2010年8月31日火曜日

Vol.52 出会い -4-4

妖艶な上目使いで神山の目を見て言ってきた
神山は吸い込まれそうになったので ちょっとだけ目をそらした
祥子はそれを見ていた
「やっぱり 神山さんは私なんかよりいい人が居るんだ」
「いや そんな事は無いよ 今は空家ですよ」
「うそばっかり でもいいや 今夜はわたしのものだもん」
また咥え込もうとされたが
「今度は 僕の番だよ さあここに座って」
バスタブの横がちょうど一人が座れるようになっていた
祥子をそこに座らせ足を広げさせた
神山は祥子のクリトリスを優しくそして時には強く愛撫した
「ねえ もうだめ 私すぐにのぼせてしまうの だから勘弁して」
「ねぇ~ バスタブにつかりましょ お願いだからやめて」
神山は愛撫する事を止め 祥子と一緒に湯につかった 
ジャグジーの泡が心地いいなかで二人は戯れた


4月5日 日曜日 曇り

目覚ましが勢いよく鳴り始めて目をさました
横に祥子が居ないのでどうしたのか
頭をはっきりさせるとがっかりした
昨夜遅く自分の家に戻った事をすっかり忘れていた

バスから上がると ビールを呑みながら祥子が
「ねえ 神山さん 持ってくる荷物ってどの位あるの?」
「うーん 多分夏物は持って来ないといけないだろうな」
「ふーん そうなんだ」
「なんで?」
「うん 私 明日実家に寄ってくるって言ったでしょ」
「うん」
「それはね 夏物を整理して こちらに運ぶ準備をしてくるの」
「そうか 突然だったものね」
「そうなの だから貴方の気持ちもよく判るわ
ねえ これから横浜に帰って支度をしたほうがいいんじゃない」
「うーん、、、」
「だって 上原の現場が始まれば 横浜に帰れないでしょ」
「それはそうだけれど」
神山は祥子と一緒に寝たいのと 横浜の支度と考えていた
それを見た祥子は
「だってこれから 嫌でも毎日顔を合わせる訳でしょ
だったら 今夜帰って 忘れ物が無いようにしたほうがいいわ」
神山は祥子の言うとおりと思い
「そうだね これから毎日会えるんだからね うん分かった」
神山は祥子にキスをして 帰り支度を済ませると
代々木上原のマンションからタクシーで横浜の自宅に帰ってきた

神山はまずシャワーを浴び 躰をシャッキとさせたあと
上原に持っていくものを 洋服など選択し紙袋に入れていった
10時が過ぎたころ横浜のアルタへ電話連絡をしたが
先方も事情を知らされていて話はスムーズに進んだ
「では 12時ころにそちらに向かいます」
「ええ お願いします」
詳細な住所を伝えると又 準備をしたが
どうしてもダンボールが必要になったので近くの八百屋へ向かった
時々いく八百屋のおばちゃんが理由を聞くと寂しそうに言った
「寂しいね 暫く合えなくなると」
「そんな 遠いところに行く訳ではないですし
すぐに 戻ってきますから」
神山はこのおばちゃんにレシピを教わり
上手に出来たものは試食をしてもらっていた
満足できるものは出来なかったが
いつも『美味しく出来ているよ』と言われ『嫁さん 要らないね』
などとも言われていた
ダンボール箱に靴などを丁寧に入れていると
約束の12時になってしまった
テレビのコンセントを抜いたりガスの元栓を
閉じたりしていると玄関のチャイムが鳴った
「アルタです こんにちわ」
「こんにちわ神山です どうもすみません」
「昨日 東京の高橋から電話がありお待ちしていました」
「それはどうもありがとう」
アルタの社員は名刺を差し出した
【アルタ横浜支店 支店長 田代純一】と印刷されていた





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2010年8月30日月曜日

Vol.51 出会い -4-4

会社にはスーツで出勤した事はほとんど覚えが無い
特に銀座店ではファッションが決まっていればGパンでもOKだ
綿麻のジャケットで今の祥子と同じものが吊るしてあった 
それを眺めていると
「私の上下もここで買ったばかりなの 
安いのに縫製は意外としっかりしているわ」
「そうか だったらこれも買おうかな」
日曜日は久しぶりにノーネクタイで出勤してみるかと思い
ジャケットに合うシャツを選別していると祥子が選んでくれた
白を基調にしブルーとイエロー オレンジカラーの幅を変えた 
日本では余り見かけないストライプのシャツだった
神山が普段買わない柄だったので顔をしかめていると
姿見に連れて行かれ合わせをした
祥子がせっかく選んでくれたのでそのシャツも買う事にした
アメリカンステージを出るときは大きな袋が2つもなった
今夜 祥子のマンション泊まりの拒否理由はこれで解消した
袋が大きいのですぐに来たタクシーに乗った

二人と大きな紙袋を乗せたタクシーはすぐに
上原の祥子のマンションに着いた
祥子はカードをスキャンすると大きなガラスがゆっくりと開いた
箱が下がって来るのを待つ間に神山は祥子を引き寄せ唇を重ねた
エレベーターの扉はステンレスヘアライン仕上げになっていた
扉の前の床には天井からスポットライトが照らしていた
琥珀色の空間に抱き合った二人を包み込む光であった
ガラスの外からは丸見えだが抱き合ったシルエットは
映画のワンシーンに見えただろう美しかった
エレベーターで6階にある祥子の部屋に手をつなぎ入った
部屋に入るなり二人はベッドにもつれ倒れこんだ
二人はお互いの服を剥ぎ取りあい抱き合い交わった

久保祥子 このとき36歳で9歳の娘が居るが 
名古屋の実家で祥子の両親に育てられていた
ニーナ・ニーナジャパンに就職したのは30歳のときだった
勤務先ブティックは名古屋鈴やだった
天性の頑張り気質と美しさ 
兼ね備えた上品さですぐに上層部に知れ渡った
すぐにでも東京本社に来てもらいたがったが 
娘が小学校に上がってからと断っていた
しかし実際に東京の本社勤務になったのは昨年からだった
娘の学業を両親に任せきりには出来ない部分があった
片親が居ない為のいじめなど娘自身から悩みをいろいろと
聞かされると離れる事が出来なかった
昨年までは週の半分を東京 残りが名古屋のブティックと
ハードな時期を送った
去年7月に遂に東京勤務を認めざるを得なくなった
東京勤務に集中して欲しい為 上層部が青山に呼んだ
条件としてゼネラルマネージャーの地位を用意した
祥子自身も青山勤務には興味があり 
もともと販売以外でも実力を発揮したかった
そのころには娘も母親が居ない事に慣れて 
ばーちゃんじーちゃんと上手に生活するようになって来た
マンション引越しについても 慌しい時期より娘の春休みに
お願いをして先月の末近くにここに来た
「だから 神山さんが 最初のお客さんなのよ」
「ご光栄です ありがとう」
「ねぇ~ シャワーを浴びましょうか?」
「うん そうしようか」
「では 支度してきますね ちょっと待っていてね」

祥子はどこに用意していたのか
バスタオルを躰に巻いてバスルームに消えていった
「いいわよ~ どうぞ入って来て下さい」
今夜は一緒に入る事を拒まなかった
神山は全裸でバスルームに向かった
バスルームの照明は少し暗かったがそれでも祥子の顔はよく見えた
「はい こっちに来て」
「うん」
「きれいきれいしましょうね」
「祥子さんもきれいきれいしなければね」
二人はお互いの体をシャボンとたわむれた
シャワーで流すと祥子はひざまずいて神山の肉棒をくわえた
先ほど果てたばかりだったが すぐに元気になった
「これからも このおちんちんと合えるのかしら」





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2010年8月29日日曜日

Vol.50 出会い -4-4

神山は以前ニーナ・ニーナの新作発表会の時 
祥子に教えて貰った店に行く事にした
地下鉄まで歩くのが億劫なのと乗り継ぎが嫌だったので 
タクシーで向かう事にした
東銀座の歌舞伎座に来るとタクシーが客を待って列をなしていた
銀座から赤坂を抜けて表参道についた時6時を少し前だった
繁盛しているのだろう 店のたたずまい脇にある緋毛氈の長いすに
数人が座り順番を待っていた
神山は予約を入れておいたので2階にある畳の個室に案内された
まだ祥子は来ていなかった
神山は生ビールと蒲焼のおつまみをたのんだ
2階建てのこの店は1階がテーブル席と少人数の個室で
2階は畳の大部屋と個室になっている
並んで順番待ちをし通される所は1階のテーブル席で
そこが満員になると2階の畳の大部屋に通される
畳の個室は運良くないとほとんど利用できない場所であった

生ビールと枝豆が出て来たときに祥子が現れた
「こんばんわ お待たせしました」
今朝 会っているのに暫くぶりで逢ったように錯覚を覚えていた
今夜の祥子はいつに無く輝いて見えたからだ
店舗の契約が取れた事の喜びからきているのか 明るい表情だった
「私 ここの生ゆばさしを食べたいな おいしいよ お勧めです」
「そしたら 追加しよう」
部屋の隅に置いてある電話で追加注文をした
程なく祥子の生ビールとつまみが来た
「契約が取れて おめでとう」
「ありがとうございます」
「では 乾杯」
二人はビールを呑みながら 今日の出来事を話し合っていた
祥子は筒井が林のことなどを そこまで考え抜いて采配を
している事をはじめて知った
「その話しからすると 筒井さんとしてはどうしても私が
上原に住まなければ成らなかったのね」
「そう だからホテルの件もタイミングがよかったのかもしれない」
「う~ん そうね」
祥子はそれ以上の詮索は止めた    
生ビールを飲干した時に ひつまぶしが運ばれてきた
二人はうなぎの美味しさを順番に堪能した
神山は銀座で食べた事があった
最後は椀にだし汁を注ぎ食べるのが美味しかった
「わあ 美味しかったわ 神山さんと一緒だととても美味しいわ」
「ありがとうございます 僕も祥子さんと一緒だと楽しいよ」
二人は電話で会計を頼み襖を開けようとした時 
どちらからともなく熱いキスを交わした
1階のレジで会計を済ませ表に出た
今夜は土曜日なのでうなぎ屋おおたの外では長椅子に座って
順番を待っている人が大勢いる

「祥子さん 明日の予定はどうなっているんですか」
時計は20時なのでまだ充分 最終電車に間に合うと思っていた
「明日は休みなんですが 朝一番で お仕事と私事で名古屋に
出張で6日の月曜日の午前中に帰ってきま~す」
「そうか う~ん 僕は明日は休みなんだけど どうしようかな」
神山は祥子にニーナ・ニーナ出向で祥子のマンションに住む事や
出向部長になることを伝え 明日は横浜から荷物を上原に
運ぶ事などを話すと祥子は自分のように喜び
「凄いわね おめでとうございます 私 凄く嬉しいわ」
「うん これから 分からない事があったら 直ぐ傍だから
なんでも聞きに来ていいよ もっとも分かる範囲だけどね」
本当は祥子を欲しいから今夜も泊まると言いたかったが 
着替えが無いので躊躇していた
「神山さん すぐそこのお店で 明日の着替えとかを買えば
今夜は一緒に居られるでしょ それに買いおきしてもいいし」
「うん そうだけど」
「だったら 膳は急げ 行きましょ」
祥子は神山の手を取ってその店を案内した
アメリカンステージという店に入るとアイビーを中心とした
ファッションがところ狭しと店内に飾られていた
二人は神山に合う服やカジュアルシューズなど選んでいった
下着を選ぶときになって祥子が赤のビキニブリーフを選んだ
「えっ なんで赤なの」
「赤は 元気が出る色として言われていの ふふっ げ・ん・き君」
神山は祥子の勧めで赤いビキニを選んだ





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2010年8月28日土曜日

Vol.49 出会い -4-4

「うん 林君に辞められると困るので 
早急に人事異動をしなければいけないのだが、、、」
筒井はまた困った顔になった

「ほら林君は知っている通り 少し男癖が悪いところがあるだろ」
「はい 噂にはよく耳にします」
「既婚者だからと言って 旦那を御殿場まで連れては行かないと
思うのだよ それに旦那はこちらでの仕事だからね」
林恵美の旦那 林隆は東京を中心とした什器リース会社の社員で
百貨店やスーパーなど催事替えの時に什器類の入れ替えをしている
少人数の会社なので運転手から全てを任されていた
当然だが恵美との会話は少なくなる
「今 探しているのは 林君の面倒を見れる男を捜しているのだよ」
「えっ そんな~」
「だって よく考えたまえ 林君を一人にしたらどうなると思う
それこそ 御殿場計画はお釈迦になってしまうではないか」
「それはそうですけど しかし、、」
「企業を発展させるには ある程度犠牲が必要になって来るのだよ」
筒井は配下にある駒の情報を正確に把握していた
久保祥子のマンションに付いてもきちんと計算ずくであった   
新店舗となればいくら浜野由貴が頑張ってもなかなか売上は伸びない
そこで久保を近くのマンションに住まわせれば 
浜野の面倒を見ながら一人前に育て上げると確信していた
近くに居れば朝の準備や夜のミーティングなども
スムーズに行われるだろうと考えていた
神山は筒井の考え方には全面的には賛成できないが
企業として生き残るためには仕方の無い部分もあると考えていた
会社を成長させるには色々なファクターが有るが
筒井の先を読む目にはいつも敬服した

