように 切り回したらよいか
考えあぐんでいた
生ビールを2杯ずつ飲干した後
二人は無口でえびかつカレーセットを口に運んだ
食後のコーヒーが出てきた時
「神山君 これからどうする 部屋にかえるの?」
「いいえ 筒井さんの事だからアルコールと決まっていますから
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