金子は神山が温泉に入っている間に 亜紀と一緒に料理を作った
「わぁー ごちそうだね ありがとう」
「かあちゃんは子供が寝てから お付き合いできるよ」
「そうだよな まあ無理しないでいいよ 顔見ただけでも嬉しいよ」
「綺麗だろ 今でも」
神山は正直綺麗と思ったので頷いた
「ごめんなさい 遅くなって 子供が寝ました」
「いいよ亜紀ちゃん さあビール」
「すみません 神山さん 先ほど電話が鳴りっぱなしで
それで起きちゃったんです」
「いいですよ そんな 一緒に寝ていても」
「そうそう それでね その電話ですが よっちゃんから話して」
「うん 明日ね 上野の電気とサービス課合同の花見があるんだ
それで 俺と山ちゃんが誘われた訳さ
俺は勿論断ったけれど 山ちゃんは近いから是非参加して欲しい
って その電話だったんだ」
「えっ なぜここにいるのが分かったんだろう」
「ははは 俺が教えたのさ 銀座店に電話をしたら
もう帰りましたと言われ 自宅に架けても居ないし
携帯に架けても出ないので どうしましょうって悩んでいたから
ははは 今 来ているよって教えちゃった まずかった?」
「ううん いいけど携帯かぁー 寝ていたから分からないな」
「ははは それで起きていたら 横浜だよ」
「そうだ その通り」
「じゃあ 山ちゃん サービス課の可愛い子ちゃんが一杯来るけど
肌着だけでも着替えたほうが いいんじゃないか」
「そうよ 何があるか分からないわ」
神山は金子と亜紀の二人に言われると その気になって
「じゃあ 駅前のデパートで買うか」
「山ちゃん 買うんだったら 下の外商で買ってあげたら」
「えっ 外商で買えるんだ」
「今はお得意さんの関係で 肌着からスーツまで販売しているよ
それに社員割引できるし そうだジャケットもいいのがあるよ」
神山と金子は呑むのを一時中断して 熱海外商部の売店に入った
「おや 珍しい山ちゃん どうしたのその格好は」
迎えてくれたのは 売店長の高野肇で上野店のとき良く呑んだ
仲間だった 年は神山より4つ上だが話がよくあった
高野も2年前の人事異動で熱海にきたが住まいは
二ノ宮のままで毎日 熱海まで通勤している
「ええ 乗り越しで伊東まで旅行しました」
「またやったんだ さては犯人はネコちゃんだ どうだ」
「ははは 当たりです」
「で どうしたの 浴衣半纏姿できてさ」
「ええ 明日お見合いがあるんですよ それでここで買おうかと
下着からシャツまで」
「えっ お見合い、、、山ちゃんが、、、」
「高野さん 冗談ですよ 山ちゃん 明日花見があるんです
それでサービス課が来るんですよ なので今日着たものだと
何があるか分からないから せめて肌着は着替えようって」
「なんだ 驚かさないでよ そうか でもLL判は種類が
そんなにないんだよ」
「大丈夫ですよ L判でも 多少窮屈でも」
「スーツはないんだな ジャケットの素敵なのがあるよ
少しおしゃれなシャツと一緒にいれたんだ」
神山はシャツやジャケットを試着しちょうど良かったので買い
肌着類も購入し 決済はすべて社員カードを使った
金子は帰り際に高野を誘うが 家庭の事情で断られた
神山は寮に戻ると金子の勧めで 今日着たものをダンボールに
詰め込み 宅配便で自宅に届くよう手配した
食堂に戻り ひと段落すると亜紀がやってきて
「今夜のおかずはどうしますか よっちゃん?」
「おかずって言ってもなぁー」
「ははは いいですよ これだけあれば充分です」
「まあ 神山さんって優しいのね 昔と変わらないですね」
「おいおい 確か上の子がお腹の時に合っているじゃん
そんなおじさんにしないでよ まだ若いつもりだし」
「今年 幾つ?」
「42ですよ ネコと同い年 これも忘れたの? 困ったな~」
みんなで大笑いした
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