2010年8月2日月曜日

Vol.23 出会い -2-2

玄関の中から女性の声が聞こえてきた
「どちらさまですか?」
「銀座店の神山です」
扉が開くと そこには昔のまんまの亜紀ちゃんがいた
「わぁー 神山さん いらしゃい」
「おー 久しぶり 元気そうだね 昔のままだ」
玄関で話していると 奥から義男が現れて
「ようやく来たな まあ上がれよ」
「うん 失礼するよ 赤ちゃんは?」
「先ほどから 昼寝をしているよ 見てみる?可愛いぞ」
義男は顔を崩し 子供を早く神山に見せたかった
奥の座敷にはいると 2台のベビーベッドに赤ちゃんが寝ていた
「しかし 大変だな 2人とも小さいと」
「でも 楽しいもんだよ 年子だから 双子のようさ
片方が泣くともう片方も一緒になって泣くし 不思議だな」
「そうか ふーん」

座敷を離れると 金子が
「こっちの座敷を使おう こいよ」
金子が案内したのは 寮として食事の時に使う座敷で
50人くらいが入れる 大広間だった
ここは障子を開けると 熱海の海が見渡せる最高の場所だった
金子は 障子を全部解放し ガラス窓をあけた
「わぁー 気持ちがいいなー」
「そうだろ 眺めも最高だし 申し分ないよ」
「ははは 浦和とは環境が全然違うな」
「うん 空気がいいから 子供達も喜ぶよ きっと」
「そうだ これ持って来た」
神山は日本酒2本とビール1ケースを差し出した
「手ぶらでいいといったのに」
「ははは 俺が呑む分だよ」
「酒やビールは 倉庫に腐るほどあるよ 心配するな」
「そうか そうだよな 次から持ってこないよ ははは」
二人は神山が用意したビールを呑み寛いだ

「まあ 早いのね もう呑んでいるの よっちゃん」
二人が呑んでいるところへ亜紀がお茶を持って来た    
「ははは 今日は開店休業だ 設備関係の仕事はないし」
「そうか 今度は自分で点検までしないといけないんだよな」
「まあね しかし 前の人が素人だったから ここに来る前に
工事屋に全て点検させて 修繕は済んでいるんだ
だから安心は安心だよ 新品まではいかないがな」
「ねえ 神山さんに温泉に入って頂いたらどう」
「そうだな 山ちゃん 温泉にはいってこいや」
「そうするか」
「じゃあ 今夜の部屋を案内するよ」
金子の案内で 今夜寝る部屋に通された
部屋に入り 金子が障子を開けると先ほどと同じ風景だった
「一つ上だけ 見晴らしがいいと思うよ」
「ありがとう いい眺めだな」
「風呂は知っているよな」
「うん 一番下で 廊下を曲がったところだろ」
「今日は女風呂に入ってもいいぞ」
「ははは 時効だろ」
「温泉も入っていないし 何も無いよ よかったらどうぞ」

神山は タオルを借り温泉に入った
ここの温泉は天然温泉で源泉を引いていて 温泉効果も充分だった
この浴室は源泉を引く関係から海側とは反対側の位置にあり
マドをあけても 山肌の斜面しか見る事が出来なかった
もう少しお金をかければ 海側に温泉を持ってくることが出来たと
業者が話していた

結構大きい浴槽で 20人くらいは充分に入れる広さだった
一人で入っている気分は贅沢をしているようで 気持ちよかったが
少し汗が流れてきて 長湯は出来なかった
神山は脱衣所で扇風機を回し涼んでから浴衣に着替えた
部屋に戻ると 座卓にメモが置いてあり読んでみると
「山ちゃん 食堂で待っている ネコ」
一瞬 食堂?と思ったが 先ほどの座敷の事と思い出し
タオル片手に 食堂に入ると金子が手招きした
「どうでしたか 長旅の疲れはとれた?」
「気持ちよかったよ」
「こんな時間だから 余り料理が無いけれど 呑もうよ」





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