神山は化粧室に行くときに時計を見たら17時を指していた
座敷に戻る時 祥子の連絡をどのようにしようか考えていた
多分 賃貸借などの契約が取れ喜んでいる顔が浮かぶが
この状況だと電話出来なかった
襖を開けたら新しいおつまみが来ていて づけも置かれていた
席に座り筒井にこのづけを聞こうかと思ったときに襖が開いた
倉元が入ってきた
「おう やっているな」
神山がきょとんとしていると
「山ちゃん 匂いで分るのさ」
筒井と倉元は昼間の電話でここで会う事を約束していたのだ
倉元が入ってきたので神山は自分の座布団を下座に移し 
新しい座布団を上座に用意した

「今日は 店長の機嫌がいいから出てきた」
「よかったね 神山君」
筒井が満面の笑顔で言ってくれた
「お祝いだ」
神山は倉元にビールを注いだ
倉元と筒井は神山を誉めていたが自身はお尻がかゆかった
神山はこの二人の呑んべいと付き合うとここを出るタイミングが
無くなってしまうので
「倉元さん 実はもう一件打ち合わせが入っているので
ここで失礼させて頂きます」
「おう ご苦労さん」
「筒井さん 今日はご馳走様でした 色々と勉強しました」
「いやー 元気で頑張ってくれよ 銀座も頼んだぞ」
「はい 出来る限りがんばります」
神山は二人に礼をし座敷を後にした

外は赤く 夕焼けが銀座のビルを赤くしていた
神山は祥子に連絡を取った
「久保さん 神山です 遅くなってすみません」
「おつかれさまです 今 どちらに居るの?」
「銀座です 今まで筒井さんと打ち合わせをしていました」
「どうもすみません 私の為に大変でしたね 
こんな時間までごめんなさい」
「いえそんな事ないですよ どこで待ち合わせしますか」
「神山さんがご存知のところでいいですよ」
「そうしたら 表参道の有名なうなぎ屋おおたではどうですか?」
「ええ いいですよ 私も1時間くらいで出られますので
先にお店に入っていてください」
「はい 吉報をお知らせしますよ」
「わあ 嬉しい 待っていてくださいね」





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2010年8月27日金曜日

Vol.48 出会い -4-4

黒板に 青山打ち合わせ:直帰 って書いてきました」
「うん さすがだね ところで倉さんはどうしている?」
「ええ 先ほども倉さんに助け舟を出してもらったんですよ」
「では借りが出来たわけだ」
「ええ 倉さんが 宜しくって言ったましたよ」
筒井と神山はこれからどこに行くか決めかねていた
まだ14時30分を過ぎたばかりで 中途半端な時間ではあった
ホテルの外に出ると気持ちよかった
お化粧の匂いに慣れていたせいか 
外の空気が美味しかった 筒井も同感だった
日はまだ高いが 少し西に傾いてきていた
ここは銀座でも中央通りと昭和通の中間に位置していた
ビール瓶をバンに積んでこれから配達なのだろうか昼の部が終り
今度は夜の準備をするために皆せわしなく動いていた
オフィスビルには社員食堂を自前で持っている所はめったにない
百貨店のように厨房施設があり調理人がいて
従業員が多いところなどに限られてくる
そのためお昼時はどこの飲食店でも満員御礼のところが多い
行列の出来るお店には制服姿やワイシャツ姿などのサラリーマンや 
観光目的の外国人などの姿をよく見かける                     
二人が向かっている所はそんな慌しい世界を抜け出したところだった
築地にある寿司屋すし丸は朝早くから夜遅い時間まで開いていて
筒井も倉元に教えてもらったと言っていた
普通仕込などの関係でお昼休みの時間を設けているが
このお店は暖簾がしまわれていても一見でないかぎり入れてくれた

神山は部屋の倉元に電話をした
「今日はありがとうございます 今筒井さんと一緒です」
「おう 筒井君は元気か?」
「ええ 電話変わりましょうか?」
「うん 頼む」
「はい 筒井さん 倉元さんです」
筒井は神山から携帯電話を受け取り倉元と挨拶をかわしていた
暫く話し込んだ後 通話が切断された状態で神山に戻された
「倉さんからだけど 今ちょっと前に店長が部屋に来て 
神山君を探していたそうだ」
「えっ なんだろう?」                                 
「今朝の御礼を言いに来たそうだ」
「ああ あの件ですね そんなに誉められる事していないですよ」
「店長にとっては 君を銀座に移動させた事が当たって
嬉しいのではないかな 分かる気がするよ
それから 俺も青山に行きたいなって言って来たので 
これから 築地のすし丸に行くところですと言っておいた」
「はあ 倉さんにばればれですね 読まれていますね」
倉元の話しをしながら築地に着いた
寿司屋に入ると歌舞伎座帰りの女性客が賑わっていて
筒井たちは奥の座敷に招かれた
この時間に入ると 黙っていても瓶ビールとつまみが出てきた
二人はお互いのグラスにビールを注いだ
「それでは 改めて乾杯 部長昇進おめでとう」
「はい ありがとうございます 乾杯」
「しかしこの店に来ると落ち着くね」
「そうですね 特にこの奥の座敷に来たときは 
都会のど真ん中銀座では無いみたいですね 静かでいいです」

銀座の雑多から逃れるにはいい隠れ場だった
壁には丸窓があり格子の障子を開くと竹林が見渡せた
築地にこのような施しをして持成している店は殆ど無いだろう
二人が瓶ビールを空けると見計らったように 新しいビールが来た
このような持成しを受けられる座敷は全部で 八部屋ほどあるが
竹林を眺められる部屋はこの部屋を入れて三部屋しかない
だから今日はいいタイミングで来たみたいだった
「筒井さん 上原の交渉はどうなりましたか」
「なんだ 知っていたのか」
「ええ 久保さんからお聞きしましたよ 
それに上原出店計画も筒井さんの肝いりだと」
「うん 結局はショバ代を少し上乗せする事で合意したよ」
「おめでとうございます」
「青山を出る前に 久保君から電話があり 
賃貸料を3%上乗せすればOKです どうしますかとの連絡が入り
GOサインを出した」
「良かったですね 計画が進んで」
「後は 人事異動のタイミングなんだがね 問題は」
「と言うと 林さんですか?」





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2010年8月26日木曜日

Vol.47 出会い -4-4

筒井は神山に上原の入居先地図とキーカードを渡した
神山は地図を見ると 祥子のマンションと分かったが
ここはまだ知らない事にして 話を聞こうと思った
「随分と高級住宅街じゃないですか ここら辺って」
「うん 上原の店舗の事を第一に考えると ここが一番なんだ
それから そのうちに分かるから 話しておくけれど
ほらチーフの久保祥子君も ここに住んでいるんだよ」
「あの久保さんがですか そうすると連絡も密に出来ますね」
「うん そうなんだよ」
神山は嬉しかったが 喜びを隠して聞いた
「筒井さん 家賃はどうなっているんですか?」
「そうか まだ聞いていなんだね 上原はニーナ・ニーナ持ち
横浜の家賃はアルタさんが 負担してくれる事に決定しているよ」
神山はこれで少し纏まった貯金が出来ると喜んだ
「それでこのキーカードの暗証番号だけれど 
社員カードと一緒の6桁にしてあるよ」 
「はい ありがとうございます」
神山はこれで祥子と密に連絡が取れるだけじゃなく
行き来し美味しい料理も食べられると 喜んだ

「筒井さん 昨夜久保さんと一緒になりまして相談を受けました」
「そうか 昨夜は上野公園でお花見だったんだよ」
「僕が帰ろうとした時にばったりとお会いして 
スタッフと呑みに行ったんですが 皆が帰った後 
随分と上原のスタッフの件で悩んでいるみたいでした」
「そうか~ 君はどう思う 林君と浜野君を観て」
「僕自身は 浜野さんの方が明るくて品格があり 
あの場所にはハマリ役だと思いますが、、、」
「う~ん 実際のところ僕自身も困っているのだよ
実は 林君があの店には私が向いている 
上原に行かせてもらえないのなら会社を辞めると言い出したんだ」
「随分と 筒井さんを困らせますね」
「そこで 久保君には悪いけど 
林君をあそこに行かせると伝えてあるのだが 困ったものだ」
神山はなぜ林が上原に固守しているのか聞いてみた
「思い当たるのは 売上に対してのインセンティブに在るみたいだ
銀座店は売上の何パーセントかを地場代として引かれるわけだが
上原は地代が固定なので売上がよければいいほど
それだけ余計にインセンティブが入ってくる仕組みさ」
「恐ろしいですね女は そこまでして自分がなりたいか ですよね」
「困ったものだ 本当にいい手がないか困っていたところなんだよ」
筒井は先ほどから困った困ったを連発していたが 
何か妙案があるらしく 真に困った様子でもなかった

「実は神山君 内緒だけどな 絶対内緒だぞ」
「ええ なんですか」
「御殿場のアウトレットが出来ることを知っているかね」
「ええ 新聞などのメディアで騒がれていますよね」
「うん 後1年後位で立ち上がる所なんだけどね 
そこの準備で林君に行ってもらう事を考えているのだよ」
「そうすると 銀座店はどうなるんですか」
「今回 神山君が銀座に来ているように 
銀座は様変わりしようとしているんだ
そこで 本社にいる人間を 上原で少し鍛えてから
銀座の店長にしようと考えているのだ」
筒井は自分の考えを神山に話した
林が銀座にいる時に新人1名を育てる
その時 同時進行で上原でも浜野が新人を育てる
しかし上原で育てる新人は銀座店の店長で任せられるように
育て上げなければいけなかった
「えっ いっぺんに2名も銀座店に来るのですか 新しい子が」
「うん 実際問題販売実績がないと 任せることが出来ないだろな」
「いいお考えだと思いますが 本社事務がお手すきにならないですか」
「うん 僕が困っているのはそこなんだよ」
「久保君のようなスーパーウーマンがもう一人いてくれれば 
本当に助かるのだが どうしたものか困っているんだ、、、」
筒井は手薄になる本社スタッフをどのように 切り回したらよいか
考えあぐんでいた

生ビールを2杯ずつ飲干した後 
二人は無口でえびかつカレーセットを口に運んだ
食後のコーヒーが出てきた時
「神山君 これからどうする 部屋にかえるの?」
「いいえ 筒井さんの事だからアルコールと決まっていますから





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2010年8月25日水曜日

Vol.46 出会い -4-4

って事は 知らなかったのは自分だけと気が付き
先日からの動きは 誰でもない自分だったのだと がっかりした

部屋を出て席に戻る時 神山は翔を捕まえて
「翔 この事を知ったのは いつだよ」
「ええ 昨日ですよ ほんと僕もびっくりですよ」
「なあ あんなに心配したのが 自分だもんなー」
「よかったですね 部長でしょ いいなぁー」
「ははは 戻ってくれば課長だよ」
「いいじゃないですか それでも」
「ははは そうだな」
すれ違いに市川が奥村の待つ会議室に呼ばれ入っていった

神山は早速 アルタの佐藤部長に電話をした
「銀座の神山ですが 佐藤部長をお願いします」
「佐藤です おめでとうございます」
「ははは 参ったなぁー おはようございます
今 課長から聞きました こちらこそお願いします」
「いやぁー 山ちゃんが来てくれたら安心だよ 助かったよ
本当にお礼を申し上げます ありがとう」
「いやいや そんな ところで引越しとか 荷物を運ぶとか
そんな話が出ていると言うのですが」
「うん 備品類を横浜から運ぶんだよ それでね折角だから
山ちゃんの荷物も 一緒に運びましょうって段取りです」
「はぁー 凄いですね 本人が知らない間に そこまで進んで」
「まあ山ちゃんの事だから 断るわけは無いし それで進めたのさ」
「そうしたら いつですか」
「明日のお昼ごろは如何ですか?」
「もう 如何ですかじゃなくて もう決まっているんでしょ もう」
「ははは その通り なのでお電話をしてお昼に横浜が伺いますよ」
「はい そうするととりあえずの物しか 運べないですね」
「今回はそうですが これからは横浜を使ってください」
「はい では明日お電話を待っています」

神山はアルタとの連絡を終えると ニーナ・ニーナの筒井に電話をした
「参りましたよ 知らないところ話が進んでいました」
「ははは これでようやく おめでとうと言えるね        
先ほどは その事だと思って 先走りしてしまったよ」
「そうだったんですか いや僕のほうは別件なんですよ
その件は後でお話しますが 上原のどこですか?」
「うん しゃれた小さなマンションだよ それでお昼に会うとき
地図とキーカードを渡すよ」
「はい ありがとうございます」
「現場にも近いし 銀座にも近いし 非常に便利なところだよ」
「ええ 銀座の現場にすぐに入れると聞きました」
「ははは まあ 最初は仕方ないさ 上原の場合多少図面は
進んでいるんだよ でもそこからが山ちゃんの力が欲しいんだ」
「はい 喜んで参加させて頂きますよ で オープンはいつですか」
「うん 5月の半ばか6月の初めですね お願いしますね」
「はい ではお昼に」

12時30分を過ぎた時 倉元が奥村と由香里を連れて食事に行った
筒井との待ち合わせのホテルは
ここから歩いて5分のところに在るのでゆっくりと外出した
そのホテルの2階は軽食から本格的な食事も出来るところだった
周りを見渡せばビジネスマン等の打ち合わせや
濃厚な化粧をした婦人達が多かった
近くに銀座歌舞伎座があるせいか 
ここは何時もお化粧の匂いが漂っているところだった
13時少し前に筒井がエスカレーターで上がって来るのが見えた
周りを見渡し探している様子なので手を上げて答えた
「やあ 暫く 部長 おめでとう」
「いえいえ まだです それよりすみません お忙しいところ」
「そんなに 忙しくないよ ひまで困っているよ」
「ところで どうする 昼飯」
「う~ん 実はまだなんですよ」
「そうか 何食べようか 今日はご馳走するよ」
「えっ 本当ですか ご馳走様です」
「そうしたら えびかつカレーランチにしてもいいですか」
「うん それ2人前頼もう それと生ビール2つ」
神山は言われた通りにウエイターに伝えると
すぐに生ビールとおつまみのチーズがきた
神山はカレーセットを少し後に延ばす事を伝えた
「そうそう 呑む前にこれを渡しておくよ はいこれ」





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2010年8月24日火曜日

Vol.45 出会い -4-4

倉元は神山が外出しやすいように演出してくれた
(倉さん ありがとさんです)
そんな話しをしている時に催事課長の奥村が部屋に戻ってきた

「倉さん 店長すごく喜んでいましたよ
例の2階と3階の飾り付けについて べたほめですよ
やあ 山ちゃんも来ていたのか 店長喜んでいたぜ 
さすが神山君だ イメージどおりだって」
「おはようございます そんなに喜んでもらうと後が怖いですね」
「だけど 良かったじゃないか そうそう奥ちゃん 
今日の昼だけど空いていたら築地の寿司どうかね 久しぶりに」
「そうですね 今日は会議が無いし ちょっと羽を伸ばしますか」

暫くすると10時になり奥村課長がみんなをテーブルに集めた
「すんません 忙しいところ しかし市川君がまだ来ていないな」
由香里が
「課長 先に進めましょうよ 事後でも構わないでしょ」
奥村は暫く考えて
「うん そうしましょう 実はこの度」
この時 催事課の部屋に市川が申し訳なさそうに入ってきた
「おお 市川君 少し遅いぞ まあ話は後だ こっちに来てくれ
これで全員集まったね では最初から」

奥村はニーナ・ニーナジャパンの上原出店に伴う神山課長の
出向人事を正式に発表した
「山ちゃん 4月6日の9時15分に銀座店秘書課で人事発令が
行われるので 遅刻しないように いいね」
「っていうと 上原が終わったら また普通の課長ですか?」
「ははは それは分からないよ 本社が決める事だから」
由香里がニコニコしながら
「よかったわね 部長さん」
「しかし 課長部長だろ あんまり嬉しくないよ」
人事の話がひと段落すると 奥村はデザイナー3人を呼び
「あちらの会議室まで お願いします」
4人は会議室に入ると奥村が
「山ちゃん 実は上原の出店だけではなく 御殿場も見て欲しい」
「えっ だってまだ来秋か次の春でしょ それだって分からないし」
「うん でもその方がいいんだよ 御殿場は最初から
プロジェクトに入ってもらいたいんだ」
「そうすると 銀座はどうするんですか?」
「うん そのために山ちゃんの 新しい事務所兼住居を借りた」
「えっ 事務所兼住居、、、横浜はどうするんですか」
「うん そこだが行ったり来たりになるな 悪いけれど」
「えっー そんな、、、でも決まった事で 進んでいるんですよね」
「うん 進んでいる」
神山は突然の出来事にパニックになったが 気を落ち着かせ
「新しい処はどこですか?」
「上原の現場近くだよ 歩いても5分のところだ」
神山は内心喜んだ
(よし これで祥子さんと毎日逢えるぞー)
「それでそこへ行くのはいつからですか?」
「うん 直ぐにでも行って貰いたいんだ しかし山ちゃん
悪いけれど 中元の飾りつけは 何とか手を貸して欲しいんだ」
「勿論大丈夫ですよ そんな手を貸すなんて ここの人間ですよ」
「うん あんがとさん ところで翔」
「はい」
「どうだ 少しは勉強したか?」
「ええ でも先輩がいないと体が足りません」
「おいおい いまからそんな弱音を吐いてどうする」
「おう 翔 弱音は後で吐けよ 今は頑張るしかないだろ
評価は別として実際に出来たじゃないか
一昨年の事はそれとして これから失敗しないようにすればいい」
「はい」
杉田は神山が来る前のお歳暮とお正月飾りを任されたが
肝心なところで デザイン力不足が指摘さて 苦い思いをした
「なあ翔 分からない事があったら何でも聞けよ いいな」
「はい 先輩 分かりました」
「それで 対外的にも御殿場の話はオフレコです いいですね」
全員が頷くと奥村は
「さあ これで円満に解決したね 山ちゃん 後でニーナ・ニーナの
筒井さんと連絡を取って 入居先のことを確認 それと
アルタの佐藤部長と連絡を取って 荷物の運搬などを確認な」
「はい 分かりました」
神山はこれで先ほど筒井が『おめでとう』と言った訳が分かった





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2010年8月23日月曜日

Vol.44 出会い -4-4

片手で振りかざし出て行った
入れ替わりに倉元達也が出勤してきた
「おう おはよう」
「おはようございます」
「なんだ 山ちゃんもこの時間に出勤か」
「ええ 今来たばかりで あっ コーヒー入れますね」
「おう ありがとさん 由香里さんどうしたの 
なんか偉く楽しそうに楽しそうに出て行ったぞ」
「ええ なんか着ているものが中途半端だと言って
買って来てくれると言うものですから」
「うん そうか しかし10時の会議に間に合うのかな」
「はい コーヒー」
「おう ありがと」
倉元達也はここ催事課デザイナーのボスであった 
倉元は今年の春に専門部長に昇格をしたが
人間味に厚く店の中だけではなく下の者からも上の者からも
関係なく支持され デザイン一筋で生きている堅物である
神山が上野店から移動してきた時
色々と親身に相談に乗ってくれたのが倉元だった
神山は銀座店に来た事を不服としていて
自分は上野店で最後まで勤め骨をうずめるつもりで頑張ってきた
いくら銀座が「世界の銀座」であろうと 
自分のデザインを認められようと人事異動は気に食わなかった
就任当時元気のない神山を倉元は銀座のはずれにある居酒屋に誘った
倉元は黙って神山の愚痴を聞いていたが
「その勢いを 銀座にぶつけて見ろよ もっと良くなるぞ銀座店は」
二人は朝まで呑み明かした

神山はデスクに置いてある電話連絡と伝言メモを見た
売場からの電話連絡は2件とも
「ありがとうございます 今朝店長から誉められました」
売場係長と部長からのものだった
伝言メモには「よくやってくれた ご苦労さん」店長からだった
2階の紳士服と3階の婦人服の一角に初夏のステージを展開した
デコレーションだけではなく売り場全体のイメージが
気に入ってもらえたようだった
すぐに倉元に報告した                                   
「山ちゃん良かったな 店長機嫌いいぞ」
倉元は素直に喜んでくれた
店長池上と倉元は同期入社でプライベートでは親交が厚かった
池上店長も神山と同じ時に銀座店に移動してきた
神山はなぜ「お目付け役みたいに俺の後を着いて来るのだ」と感じた
池上自身も名古屋本社からの人事異動には逆らえず戸惑っていた
倉元の話では銀座の購買層が以前と違って年齢層が
幅広くなりそれに対応する為 優れた人材を銀座店に
集中させたと言っていた
神山も池上もこの本社人事の思惑の中で動かされた駒だった

神山はニーナ・ニーナの筒井に電話した
「銀座鈴やの神山です 筒井さんはいらっしゃいますか」
「はいニーナ・ニーナジャパンです 筒井ですね 少々お待ちください」
「やあ 久しぶり 元気ですか 
相変わらず銀座でも良くやっているそうですね
そうそう おめでとう いやーよかったね」
「えっ なにがですか おめでとうって?」
筒井はもう出向部長の件は知っていると思い 挨拶をしたが
今の言葉だとまだ知らされていないと思い ごまかした
「いや 店長によく褒められているだろ それでさ ははは」
「ありがとうございます でもそんな 何も出ないですよ」
二人は挨拶を交わした後 13時に銀座のホテルで合う約束をした
神山は倉元に筒井と昼過ぎから会うことを告げると
「おう わかった 一杯呑んでこい」
斉藤由香里がシャツの袋を持って売り場から帰ってきた
「はい これ」
シャツと社員カードを神山に渡した
「おう 由香里さんおはよう」
「倉元さん おはようございます 今日は早いですね」
「年よりは早く起きて 今日のように天気がいいと動きたくなるのさ
それより 由香里さん 今日の昼飯だけど」
神山と由香里を見ながら
「築地のすし屋に行かないか どうしてもすし食いたくなってさ」
「わあ 嬉しい 私お供します」
「あの 僕はちょっと難しいみたいです」
「おう そうか」





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2010年8月22日日曜日

Vol.43 出会い -4-4

アレルギー性なのかしら 肌に合わないと
すぐに荒れてしまうので付けない事にしているの」
「へー 凄い肌の持ち主なんですね 
だって お化粧している人より全然綺麗で輝いているよ」
祥子は少し恥ずかしながら顔を赤らめた
お化粧をしない事の恥ずかしさと 
肌の特異性を褒められた事に対してだった
神山はその赤くなり恥ずかしがっている顔を見逃さなかった
(お化粧をしないで大丈夫なんて よく言った ごめんなさい)
祥子は神山の顔をじーっと見つめ
「本当に綺麗? 輝いている? そう思っていますか?」
何かを訴えるような凛とした目つきで迫ってきた
神山は 言葉に詰まったが 自身思った本心なので言い切った
「本当に輝いていますよ 貴方のような女性を見たことが無い」
祥子は目を赤くなりながらも神山の目を見据えていた
(こんなに美しくて 凛としたところがあり なんという女性だ)
神山はなんとしても自分の女にしたかった
待っていたエレベーターが来た
箱の中でも祥子は神山の目を見つめていた
もしかしたら今朝でお別れかもしれない女に愛をこめてキスをした
グランドフロアに着いたときに
「ねえ 私のこと しょうこ って呼んで下さいね
だって まだ一杯お逢いしたいし 
今夜も色々と作戦会議しなければだめでしょ だから」
祥子は神山の腕に自分の腕を絡ませ出口に向った
二人だけのフロアではハイヒールの音がリズミカルに響いていた 

代々木上原の高級住宅街は朝9時だというのに
静寂で行き交う人もまばらだった
石壁で囲まれた門には黒塗りの車が横付けされ
主人を待つ運転手は無表情でバックミラーを覗いていた
この時間の出勤なので大会社の役員だろうと思われるが
それにしても立派な外車だった
4月の優しい風を受けながら二人は小高い丘を下っていた
腕を組んで離さない祥子は豊かなバストを
神山に押し付けて楽しそうに歩いていた
今日の祥子は濃紺で薄手の上下を着ていた       
季節に合う色を選んでいるせいか 一見平凡に見えるが
シンプルなデザインとアクセサリーで輝いているため 
周りの男も振り返っていた
「では 神山さん 有難うございました」
「私は少し早いので そこでコーヒーを飲みながら作戦を練ります」
「はい 久保さんがんばってくださいね」
「しょうこ ですよ もう ふふふ」
すこし甘えた口調で言いながらクスクス笑ってた
「はい 祥子さん」
「そうしたら会社に着いたら早速 筒井さんにアポをとって見ます
夕方になるかも知れませんが 必ず連絡を入れます」
「はい 吉報をお待ちしていますね」
「今夜の会合場所はその時に決めましょうか」
「そうしてください 私もここの交渉が終わったら
会社に行きますけど 夕方のほうが 落ち着いてお話できますよね」
神山と祥子は今夜また逢える事を約束したためか元気だった
「では」
「はい いってらしゃい」
改札口に行く神山の背に祥子は控えめながら手を振っていた


神山が事務所に入ると
「神山さん おはようございます 
売場から電話が2件と伝言が来ています」
経理を担当している斉藤由香里が近づきながら伝えてくれた
席に座るとなるほど 電話連絡の内容と伝言メモが置いてあった
コーヒーを持ってきてくれた斉藤由香里が
「神山さん 夕べ帰っていないでしょ」
「えっ 分る?」
「分るわよ だって徹夜の時は着替えのシャツに着替えているでしょ
今朝の神山さんは 中途半端だもの」
よく観察してもらうことは別に構わないが 
余計な詮索までは遠慮して欲しかった
「そしたらさ 売場でもサイズ分っているから 
いつものシャツを2枚くらい買ってきて」
「は~い そしたらお昼ご馳走ね ありがとう」
由香里はお昼ご飯の約束事か神山の秘密を知り得た事の
喜びか嬉しそうな顔をしながら神山の社員カードを




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2010年8月21日土曜日

Vol.42 出会い -4-4

彼女の乳首は硬くなってきた
「ねっ もうだめ これ以上続けると会社に行けなくなってしまうわ
お願いだから もうやめて ねっ」

神山はサイドテーブルの時計を見るともう直ぐ8時だった
「そうだね 久保さんを遅刻させたら大変だものね」
「私 シャワーを浴びてきます いいでしょ」
「うん どうぞお先に」
祥子はガウンで前のほうを押さえて小走りでバスルームに消えた
今日のマジックミラーは何も写さなかった 
バスルームとベッドルームの明るさが一緒だと
マジックミラーの『ガラス』にならなかった
バスルームに向かいドアを回すが開かなかった
「ねえ 一緒に流そうよ だから開けて ドアを」
「だめです 一人で流してください 
私もう直ぐ終わりますから待っていてください お願いします」
「だって 手が届かないところもあるだろう だからさ」
「いえ 届きます 絶対にだめです」
昨夜 今朝とあんなに大胆だったのに 何故と思っていた
「お待たせしました さあどうぞ」 

神山は入れ替わりにバスルームに入った
床を見てみると乱れ箱の中には昨日と今朝のガウンが入っていたが
下穿きのトランクスは下のほうに隠されているみたいだった
神山のガウンもその上に置きバスに行って熱いシャワーを浴びた
少し熱めのお湯がカラダに刺激を与えてくれて気持ちがよかった
出る時躊躇した 着る物が無いのでバスタオルを腰に巻いて出た
「替えの肌着はベッドに置いてありますよ
スタンダードなTシャツと ふ・つ・うのパンツですけど」
「えっ そんな いいですよ 昨日の着た物で」
ベッドの上には良く知っているブランドの下着が
新品のビニール袋に入ったまま置かれていた
「実は父が来た時の為に買って置いたんですよ 
だからスタンダードでしょ ごめんなさい」
Lサイズでちょっと窮屈だったが ガマンして好意に甘えた
すっかり用意してカウンターに行くと 
厚手のトーストとハムエッグが用意されていた
彼女の格好は薄手のコットンで出来たスエット上下を着ていた
「さあ 頂きましょ ねっ か・み・や・まさん」
「はい 頂きます しかし久保さんて作るの早いですよね 凄い」
「そんな事無いわよ 普段作っている簡単なものは手順を
知っているから自然と早く出来ちゃうのね」
神山は厚手のトーストにバターを塗りその上に半熟の卵を乗せた
「いやぁー まいりました 久保さんはマジシャンだ 
早いだけじゃなくて ものすごく美味しいですよ」
神山は右手の人差し指と親指を丸くして彼女にサインを出した
「パンは焼くだけ ハムエッグも焼くだけ でしょ」
「いやいや どこかで習っていたのでしょ 
銀座の行きつけの喫茶店よりぜんぜん美味しい
こんな風に毎日 久保さんの料理を食べられたらいいな~」
「そんな事無いですよ すぐに飽きてしまいますよ きっと」
記念すべき朝食をゆっくり食べることは出来なかった
祥子は少し時間を気にし始めたので 神山は黙って口に運んだ
食べ終わると祥子は食器類を流しに運びすぐに着替えを始めた
神山は朝日の中で着替える祥子を見つめていたが
「なに見ているの だめっ こっちを見たら す・け・べ~」
これ以上何を言われるのか分からなかったので
仕方なくキッチンの流しに入り先ほどの食器を洗った
(綺麗なものは見たいし 普段と違う内面も見てみたいよな)
食器洗いは直ぐに終わった
「ごめんなさい 後で洗うからそのままでよかったのに~
でも ありがとうございます 嬉しいわ 優しいのね」
彼女はもう着替えが済んで化粧を始めたが ルージュを描いただけで
「はい 準備OKよ 神山さんはどうですか」
「ええ 僕も仕度は出来ていますから いいですよ」
シャツの袖を下ろしながらいった
「では いざ出陣!」
今朝の祥子は開き直りなのかそれとも朝の交わりのせいなのか 
兎に角 明るく元気が良かった 
エレベーターを待つ間に
「久保さん お化粧はしなくていいの?」
36歳 久保のお肌を気にしただけではなくこれから
外に出るのにこれでいいのかと思って 思い切り聞いてみた
「ええ 私は普段からお化粧品を使えないんですよ





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2010年8月20日金曜日

Vol.41 出会い -4-4

祥子の顔はまた昨日のように暗い影を作っていた
「ごめんなさい 朝からつまらない話をしてしまいました」
「久保さんがそんなに苦労をしているとは知らなかった」
「ええ 近くに色々と相談できる人が居ないので寂しいの」
「筒井さんが居るじゃないですか」
「でも あの人は上司だし 副社長でしょ 
何でもかんでも相談は出来ないわ だって私はチーフでしょ
部下の事を管理できませんなんて 言ったらクビですよ」
「そんなものですかね~ 僕なんて話をしやすいタイプですよ」
「ええ でも嫌なんです」
祥子は上原の店舗になぜ浜野を移動させないのか
不思議でたまらず 筒井を少し怨んでいた
下を向いた祥子の顔から涙が零れ落ちていた
「うん 少し分かったような気がする 浜野さんの件でしょ」
「うん」
祥子は神山の胸の中に泣いて来た
神山はどうしたものかと考えあぐんでいた
「神山さんだけよ こんなに色々と話をしたの」
「うん これからも困った事だけじゃなくて 一杯話してよ」
「だ・か・ら ほらこっちを向いてごらん」
祥子は泣き顔を神山に見せた 目はしっかり神山の目を見ていた
「久保さん がんばって 僕も今日筒井さんと連絡を取ってみるよ」
「ええ どうもありがとうございます」
気を取り直した祥子は少し残っているコーヒーを口に入れた
ごくんと飲むと
「神山さん まだ早いでしょ もう少し横になっていますか?」
「う~ん しばらく横になっていますよ」
「そしたら私も横になろ~ だって神山さんと一緒だと楽しいもん」
「そんな事無いかもしれないよ 仮面を被っているだけかもね、、」
「それでもいいの 私の前では絶対に優しいから」

祥子は横たわっている神山の厚い胸板に頭を乗せてきた
神山はリンスの香りで胸が一杯になった 髪の毛を優しくなで 
「何でも 言ってください 僕でよかったら相談相手になりますよ」
祥子はその言葉を待っていたかのように 神山にかるくキスをした
そして照れるしぐさでまた胸に頭をあずけた
神山は優しくやそしてわらかく髪の毛を梳かすようにして愛撫をした
もう片方の手は背中から腰にかけてなでていた
手が腰の辺りに届くと 祥子はぴっくとおしりを動かした
祥子の手がガウンの上から神山の肉棒を探していた
探し当てたその手は強く握ったり 優しくなでたりして
肉棒を大きくしようとしていた
神山の手も祥子の腰にある性感帯を探り当てていた
ゆっくりと円運動をしていると祥子が可愛らしい声で喘いできた
神山は祥子を仰向けに寝かせながらガウンをはいだ
自身もかぶさる時にガウンを脱ぎ捨てていた
「わっ 嬉しい 朝から神山さんに だいてもらえるなんて」
祥子の目は獲物を離さない妖艶な目つきになっていた
上から覗き込んでいたが 吸い込まれ方から逃げる為に唇を塞いだ
乳房の愛撫とクリトリスの愛撫をしていると
「今朝は それ以上だめ ねっ お願い」
祥子は耐え切れなくなったのか 神山に切に話し出した
言われている事を悟り手を休めたが 
自分のペニスがMAXになっていなかった
少し躊躇したが 彼女のトランクスを下げ自分も脱いだ
ペニスを彼女のクリトリスにこすり付けていると元気になった
「神山さん はやくぅ~ もう大丈夫だから い・れ・て~」
神山は自分の肉棒をゆっくりゆっくりとヴァギナに挿入した
暖かかった いや熱かった
(うわっ~ はいってきた~ やさしい あなた)
ゆっくりとピストンするが 祥子はもうのけぞっている
顔がピンクに染まってきて額には青筋が出てきた
朝日に照らされた祥子の顔は
子供の可愛らしさと大人の艶が混じった複雑な表情だった
ゆっくりからだんだんとスピードアップしていくと
祥子は神山の動きに合わせるようになった
神山は祥子が腰を動かしてくれる分 自分が楽になったが
余裕が出来た分だけ快楽の頂点も足早に近づいてきた
スピードを緩めようとした時
「もうだめ ごめんなさい い・き・ま・すっ」
祥子はその瞬間 腰を上下左右と激しくゆれ動かした
それに併せ神山も快楽の頂点に達した
(神山さんのおちんちん 見た目いじょうに大きかったわ )
神山は祥子と同じように横たわり 乳首を愛撫し始めた





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2010年8月19日木曜日

Vol.40 出会い -4-4

4月4日 土曜日 快晴
神山は明るい日差しで目が覚めたが 
一瞬ここがどこだか判断できなかった
ベッドの大きさや布団の違い 壁の大きなガラスなど気が付き
昨夜は祥子のマンションに泊まった事を思い出した
祥子は隣にはいなかった
キッチンのほうからお湯が沸いる音がした
しばらくしてコーヒーの香りが漂ってきた
祥子がマグカップを持って神山がいるベッドにやってきた
目を覚ましている神山を見て笑顔で
「ごめんなさい 目を覚ました?」
「いや 明るいので目が覚めてしまったから 今何時ですか」
「まだ7時です 神山さんもコーヒー飲まれますか?」
「うん 頂きます」
祥子は又 キッチンに行った
今朝の祥子は淡いピンクのシルクサテンのガウンを羽織っていた
神山のマグカップを持ってベッドに戻ってきた
「ハイ どうぞお召し上がれ」
そういうと ガウンのポケットから昨日のウイングスを出した
「コーヒーに合うかしら よろしかったら吸ってくださいね」
祥子はカフェ・クレームを取り出し ライターで火をつけた
ぴんと伸ばした人差し指と親指ではさんでふかしていた
「ああ 美味しいわ コーヒーとカフェ・クレームの組み合わせって」
「普段から 朝起きるとふかしているの?」
「ううん お休みの日とか 今朝のように気分がいい時だけですよ」
「羨ましい生活をしていますね」
「そうでもないですよ この様に自由に成れたのも先週からです」
「えっ どう言うことですか?」
「昨夜お話をしたホテルなんですが 結構厳しいのよ 朝食は何時
クリーニングは何曜日など決りごとが多くて 
学生の合宿生活みたいだったの」
「う~ん だけど逆に考えるとその方が便利じゃないですか」
「ええ 私も最初はそう思ったの」
「だけどね 急な出張の時なんかは お洋服をクリーニングに
出していなかったりとかで 慌てた事があったし そうそう
遅い出勤の時には モーニングサービスも頂けないとか、、、」
「それは 少し大変ですね」
「それだけではなくて もっと嫌な事があったの」
「なんですか 嫌な事って」
「今のように お休みの時にシガーをふかしていたの
それで お昼を食べるのに渋谷まで足を伸ばして 
美味しいラーメンを頂いたの 夕方 部屋に戻ってみると 
メモが置かれていたんです 凄いショックでした」
「誰のメモ」
「部屋を掃除してくれている おばちゃんなんだけど」
【男の人を連れ込んではいけません ふしだらです
ここでのお母さんは私ですから 今後気をつけなさい】
「このようにメモに書かれていたの 
多分このシガーの残り香りで判断したんだと思いますけどね」

祥子は今までの経緯を事細かに神山に報告していた
神山のほうは以前から知っている祥子がそんな悩みを
持っているとは全然気が付かなかった
勿論 その様な話をする機会も無かったし
今まで そんなに逢った記憶も無いから当然といえば当然だった
「だけど 筒井さんに全てを話したんです ホテルは嫌だって
そうしたら 親身になってこのマンションを探してくだっさたの」
「へー 筒井さん やるじゃないですか」
「奥様同伴で 探されてこのマンションに来られた時 奥様が一言
贅沢だわと 言われここの契約は一時保留になったの
だけど後になって 色々考慮するとここが一番私の希望している
イメージに近かったの 勿論 ホテルに居るより少し割高になるけど 
交通費とか色々考えて頂いてここになったそうですよ
あと 筒井さんの思惑の中にはきっと 
上原出店があるので近いので ホテルよりここの方が便利でしょ」
「あっ そうか~ それはそうだよね 
現場で緊急の時は久保さんが直ぐに助けに行けるものね」
「ええ 歩いて5分ですから 本当に大変な時は
直ぐにサポート出来ますよね ここに居ればの話ですけどね
それから本社が終わって帰り際にお手伝いも出来るし」
「なるほど 筒井さん先を読んでここに住まわせたんだね」
「え~ 確かにお家賃は高いかもしれませんけど 
付加価値があるからここになったと思いますよ きっと」





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2010年8月18日水曜日

Vol.39 出会い -3-3

脱ぐ時ゴムにひっかかり肉棒がぴょんとはじけた
神山は全裸になると祥子のガウンを脱がせた

「神山さ~ん 素適 素晴しい体格をしているのね」
「そんな事無いですよ 久保さんこそ素晴しいカラダです」
「ありがと 優しくしてね ひさしぶりだから」
「最高級に 優しくしますよ」
神山は右手を頭の下から回して右の乳首を愛撫し
左手は彼女の大切なところをガウンの上から優しくる触っていた     
彼女はクリトリスの辺りが感じるのか喘ぎがいっそう増してきた
時々唇でみみたぶや首筋などを愛撫した
唇と舌先は忙しかった
彼女の唇に行ったり 乳首 うなじ 首筋 など大忙しだった
完全に祥子は出来上がってきた証拠にトランクスが湿ってきた
ようやくトランクスを脱がすタイミングが訪れた
両手でトランクスを下げようとすると祥子は腰を浮かした
トランクスを下げながら神山も一緒に下に下がった
祥子の足を広げさせると抵抗なく開き 
そこはもう充分すぎるほど愛液が潤っていた
光線の具合で綺麗なしずくに見えた

「だめ そんなに見つめないで 恥ずかしいから お願い許して」
祥子は訴えてきたが カラダは逆にもっと足を広げていた
あふれ出てくる愛液を優しくなめ上げた時 クリトリスに触れた
「あっ~ だ~め~ あっ~」
(本当に久しぶりだわ なんて気持ちいいの 神山さん上手よ)
祥子は腰を動かすと自分の感じるところに神山の舌先を当てていた
神山は舌先に力をいれクリトリスを愛撫しながら時々やさしく噛んだ
祥子はクリトリスを優しく噛まれたり吸われたりしているうちに
ガマンできなくなっていた
「神山さん 指でおねがい やさしくしてね~」
祥子は神山に指で愛撫してもらう事を注文をした
手のひらと指で愛撫を始めると祥子は体を今まで以上に反らした
最初はゆっくり時々早くそして力を入れたりを繰り返した
気持ちが最高潮に成ってきたのか 祥子の喘ぎが変わってきた
「あ~ だめ あ~ いくっ~  あっ  あっ 」
(あっ~っ 久しぶりだわ~ すごい だめ~ いく~ きたっ~)

祥子はクリトリスの愛撫で昇天した
(あ~ すごくよかったわ そのまま動かないで お願いよぉ~)
神山はそれでも愛撫をやめなかった
今度は桃の割れているところを集中攻撃していた
きれいなラビアの中にちいさな入り口が見えてきた
入り口が先ほどから愛液を噴出していて 今は伸縮運動をしている
「神山さん勘弁して すこしやすませて 頭がおかしくなちゃう
こんどは 神山さんのをおしゃぶりさせて ねっ お願い」
神山はうなずき 仰向けになった 肉棒が上を向いていた
祥子はけだるそうな躰を起こし 神山の肉棒にしゃぶりついた
(おちんちんをしゃぶるのも 久しぶりだわ 本当に大きいわ 
わたし大きいの大好きよ 私のからだ壊れないかしら)
そんな事を考えながら神山の肉棒を咥えたり
ハーモニカのように唇を横に動かしたりしていた
咥えられて上下運動をしてもらっている時に発射しそうになった
彼女は普通に上下運動をするのではなく 吸引を取り入れていた
(上手すぎる なぜこんな技が出来るのだろう)
神山は一瞬よからぬ考えが頭をよぎったが悟られないようにした
「だめだよ 凄く気持ちよくて発射しちゃうよ」
「いいわよ 私のお口の中でも」
そういうと直ぐに先ほどのフェラチオを再開した
今度は片方の手で肉棒の根元をきつく握り上下運動をさせ
バキュームフェラチオを始めた     
そのうちに握っている手のひらが上下運動から回転運動に変わった
(もうだめだ 上手すぎる)
祥子は一生懸命に神山の肉棒を愛撫した
上下 回転そしてバキュームとトリプルサービスを受けた肉棒は果てた
祥子は美味しそうに飲み込んだ
彼女の目が神山の目を捕らえていた 
それはちょうど獲物を取り押さえた時の野獣の目だった 
果てた後のペニスの割れ目に舌先でちょろちょろしてきた
「だめ だめ くすぐったいよ 勘弁してください お願い」
「ねっ 女性もくすぐったいの だから もっといじめちゃぉ~」
「だめ 本当にくすぐったい やめてください お願いします」
神山はカラダをよじって逃げようとするが逃げられなかった
「ごめんなさい 言う事聞くから 許してください お願いします」





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2010年8月17日火曜日

Vol.38 出会い -3-3

「はい ありがとうございます」

祥子はバスルーム入り口にある照明コントローラーで
部屋の照度を落とした
真っ暗ではなくほんの少しだけ照度があった
緞帳とレースのカーテンも閉められ
ベッドの脇にあるサイドスタンドに明かりがついた
こちらの明るさも申し訳程度の照度だった
祥子は全ての操作を終えるとバスルームに入っていった
今度はこの大きな姿見からは祥子を覗く事は出来なかった
バススペースのライトは真っ暗で 化粧台のほうに明るさがあった
それに加え覗くのには角度が邪魔していた
神山はカラダを化粧台を見える位置までよじらせると
ヘアースタイルを整えているヌードの祥子がはっきりと見えた
神山の下半身は又元気になった
横になっているこのベッドに祥子の香りがあったり 
甘いバニラの香りで神山の神経はパニック状態になった
髪を整え終えた後は便器に座った 
ここまでははっきりとガラスに映し出されていたが突然消えた
しかしバスルームから出てこない どうしたのだろうと思い
良く目を凝らしてみると シャワーを浴びているようだった
それも下半身の大切なところを入念に洗っている様子だが
少し時間が掛かりすぎていた
日常ない光景を目にした神山の元気は爆発寸前だった
何分経ったのだろう 1分か? いやそれとも5分だったのか
定かでないがショーは終焉した
祥子がバスルームから出てきた時 神山は目をつぶっていた
祥子が近づいてくる様子が スリッパの足音で分かった
足音が神山の頭のところで止まった
目を開けたかったがガマンして早く眠ろうと思っていると
おでこにキスをされた
「神山さん おやすみなさい 今夜は相談に乗って頂きまして 
あ・り・が・と・う うふっ 神山さんの寝顔って
可愛らしいのね おやすみなさい」
今度はホホにキスをして自分のベッドに入っていった

神山は元気になった下半身をどうしたものかと考えたが
兎にも角にも寝ることに専念しようと思い体を少し横向きにした
しかしどうしても気になり 顔だけを向け少し目を開けてみると
祥子は上向きで目をつぶっていた
神山も目をつぶり寝ようとしたがトイレに行きたくなった
人の家で特に祥子のベッドでおねしょは笑えない
トイレに入りようをたした後 シャワーでペニスをよく洗った
トイレットから出てベッドに戻る時 祥子を覗いた 
そこには今まで見たことが無い可愛らしい祥子の顔があり
自分の気持ちを抑える事が出来ずに 彼女の唇に軽くキスをした
祥子の目が開かれた 
神山は少し躊躇したが今度はしっかりと唇を合わせた
「やっと来てくれたのね 待っていたのよ あっ~うれしい」
「えっ」
祥子は両腕で神山を抱かかえ唇を離そうとしなかった
神山は何かを話そうかと思ったが 
唇が塞がれているので言葉にならなかった
このイレギュラーな展開に神山は心の平常心を保てなっかた
神山も祥子の唇を離さないようにしっかりと合わせ
唇と唇の中ではお互いの舌が行ったり来たりしていた
祥子の唇が少し離れあえいでいた
「神山さん 向こうのベッドでいい?」
「うん もともと久保さんのベッドだから」
「うん では い・ど・う しましょ」
祥子の背中に手を回して起こしてあげた
手を繋いでベッドに倒れこむと二人はむさぼりあった
神山は念願だった豊かな胸を優しくガウンの上から触りだした
祥子は答えるように顔をのけぞらし 自分から乳房をさらけ出した
神山の唇は乳首に吸いつき 舌先で硬くなった乳首を優しく転がした
右手の指先は親指と中指で反対側の乳首を愛撫をすると
祥子は耐え切れずに体を反らし喘いでいた
左手で彼女のうなじから首筋をゆっくり触れていた
右手は乳首を離れガウンの紐を解こうとしていた
はらりと解けたガウンの中には白い祥子の身体があった
神山もガウンを脱ごうとすると 祥子の手が紐を解き
体を浮かせガウンを脱いだ
シルクのトランクスは肉棒が上を向いていた
祥子は今度は両手でトランクスをさげると





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2010年8月16日月曜日

Vol.37 出会い -3-3

「可愛らしいですね」
「ええ パリのホテルに宿泊した時 毎日見ていると 
余りにもお気に入りになったので 
帰国する時ホテルの方から記念に頂いてきました」
「へー メイドイン・パリ ですか」
「いいえ 使っているホテルはパリですが 
製作はマイセンとおっしゃっていましたよ」
「なんと あのマイセンが 特注品を製作するとは驚きですね」
「ええ しかし東ドイツ時代のマイセンと 
今は少し変わって来ているみたいですよ」
「具体的には?」
「例えば 東の時は伝統を守る為に必死でしたが 
今は世界にもっとマイセンの良さを知ってもらう為に 
世界各国でマイセン展示会を開いているそうです」
そう言われれば鈴やや他の百貨店でもだいたい3年周期の感じで
この頃マイセン展示会を行なっている
なるほど 販売政策の一環だったのか と思った

神山自身もマイセン展示即売会の会場装飾を担当した事があるが
そこまで気が付かなかった
「私はタバコでなくて ドライのスモールシガーを時々嗜みますよ」
「いや 凄い趣味ですね シガーとは」
「ええ あの香りが一日の疲れを癒してくれますから、、」
「どんな銘柄を 楽しんでいるのですか?」
「その日の気分にもよりますが カフェ・クレームが多いです
大きさはタバコと同じ位ですが 少し細身のところが可愛くて、」
「シガーって 結構きついでしょ」
「う~ん 私の場合 煙を飲み込まないでふかしているだけですから
そんなに感じませんよ お部屋の中にシガーの香りが
漂っているとすやすやと眠りにつけますよ」
「へー そのような癒しがあるんですね 
それでしたら どうぞ僕なんかに遠慮しないで楽しんでくださいよ」
「よろしいですか? 女がタバコなんて嫌われますよね」
「そんなことは無いですよ ご自分の時間が楽しくなれば 
問題ないでしょ それに 気分を癒す為に香りを楽しむのなら 
是非 僕にも楽しませてくださいよ」
「お勧め上手ですこと た・か・く・ら・さ・ん」    
祥子はキッチンの造り棚からいくつかスモールシガーを持ってきた
カフェ・クレーム(ブルー)、パンサー(デザート)、
ウイングス(ダーク バニラ)3銘柄をテーブルの上に置いた

「神山さんはシガーを吸われた事がありますか?」
「自分から すすんで吸った事は無いですね」
「そ・う・し・た・ら このウイングスが 良いかもしれませんよ」
「バニラの甘い香りの虜になると思います」
「では お勧めの逸品を頂きましょう」
祥子は今度はブランディーを持ってきた
ブランディーグラスに琥珀色の液体が注がれた
「では 乾杯!」祥子は湯上りのせいか ほほが薄っすらと
綺麗なピンク色に染まっていた
二人でブランディーを味わいながら ウイングスを楽しんだ
広い空間が甘いバニラの香りでおおわれた
とりとめのない話がひと段落すると 
神山は少し眠ったくなったのか空あくびをした
「神山さん ごめんなさいね こんな遅くまでお付き合い頂いて」
「そんなことは無いですよ いつも遅いほうですから」
「でも神山さんは明日早いのでしょ そろそろ 寝ましょうか」
「そんなに早く出社しなくても大丈夫ですけど そろそろ寝ますか」
「私は あちら側のベッドで寝ますから 
神山さんはこちらのベッドでお休み下さい」
「えっ 良いのですか 僕はむこうのベッドで構いませんよ」
「私は普段寝ていますから どうぞこちらのベッドでお休み下さい」
「では お言葉に甘えますよ 
でも嫌ですよ 寝てからやっぱりこっちが良かったは」
「ええ ある得るかもしれませんね」
祥子は可愛い小悪魔の顔で言った
神山は立ち上がると甘いバニラの香りによった 祥子を見ながら
「では お先に失礼しますね おやすみなさい」
「ええ おやすみなさい ところで明日は何時にお目覚めですか」
「久保さんに合わせますよ」
10時の打ち合わせまでに出社すれば大丈夫だった
「私は10時にショッピングモールに向います 大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ」
「では8時ごろのお目覚めで平気ですね」





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2010年8月15日日曜日

Vol.36 出会い -3-3

などと不謹慎な事を考えてしまった
ドアを開ける前にバスの床を水で流した
バスマットで足の水気を拭いてでると先ほどとは
違ったスリッパが用意されていた
麻で作ってあるスリッパで履き心地は気持ちよかった

「お先に失礼しました なかなか入れるバスではないですね」
「そうですね 私もこのバスだけは凄く気に入っています」
「どうぞこちらに来て ビールでも如何ですか」
「はい 湯上りのビールは最高に美味しいですからね 頂きます」
「ゆっくり呑んでいてくださいね 私もバスに浸かってきます」
「ハイ お言葉に甘えてビールを頂きます」
「こちらの窓からは新宿の夜景が楽しめますよ」
神山は思った 窓ではなくガラスの壁だと
吐き出し口のガラス扉と壁に当たるガラスが
下から天井まである造りになっていた
緞帳とレースのカーテンはコントローラーで開閉が出来た
椅子を立ち上がり緞帳を閉めて部屋の照明を落としてみた
やはり思っていた通り大きな姿見からバスの中が見えていた
ガラスの向こうには形の良い豊かなバストを
露わにした祥子が写されていた
入念に体を洗ってバスタブに浸かった
神山の下半身がまた元気になってきた
タブに横たわっていると豊満なバストが浮いていた
乳首がツンと上を向いていた
神山はどうにも治まらない逸物を鎮める為に覗きは止めた
折角のチャンスなのにこのままでは治まりきれなくなるからだ
部屋の照明を明るくして 緞帳とレースのカーテンを開けた
今まで気が付かなかったが キングサイズベッドの脇に
エクストラベッドが用意されていた
先ほどバスタブから見えた祥子のベッドメイクはこのベッドを
準備していた時だった

壁がホリゾントになっているので多分造り付けのベッドだろうと
思った 病院などで見かけるベッドなどと違いこちらのベッドも
クイーンサイズはあると思えた
部屋自体が広いので大きなサイズのベッドを置いても    
全然気にならないサイズだった
ビジネスホテルで『Wサイズベッドで気持ちよく寝られます』と
宣伝文句を良く見かけるが 実際に宿泊してみると案内された
部屋はある程度の大きさだが ベッドの横にある調度品や
化粧台などなど配置されていて窮屈な思いをした事がある
しかし 祥子のこの部屋は贅沢すぎるほど広かった

ビールを飲み終わるとタバコを吸いたくなったが灰皿が無かった
灰皿の変わりになるような物を探しているとキッチンの脇に
ビールの空き缶が有ったのでそれを持ってベランダに出た
外は少し肌寒かったが何しろタバコを吸いたかったので我慢した
シルクサテンのガウンが体温を保持していてくれていた
手すりに持たれタバコを満喫していると後ろから祥子の声がした
「神山さん 寒くないですか
お部屋の中で タバコを吸って頂いてもよろしいですのよ」
神山は声のするほうへ振り返り
「ありがとうございます でもそんなに寒くないですよ
このシルクのガウン 結構暖かいですよ」
祥子はテーブルの脇に立ちビールを呑みながらこちらを見ていた
ヘアータオルを巻きつけ 先ほどとは違う艶っぽさが漂っていて
祥子も神山と同色のシルクサテンガウンを纏っていた
胸のふくよかな部分は照明の演出か はっきりと膨らんでいた
先ほどの白いTシャツの時は 若さ一杯ではじけそうな
イメージだったが 今のガウンからは大人の女性らしさが伺えた

吸殻を空き缶の中に入れて部屋に戻ると
「ごめんなさいね 神山さん 灰皿が無くて困ったでしょ
仰言って下されば 用意しましたのよ」
「いえいえ そんな」
神山は気持ち良くバスタブに浸かっている祥子を思い出してした
そして目の前の祥子のバストと
バスタブから覗く乳首をオーバーラップさせてしまった
神山は下半身の元気を隠す為 椅子に座ると
祥子はビールを冷蔵庫からもう一本出し椅子に座った
「はい これ灰皿です 使ってくださいね」
灰皿はバスタブのように楕円の格好をしたもので  
底にはエッフェルタワーが描かれていた





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2010年8月14日土曜日

Vol.35 出会い -3-3

祥子の顔が明らかに曇ってきたので
「そうしたら僕が筒井さんと話してあげましょうか」
「えっ そうして頂くと本当に助かります」
「でも ご迷惑ではないですか 筒井は出向の身ですし、、、」
「大丈夫ですよ 任せなさい」
神山は筒井との出会いや仕事を教えて貰った事を簡単に説明した
「それでしたら お任せしますね おねがいしま~す」
祥子の顔はぱっと明るくなった
神山はそんな祥子を見て愛おしく思えた

時計を見たら26時を過ぎていた
一仕事終わった安心感からか明るい声で
「神山さ~ん お風呂に先にお入り下さい」
「はい ありがとうございます お先に失礼します」
入り口左側に在るユニットバスに案内された
ドアを開けるとトイレットとバスが一緒になっていた
神山はそこでも驚かされた
正面のガラスからは夜景が綺麗に見渡せるのだ
バスも大きくて一人で入るのには大きすぎた
ジャグジー付きでガラス張りのバスなど入ったことが無かった
「着替えはここの棚において置きますね」
「はい 分かりました では早速失礼します」
ドアを閉め祥子が出て行った
神山は全部脱ぎ捨て バスに浸かった 気持ちよかった
バスの縁にメモリが刻んだダイアルが有った
ちょっと回してみたらバスの照明が暗くなった
壁にあったガラスが色を変え寝室を映し出していた

寝室からは幅の広い姿見だなと思って見ていたが
マジックミラーに成っていたのだ
ダイアルを一杯に回すと浴室内が真っ暗になり
フロアから天井までガラスと化したマジックミラーは寝室の
祥子が動いている様子が良く見えた
もう一つのダイアルを回すとトイレの照明が落ちた
これで完全にこの部屋は真っ暗になった
外からの光しか入ってこなかった
横にあるボタンを押すとジャグジーが作動し下から横からと
カラダを浮かす勢いで泡が出てきた
コントローラーでジャグジーの勢いを調整できた
そんなバスタイムを楽しみながらマジックミラーを眺めると
ベッドメイクをしている祥子を見ていた
カラダが前かがみになった時 
豊かなふくらみがTシャツの間から見えたような気がした
ベッドメイクが終わると大きい姿見の前に来た
神山の直ぐ目の前である 乱れた髪を直していた
ここからは低くてよく見えないが 
あの大きいベッドで二人で寝るのだろうか?
また 神山は不謹慎な事を考えてしまった
あらぬ事を考えていた時 祥子の姿が消えていた
バスのドアがノックされ少し開かれた

「あら 真っ暗 神山さん 何している~の」
「あっ そのぉ 今 色々あるコントローラーを触っていたら 
電気が消えて真っ暗になってしまいました」
「やだぁ~ そのガラスから私のことを観察していたのですか」
「あっ いいえ あの そんな 夜景を見ていました」
神山は訳の分からない事を言っていた
バスに浸かっていると夜景ではなく 夜空しか見えないのだ
「余りにも静かだから 寝てしまったのかと思いまして 
覗きにきたのよ よかったわ お風呂で寝ないでくださいね」
「すみません もう直ぐ出ます」
「いえいえ ごめんなさい 夜景をたっぷり満喫して下さいね」
祥子は意味深な事を言ってドアを閉め去っていった
神山はどきっとした 
自分が思い描いていた事を悟られてしまったと恥じていた
神山は部屋を明るくしてボディーシャンプーでカラダを洗った
いきり起った下半身に冷水を浴びせ鎮めようとしているが
なかなか治まらなかった
数分の間冷水を掛けていると段々と小さく普段の状態になった
着替えが置いてある棚に目をやると 
ターゴイズブルーのガウンとパンツがあった
触ってみるとシルクサテンの共生地で作られたものだった
顔に近づけると洗剤の良い香りがしていた
しかし洗濯済みという事は 以前に誰かが使った物なのかな?





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2010年8月13日金曜日

Vol.34 出会い -3-3

「嬉しいですわ 麺の固さは人それぞれ好みが違いますので正直
どちらにするか迷いながら作りました」
「すっかり 久保さんのファンになりました」
「その様におしゃってくださると 作りがいがありますね」
二人は他愛の無い話しをしながら小腹を満腹にさせた

祥子が後片付けする間 出されたブランディーを口にしながら
夜景を楽しんでいた
ガラスに近づき自分が住んでいる横浜が見えるか確認していた時
「ベランダに出るともっと周りが見渡せますよ」
祥子が後ろから声を掛けてきた
自分もブランディーを楽しんでいた
「このベランダ結構広いですね」
「ええ 下見の時 この広さが疲れを癒してくれると思いました」
ベランダには可愛らしいガーデンチェアーセットが置かれていた
「神山さん ベランダに出てみますか」
「そうしたいですがその前に仕事を終わらせてしまいましょう」
「は~い そうしましょう」
神山はテーブルに戻る祥子の後姿をみて目じりを下げてしまった
祥子のオシリは適度な大きさだがツンと上を向いている男心を
そそるもので ビジネススーツでは秘密の部分だった
(こんなにいいおしりをしているんなら 
普段からもっと一杯見せてもらいたいなぁー)
「神山さん は・や・く~ こちらに来てください」
祥子はアルコールのせいか 少し甘えた言葉に成っていた
それとも自分が提案したレイアウトを神山に褒められた事で
甘えているのか考えながら 神山は祥子の隣に座った
座る時に図面を見るより先に手が届くところにある
豊満で形の良い胸に目が行ってしまった
二人きりの密室で見事なプロポーションと豊かな胸そして
形の良いオシリを見せられたらたまったもんではない
神山は勝手な想像をしてしまい そんな自分に恥じていた

「神山さ~ん このエントランスにある陳列台どう思われますか~」
「僕もさっき拝見した時思っていたのですがもう少し幅を広げると
小物を陳列できるスペースが出来るのではないかと見ていました」
「やっぱり 私も何か足りないな~ と思っていたんですけど~
答えはそこにあったのですね ありがとうございま~す
早速 明日現場で施工の方と打ち合わせをします」
「ええ 全体を幅広くするのではなく このストック部分と
一番下の棚の幅を広げてください ストック部分は30cm手前に
出して 棚板は15cmも出せば効果は違ってきますよ」
「素適なアイディアをありがとうございま~す」
「だ・け・ど なんか階段みたいですね」
「ええ この様な陳列方法は見せながら売る方法です
上にある商品群が下の商品を邪魔しなくていいでしょ」
この上原での商品展開は服飾中心だが 小物アクセサリーを
ポイントで使いイメージアップをする販売戦略だった
神山が提案したのは普通の棚什器にデコレーションが
出来るスペースを確保したものだった
「この什器は既製品ですか? それとも特注品?」
「全部新規に制作して頂く什器です」
「そうしたら フロント部分のこの直線ですが 
この様に少し丸みを出したほうが柔らかくなりますよ」
メモ用紙に簡単なデッサンをしていると暖かい吐息を感じ見ると
直ぐそばに祥子の顔があった

祥子は神山の描く什器の形をしっかりと理解していた
鉛筆を置き
「これで 大丈夫 これだけ優れたレイアウトならば売れますよ」
「ほんと~ 凄く助かります ありがとうございます
でもね 実は神山さん もう一つ困り事があるの~」
「えっ だってこんなに良いレイアウトをしていて 
まだ悩み事とは何ですか?」
「ええ ここの店長に先ほどの浜野を抜擢しようとしているの
でも なかなかマネージャーの林さんが
いいお返事をくれないで困っているのです」
「僕は何とも言えないけど 筒井さんに頼んだらどうですか」
「ええ 筒井さんにも何回かお話はしているのですが 
なかなか良い返事が返ってこないので困っています」
「うーん僕も林マネージャーより 
浜野さんの方がこの店舗にはぴったりだと思いますよ」
「ええ 林マネージャーより明るくて 
何しろ品格を持ち合わせているので推薦しているのですが」




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2010年8月12日木曜日

Vol.33 出会い -3-3

壁はグランドフロアと同じ仕様であった
廊下を挟んで向かい合っている部屋の入り口ドアの位置が
違うので怪訝そうな顔をしていると祥子が
「このドアの配置は オーナーさんの気配りだそうですよ」
「へー そうなんですか なんか少し馴染めませんけどね」
「扉が開いている時 向かい側のお部屋を覗き込まれないように
ドアの位置をずらしているそうです」
「そうなんですか」
「ええ このマンションは全てのお部屋が法人の賃貸なので 
特にプライベートに気を遣われているそうです」
祥子がカードをスキャンさせドアを開けて神山を招く

部屋に入ると造立てのコンクリートの匂いと床のワックスの匂い
そして祥子の匂いがした
「わっ~ 素適なお部屋ですね まるでホテルに居るみたいです」
神山は正面のガラス窓から見える夜景に翻弄された
そこには新宿の華やかさはではなく 暗闇の中にぽつんぽつんと
見える可愛らしい光の群れで星空のようだった
入って右側にダイニングテーブルがあった
部屋の造りに合わせたのか木のテーブルが置かれていた
そこにはすでに上原出店の準備資料が置かれていて
「神山さん そこの資料で一番上の図面が展開図です」
祥子がカウンターキッチン越しに話してきた
「はい 分かりました 拝見させて頂きます」
「神山さん おなかすいたでしょ」
「ええ 少しすいています」
「私これから 簡単な物を作りますので図面を見ていて下さいね」
「あっ そんないいですよ お構いなく」
「そんな 私もおなかが空いちゃったのよ」
「はぁ それではお願いします」
「その前に はいビール」
「ありがとうございます」
祥子がカウンターから出てきて神山に良く冷えたグラスを渡し
瓶ビールを上手に泡立てながら注いでくれた
神山は一気に飲み干すと祥子は何も言わずビールを注ぎ
カウンターに戻って調理を始めた
神山は展開図面を見ると 什器など少し余裕がある配置で   
顧客を上手に回遊させ商品をくまなく見て貰うようになっていた

神山は現在は装飾デザイナーだが入社8年目の時に
そのデザイン力が買われ 営繕課に移動した そこでも神山は
売場改装工事の管理や積算を行ったり 什器や備品類の
デザインも行い高い評価を受け 一年中忙しく働いた
営繕課6年目の時に人事異動と昇級があり 上野店催事課の
装飾デザイナー専門課長となった

神山はどの様な複雑な平面図でも熟考し見ていると 
立体にする事が出来る能力が抜群に優れていた
(マンション販売などのチラシに載っているパースである)
今見ている上原の展開図も全て立ち上げた状態(パース)で
見ることが出来ていた
「なかなか良いレイアウトではないですか 僕なんかが 
口出しするようなところは 全然無い完璧ですよ」
カウンターに居る祥子に向って言った
「そうですか 嬉しいわ そのレイアウト私が考えたの」
「素晴しい出来ではないですか」
「だけど 一箇所 煮詰めなければいけない所があるのです」
と言いながら 鍋を運んできた
「ハイ 召し上がってください お口に合うか分かりませんが」
「呑んだ後には 良くラーメンを召し上がる方が多いですけれど」
鍋の中には味噌仕立てのきしめんが入っていた
祥子は取り皿にきしめんを盛り付けし神山に渡した
味噌味が結構美味しかった 程よい大きさのねぎ 
あげは湯煎されているので油濃くなかった
祥子は自分の分を小さな皿に盛り付け口に運んだ
神山は名古屋には出張で何回か行き食べているが
こんなに美味しい味噌煮込みきしめんは初めてだった
「なんか お店で頂く味より美味しいですよ
名古屋で何回か頂いているのですが 久保さんのは数段上です」
「そんなに褒めないで下さい」
「実は こちらでは美味しい八丁味噌が手に入らないのです
それで 実家から送ってもらう味噌と関東味噌を合わせたんです」
「しかし美味しいものは美味しいですよ 麺の固さも 
柔らかすぎず硬すぎず 僕の口には合っています」





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2010年8月11日水曜日

Vol.32 出会い -3-3

「うん いくらお祭りでもな そこは呑んでも呑まれるな」
「神山さんはゆっくり出来るんでしょ」
「ああ そのつもりだよ」
「そうしたら 先日のカラオケに行きましょうよ」
「ははは 700点か」
「ええ ほらサービス課の子を誘って 行きませんか」
「なんだ そっちの話か あのさ滝川さんもいるだろどうするんだ」
「またまた 神山さんが滝川さんと一緒になって貰って
ほら判るでしょ ねっ お願いしますよ」
「おいおい 俺が良くても先方だって選ぶ権利があるんだぞ」
「そこを何とか 年に一回しかない 営繕課とサービス課のために」
「まあ 分かったよ 様子を見ながらな」
「やっぱり神山先輩だ」
「何が先輩だよ 都合のいい時だけだろ まったく ははは」

神山も営繕課の連中と呑み始めると 第2陣がやってきて
宴会の輪がだんだんと 大きく広がっていった
20時を過ぎる辺りになると 課長連中や部長が参加して
宴会はピークになり賑わいが最高潮になった
神山は人気者で サービス課の若い女の子に呼ばれたり
昔の部課長に呼ばれたり 色々と気を使ってくたびれてきた
「せんぱーい 呑みましょうよ 全然しらふですよ」
「そうかなー もうだいぶ呑んでいるぞ」
「駄目ですよ 呑んでくださいよ 折角参加してくれたんでしょ」
神山は進められるままに 呑んでいたが 若いのと一緒だと
ペースが早く 滝川さん所ではなくなると思った
神山は滝川を見てみると 部課長の相手をしているので
少し複雑な思いがしたが 滝川の事を好きに成った事が無いので
このままでもいいかと思うようになった
この頃になると大きな輪と小さな輪が出来て 仲間の輪が出来る
神山は業者が小さな輪で ひっそりと呑んでいるので 参加した
「やあ 今日はお疲れ様 大変だったでしょ」
「神山さんお久しぶりです 元気そうですね」
「まあね 先日ネコと久しぶりに呑んだんだ」
「ははは 聞きましたよ 又 寝過ごしたって」
「早い そうなんだよ それで次の日もネコちゃんところで呑んだ」
「もう神山さんは呑んでも暴れる人じゃないからいいですよね 
呑みすぎると電車で旅行しちゃうから 安心ですよ」
「おいおい 何が安心だよ こっちの身にもなってくれ
でも少しでも寝ると 酒が抜けるからいいな 寝ないと駄目だ」
「今夜はまた熱海ですか」
「もう 今夜は横浜に帰るよ 毎日横浜を通過してどうする」
二人は大笑いしながら 呑んだ

神山はサービス課の女性軍を見るが 部課長の相手をしているので
幹事に先に失礼すると話し 宴会の輪から出た
歩いているとどこの宴会場でも男女が仲良く酒を酌み交わし
愚痴や励ましなど 楽しい時間を過ごしているようだった

まだ寒い日が続いているが 今夜は少し暖かく気持ちが良かった
神山は今夜は寝ないで横浜で下車しようと心にきめ
東京駅のキオスクでビールを買うのは止めようと思った
そろそろ大通りに出るところで 見かけた女性を発見した
(あれっ ニーナ・ニーナの久保さんじゃないか 花見かな)
神山は誘いたい気持ちと 帰りたい気持ちを天秤にかけた
誘いたい気持ちが働き 声をかけることにした


4月3日26時 代々木上原

「お待たせしました お部屋を片付けてきました」
「あっ どうもありがとうございます
今 夜景を楽しんでいたところです 綺麗ですね
こんな時間なのに高層ビルの照明が何ともファンタジーですね」
「素適でしょ 私この眺めが良くてこちらに決めさせて頂いたの」
「いいですよね 疲れて帰ってきたとき 素適な夜景を見ると」
「私の部屋のほうが まだ良く見渡せますよ」
「楽しみですね」
久保祥子は白のTシャツにスリムなジーンズに着替えていた
Tシャツになると一段と胸のふくらみが増したように思えた

エレベータは6階で止まった 扉が開いた
神山は又 驚いた
正面には 総ガラスがありそこから夜景を楽しむ事が出来るのだ





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2010年8月10日火曜日

Vol.31 出会い -3-3

「今日 集まって頂いたのは 神山課長のことです」
倉元や杉田は知っていたが 奥村の言葉を聴いていた
「実は 我が社と協力関係にあるニーナ・ニーナさんが 近いうちに
新店舗を出店しますが一つ問題が出てきて 神山課長の力を
お借りしたいと申し出がありました この申し出は施工業者の
アルタさんからも是非 神山課長の力がどうしても必要と言われ
催事課として果たして正常な 機能を果たせるかと考えましたが
残る倉元部長と杉田係長が 条件付で承諾して頂き決定しました
決定内容は 出向社員で勤務先は代々木上原事務所です
その条件はお中元装飾まで銀座店の現場も見るという事です
まあ 二束の草鞋です 以上です なにかありますか
それから 明日10時に全員に伝えますので 遅れないように」
倉元と杉田は予め聞いていたんで 質問は無かったが
催事課課員の動向を把握している由香里は色々と考え質問した
「出退勤のことやお休みの件はどうされるんですか?」
「うん この出向については本社サイドが言うのに 
対外的なことを考え合わすと 部長職出向と考えるそうだ
だから 部長と同様の扱いになる まあ自分で管理になるね」
「それで いつからですか?」
「うん まだ公にしないでくれ でも、、、業者の事があるか」
「おう そうだぞ業者には早めに翔を売り込んでおかないと」
「そうですね じゃ社内には秘密で お願いします
4月6日月曜日9時15分人事辞令です うちの秘書課ね」
「へぇー 山ちゃんが出向になるんだぁー」
由香里は先ほど神山が心配そうに話していた事が 自身の出向とは
なんだか割り切れない気持ちだった
今頃は上野店の滝川恵美と話しているので 教えたい気持ちで
一杯になったが 直にきいて貰った方がいいと思った

会議が終わると倉元は奥村に
「おう 奥ちゃん これから業者さんに電話をして 月曜日の朝
ここに来て貰うのはどうだ さっきの引継ぎの件もあるし」
「うーん そうしましょう 山ちゃんに一言お願いして 
翔のことも売り込んで貰わないといけないですからね」
「一応 この部屋に入るくらいの人を呼べばいいな」
「ええ お願いできますか」
「おう そうしたらこれから電話をして9時30分でいいか」
「ええ 挨拶が終わったらみんな帰るでしょうから 
その時間でいいと思います かえってお昼に来られると大変です」
「それからお祝いはどうするんだ 出向部長とはいえ部長だからな」
「由香里ちゃん ちょっときてくれ」
奥村は席で計算をしている斉藤由香里を呼んだ
「なんですか?」
「ほら 山ちゃんのお祝い会の事なんだけれど いくら余っている」
「ああ えーっと まだ10万円くらい有りますよ」
「そうか そうしたら 倉さんどうでしょうか ここでするのは」
「うん そうするか」
「築地からお寿司を取り寄せて酒を買えばそんなものだと思いますよ」
「うん 分かった で いつにする」
「明日 市川が出てくるので スケジュールを早急に決めますよ」
「うん 頼んだぞ 余り遅いと 有難味が薄れるからな」
「そうそう 僕の場合がそうだったんですよ よく判ります はい」
倉元は席に戻ると普段余り顔を見せない業者を中心に電話をした
中にはどの位包んできたらいいか訪ねる業者も居たが 倉元は
部長昇進という常識の範囲でお願いすると伝え 金額は言わなかった

斉藤由香里が管理しているお金は このようにお祝い事があると
業者から催事課にくるお金もあった
これを貯金し催事課の旅行や課員の冠婚葬祭等に使うようにしている


上野公園は平日なのに込み合っていた
上野店営繕課の若い課員は朝から場所とりで 出勤すると決められた
エリアのところに青いビニールシートで場所を確保していた
退社してくる仲間のために 一日中見張りをしなければいけなかった
今年は社員2名と業者の参加で3名応援に駆けつけてくれた
神山はサービス課の若い子を連れて 確保してあるところに行くと
もう 出来上がっていて 顔が真っ赤になっていた
「いらっしゃい 神山さん そしてサービス課のみなさん どうぞ」
「うん ありがとう もう直ぐ次の連中がくるだろう」
「ええ 早く来て欲しいですよ もう大変ですよ
でも 今年は彼らも手伝ってくれたんで 楽は楽でしたね」
「もうだいぶ出来上がっているね」
「ええ しかし課長や部長が来るまではしっかりしていないとね」





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2010年8月9日月曜日

Vol.30 出会い -3-3

神山は催事課の部屋を出ると 少し釈然としなかったが 明日には
色々な事が分かると思い これからの楽しみを期待し有楽町駅まで
大急ぎで歩いていった


「やあ お待たせしましたー」
「きゃぁー 神山さんだわ いらっしゃーい」
「わぁー えーっと 凄いなぁー こんなに集まって」
「神山さん こんばんわ いらっしゃい」
「お久しぶりです 滝川さんまで 大丈夫ですか、、、」
「大丈夫よ まだまだ頼りになる子が一杯居るから 安心よ」
神山は上野鈴や向かいにある 木村屋3階のパーラーに着いた
木村屋は高級ブランドのファッションや小物を扱っているが
鈴やと競合しないよう ターゲットを若者中心に品揃えしている
特に若い女性に人気があり 鈴やの社員にも評判はよかった
1、2階が店舗で3階がパーラー4階がレストランという構成だ
4階のレストランはどちらかと言えば洋食屋に近く 味があっさりで
メニューが豊富なところが 女性に人気がある一因になっている

「神山さーん こっちのテーブルにも来てー ほら新人さんよ」
「そうよ 神山さんを一目見たくて来たんだから 早くぅー」
「はいはい ちょっと待っていてね 直ぐにいくよー」
「神山さん いつまでも人気者ね 羨ましいわ」
「そんな 滝川さんだってまだまだ美しいですよ ほんと」
「ふふふ いつもお上手ね でも大変ね銀座の催事課」
「ああ 由香里姫から聞いたんですね ええ 何かが動いていて
僕自身良く分からないんですよ でも明日朝に何かが分かります」
「そう でも考えても仕方ないから楽しみましょうよ」
「ははは さすが関東一の切れものですね 早いや」
「まあ 褒めて頂いても ここは神山さんのお勘定よ」
「えっー まあ仕方ないですね では子供のところに行ってきます」
「ふふふ はい どうぞ」
「お待たせしました 百瀬さん先ほどは綺麗な声でありがとう
うちの奥村課長が とても綺麗な声だって褒めていたよ」
「ほんとですかぁー 逆に妬まれたんじゃないんですか?」
「なぜ分かるの そのとおり 妬まれたよ
だけど 声の綺麗さは 凄い褒めていたぞ あれは本音だ」    
「まぁ しかし ねぇ 奈々子 声を褒められてもねぇー」
「そうそう この美貌を褒めてくれたら 奥村さんのファンになる」
「そうよね 若い美貌を見ずして美人を語る事無かれ あれぇ」
「ははは 伝えておくよ 名言だ」
「ねえー 神山さん この子が陽子ちゃん その子が麻衣子ちゃん」
「陽子でーす お願いしまーす ふふふ」
「私は麻衣子です よろしくでーす」
「おー 若くてピチピチしているね ほんと凄い」
その時 百瀬ゆうこが人差し指を口に当てると 神山は頷いて
「さあ 僕は向こうに戻るよ」
ゆうこは何も言わずにニコニコして頷いた

神山が滝川のテーブルに戻ると
「ねえ神山さん 市川さんがなにか可笑しいって聞いたんだけど」
「うーん よく判らないんですよ でも明日出勤するそうですよ」
「私生活の乱れで出勤できないなんて ちょっと危ないわね」
「まあそうですね」
神山は上野店の人間なのに何を心配しているのか分からなかった
自分が心配するなら分かるが それとも上野店に彼女が居るのか
「なにか新しい情報はあるんですか?」
「ううん ほら由香里さんから聞いた事だけだから、、、」
(そうか由香里さんが 色々と話を流しているのか、、、)
「まあ 明日になれば本人から聞く事も出来るし 課長も
そのつもりでいるんじゃないでしょうか」
神山と滝川はそこで話が切れると滝川恵美は
「ねえ 亜紀ちゃん元気でしたか?」
「ええ 全然変わらずに元気で 赤ちゃんも元気でしたよ」
「女の子の年子って大変だけれど 10年も我慢すれば 楽になるわ」
「ほんと 双子のように片方が泣けばもう片方も泣いていました
泣いた時に 抱っこをしてあげたんですよ そうしたらぴったと
泣き止んで もうこの子は僕の事好きなんだといって 大笑いです」
滝川は口に手を当てて大笑いした
「私が抱っこした時は泣き止まなかったわ おしめだったの」
二人はまた顔を見合わせて笑った


銀座店催事課では奥村がみんなを会議テーブルに集めた





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2010年8月8日日曜日

Vol.29 出会い -3-3

「失礼します さあ由香里さん お持ちしましたよ」
女将は由香里から頼まれたお好み寿司の盛り合わせを運んできた
「わぁー 美味しそうね さあ山ちゃん食べましょう」
神山も美味しそうな握りや巻物を食べ始めた

ゆっくりと食べたので部屋に戻ったのは14時を過ぎていた
神山は奥村に食後の挨拶を済ませると
「なんだー山ちゃん 今夜もお誘いが来ているよ いいなぁー
今 上野店サービス課の可愛い声した人から電話があった
内線を控えたから 大至急電話してくれないか」
神山は奥村に礼を言って席に戻ると 上野店の内線に架電した
「はい サービス課の百瀬です」
「銀座店の神山でーす こんにちわ」
「わぁー お久しぶりです お元気そうでなによりです
ところで お聞きになっていると思いますが 今夜は大丈夫ですか?」
「うん 参加させてもらいますよ」
「きゃぁー 嬉しいわ、、、参加だって、、、もしもし」
「どうしたの 周りがきゃぁーきゃぁーと騒がしいけれど」
「だって 誰が電話するかアミダで決めたんですよ だから私の周りには
神山さんのファンが一杯いるんですー」
「ははは ありがとう 昨日 亜紀さんに会ったよ 変わらず美人だ」
「ええ 全部情報は入っていますよ 泣いている赤ちゃんを抱いたら
ピタリと泣き止んだ事まで」
「おいおい そんな事まで入っているのか 参ったなぁー ははは」
「それで神山さーん 私達数名は早帰りなんです だからデートしましょ」
「うん いいよ 何時にどこだ」
「フレックスタイムでしょ そうすると4時30分にはこちらに
来ていただく事が可能ですよね」
「うん しかし5時にしよう そうすれば大丈夫だ」
「はーい そうしたら5時にうちの前にある木村屋さんの3階に
パーラーがあるでしょ そこでお待ちしています」
「うん 分かった 木村屋の3階だね じゃあ頼みます」
「はーい お願いしまーす」

電話を置くと隣の杉田が神山に                                
「いいですね 女の子に囲まれて 羨ましいなぁー」
「ははは お仕事 お仕事ですよ さて 翔 何をしているんだ
店外催事の図面なんか開いて 店外やりたいのか いいぞ」
「べっ、べんきょう しているんですよ ねえ そのうちにと思い」
「うん 偉い 何事もそう前向きじゃないと 駄目だぞ」
タイミングよく倉元が杉田に
「おう 翔 どんどん教えてもらえよ」
「はっ、はい 教えてもらいます」
この時 神山は翔が何か隠していると感じるものがあった

神山は余計な詮索をせずに 仕事に集中する事を決め書類の整理を
始めた時に 奥村の直通電話に入電があり由香里がでた
電話は市川からで 由香里は驚いたが奥村に替わった
奥村は頷いて話を聞いていたが 
「分かった なら明日は定刻どおり出勤だな うん分かったじゃあ」
そういうと何事も無かったように 受話器を戻し書類に目をやった

神山は市川のことを倉元が知っていると思い聴いてみると
「おう 市川君は山ちゃんの同期だったな 心配するのは分かるが明日だ」
神山は礼を言って席に戻り業者や売り場と連絡をしたり書類の整理をした
(うーん 何かが動いているが 市川だとアルタは関係ないし、、、)
書類を整理していても アルタと筒井の事が頭から離れなかった
暫くして腕時計を覗いてみると16時30分を指していたので
奥村課長に進言をした
「奥ちゃん そろそろ上野にいくので すみませんが」
「やあいいなぁー 可愛い子ちゃんと花見か 行きたいなぁー」
「ははは いいですよ 後で来てくださいよ」
「それは冗談として 明日は10時に来てください」
「えっ だって明日は休みを入れてあるんですが、、、」
「おう 山ちゃん 明日は大事な話があるんだとさ 俺も来るんだよ」
「はい 10時でいいですね」
「うん 頼みます」
神山はスキットしない気分だったが 倉元がああ言うので我慢した
「じゃ翔 なにかあったら携帯電話までな 頼んだよ 倉さんそれでは」
「おう 一杯呑んでこいや」
「では」





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2010年8月7日土曜日

Vol.28 出会い -3-3

斉藤由香里が時間になったので奥村に進言しお昼の許可を貰った
神山のところに来て小さな声で
「さあ 行きましょう OK貰ったから」
神山は頷いて 倉元と杉田に断って部屋を出た

「なんだよ みんな黙って ぜんぜん面白くないな」
「なんか可笑しいわね 実はね 今朝は奥ちゃんの方が
先にきていて 労働規約を読んでいたのよ
それでね イライラしていて 少し近寄りがたかったのよ」
「へぇー そうなんだ」
「それで私がバケツの水を取り替えている時に 何処かへ行ったわ
この時期にこそこそしているなんて 可笑しいわ
ねえ 市川さんの事かしら 私 なんだか心配だわ」
「うーん」
「帰ってきた時には 笑顔に戻っていたんだけど また暗いわね」
神山と斉藤由香里はタクシーを拾って築地いせ丸へ向かった

暖簾をくぐると女将が笑顔で迎えてくれて奥の座敷に案内された
女将は斉藤由香里と小さな声で話し 頷いて厨房に戻っていった

「ねえ 市川さんの事だけど 先日私の友人が見かけたのよ」
「なにお」
「若くて髪の毛が長い女性とキスをしているところ」
「えっ キス、、、」
「うん そうなのよ だから浮気をしているんじゃないかって
その友人とも話していたの」
「まさかぁー あいつはかあちゃん思いでそんな事出来る人間じゃないよ」
「そう思うでしょ でも若い女の子の間では 結構有名な話よ」
「へぇー でも元気があって いいじゃないか」
「それはそれとして 会社を有給で休むって可笑しいでしょ」
「だって仕方ない事だろ 急に用事が出来たりさ」
「その女のために用事?」
「えっ なんで?」
「先日ね 有給で休んだ時に 奥さんから課長のところに電話があったの」
「うん」
「内容は『この頃 帰りが遅かったり 定休日出勤も毎週です
なにかうちのに不手際があったのでしょうか?』って」         
「えっ 定休日出勤?ほんとうかよ」
「更にね『昨夜は帰宅しないで 徹夜作業と言っていましたが
今朝から全然連絡が取れないんですが そのような現場に
うちのが配属されているんですか どうなんですか』って
だから課長も 言葉を選んで答えていたわ」
「おいおい でもなぜ内容が分かるんだよ」
由香里はちょっと舌先をぺろっとだして
「聞いちゃった だって市川さんの奥さんでしょ なにかなぁーって」
「こら 盗み聞きして 悪い子だ だけどなんだろうな」
「浮気とか遊びかな でもこのままだと催事課に居られなくなるね」
「うーん どうしたもんだろ それで課長はどうするって」
「うん 一応本人に確認してみますって そう言ったわ」
「そうしたら ばればれじゃないか」
「だって仕方ないでしょ 別に催事課の仕事じゃないんだから
可能性としては どこかでアルバイトをしているかもしれないし」
「まあな その方が助かるけれどな、、、
けどアルバイトとキスの事を一緒にされたんじゃ可哀想だよ」

二人が沈黙をしていると 襖が開き店員が海鮮魚の盛り合わせと
ビールを運び 座卓に並べると お辞儀をして襖を閉めた
神山と由香里は美味しいといい 良く箸を動かし食べると
由香里は日本酒を注文した
神山もお酒には相当強いが 由香里は更に強く 体調がいいと
呑んでも全然崩れる事は無かった
神山が銀座店移動になり 昼食時から日本酒を飲む由香里で
大丈夫かと思ったがミスなく仕事を済ませて驚いた事があった
その事を知っているので 催事課の連中も由香里に対し昼から
お酒を呑むなと言わなかった
勿論 催事課の連中はみなお酒には強く 特に倉元は一日中
呑んでいても全然崩れずに平気で仕事をこなした

「ねえ この頃全然誘ってくれないでしょ 私を避けているの」
「えっ そんな事無いよ 忙しいだけさ」
(だって 昨年のクリスマスの時 僕が誘っても 市川の誘いに
ついていっただろ 今回の事だって 貴女が関係しているじゃないの)
神山は喉まででかかった言葉を飲み込み
「そのうちに 時間を作るからさ 機嫌悪くしないで ねっ」
「ふーん 覚えておくわ」




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2010年8月6日金曜日

Vol.27 出会い -3-3

お中元ギフトは7月からが最大のピークを迎えるが
5月に入るとギフトセンターを中心に段々と広くしていく
毎年の事だが5月の半ばにはデザインが決まっていないと
各業者に発注できないし スケジュールも組めなくなる
あと6月までに外商顧客中心のホテル催事が3本ある

「倉さん ホテル催事については どうでしょうか
山ちゃんが主になってやって貰えないでしょうか」 
「うーん 上原の完成とぶつからなければいいがな、、、」
「上原は それでどこまで進んでいるんですか」
「うん 借りる事は借りる ただ家賃交渉をしていると言っていた」
「そうすると平面図はまだ出来ていないんですね」
「おう 内緒で図面を取り寄せて計画は進んでいると聞いた」

二人が沈黙をしていると ドアがたたかれ
「あのー 杉田ですが、、、」
「おう 筆記用具もって入れ」
「はい ただいま準備します」
杉田が部屋に入ると奥村が
「いいか 絶対に内緒だぞ」
「はい わかりました」
「おう 実は山ちゃんの仕事が増えたんだ それで君にも覚悟して
貰わないといけないんだよ いいかな」
杉田はきょとんとして 話を聞く事にした
「じつはな ニーナ・ニーナって知っているな あそこの
アンテナショップが 代々木上原に出来るんだ そこでだ
山ちゃんの力が必要になり 向こうの現場も見る事になった
しかし 銀座店は俺と君しか居なくなると困る わかるか」
「はい 充分すぎるくらい分かります」
「翔 そこで倉さんと話したんだが お中元の飾り付けや
現場仕事は翔に任せても デザインの段階の時には
山ちゃんに入って貰わないと無理だと思う どうだ」
「ええ その通りです まだまだ自分ひとりじゃ 無理があります」
「お中元のデザインだが 具体的にどこの範囲まで出来るかな」
「うーん 先輩が居なかった時を考えれば 出来ていましたが
反省会の時も言われたように あちこちで小さなミスが出ました
なので 現場も多少携わって頂いたほうが 集中できます」       
「そうか そうだよな あの時 店長から小言を頂いたからな」

奥村は考え込んでしまい 倉元もいい案が無いか考えた
杉田にとっては ミスを最大限に留めるにも神山の現場監督は
絶対に必要と考えていた


「やあ 由香里姫 おはよう」
「おはようさん あれ そのジャケットどうしたのよ」
「分かる 格好いいでしょ」
「分かるわよ だって外商で持ち回りの高いジャケットよ
いつ買ったっけ そのジャケット、、、」
「ははは 昨日さ まあ詮索はそのくらいにして みんなは?」
斉藤由香里は会議室を指差して 手を交差しバツをした
神山は小さな声で由香里に聞くが よく分からないと言われた
「ただね 翔君も一緒なのよ おかしいわね」
神山は昨日と一昨日の事は自分でなく杉田だったのかと思った
「ねえ お昼一緒に行かない 外がいいな」
「うん どうしたの」
「ほら また休みなんだ」
由香里は少し離れた隣の市川の事を指した
「そうだな 確かきのうも休んでいただろ どうしたんだあいつ」
「うん それでね ちょっと相談があるの 早く出ちゃおうか」
「うん いいけど まだ早すぎるよ」
「ねえ 築地のいせ丸に行こうか」
「いいですよ 今日は暇だし ゆっくり出来るかな」
「予約を入れておくわ じゃあとでね」

神山は席に座ると 杉田のことを考え 仕事がはかどらなかった
納品伝票に押印したりしていると3人が 部屋から出てきたが
みな無口で 少し普段と違った様子だった
杉田が席に着くと神山が
「おい 翔おはよう どうした 沈み込んで」
「先輩 おはようございます」
そう言うと 自分の席にある書類を見たり整理し始めた
神山は倉元や奥村に挨拶をしたが 返事が暗かった





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2010年8月5日木曜日

Vol.26 出会い -3-3

4月3日 金曜日 快晴
鈴や銀座店催事課
課長の奥村は少し早めに出勤をし 本社秘書室の呼び出しに備え
少し落ち着かずにタバコをふかしていた
そこへ催事課経理の斉藤由香里が出勤してきて
「あら 奥ちゃん早いのね どうしたの?」
「うん ちょっと用事があってね コーヒーくれるかな」
由香里は課長の様子が普段と違うので 急いでコーヒーを入れ
「はい お待たせしました」
「うん ありがとう」
少しいらだった様子なので 直ぐに自分の席に戻り 仕事の
準備をしたり 会議テーブルの上を掃除したりした

由香里がバケツの水を交換する為に部屋を出た時 電話が鳴った
「はい 催事課の奥村です」
「おはようございます 秘書室の秋山です お待ちしていますので
今すぐに こちらに来て頂きたいとのことです」
「はい すぐに伺います」

奥村は筆記用具と社内規約と労働組合の規約を持って部屋を出た
「由香里ちゃん ちょっとでる 頼むね」
「はい 帰りは」
「うん 2,30分で終わる それから倉さんが着たら押さえて」
「はい 行ってらっしゃいませ」

本社ビルに入るとエレベーターのボタン8階を押して
箱が来るのを待った
扉が開くと奥村はエレベーターから降りて来た社員に挨拶をし
自分が箱に乗ると8のボタンを押して扉が閉まるのを待った
奥村は8階で降りると真っ直ぐに秘書室に行き挨拶をすると
秋山は副社長室に入り 奥山を部屋に招いた
「社長 おはようございます」
「やあ 奥ちゃん 成功したぞ よかったな まあ座れ」
「はい ありがとうございます」
奥村は深々とお辞儀をして挨拶をした
「名古屋も仕方ないと言っていた ワシも同感だ」
「ありがとうございます」
「それで 催事課は大丈夫なんだろうな 後から泣くなよ」
「はい 大丈夫です 神山君は出来ます それに若い杉田も
今力をつけるいいチャンスです」
「うん 分かった それでだ 人事辞令は6日9時15分
銀座店秘書課で行う くれぐれも遅刻しないように」
「6日月曜日9時15分ですね 畏まりました」
「うん 以上」
奥村は立ち上がると 深々とお辞儀をして部屋から出た
秘書室を出る時に奥村は顔がにこやかに晴れていた
秋山が奥村を見て挨拶をすると
「奥村さん 何か良いことがあったみたいですね」
「えっ 分かりますか?」
「ええ 顔に書いてありますよ ふふふ」
奥村は嬉しくなり自然と大股で歩き エレベーターに向かった

催事課の部屋に入ると 倉元が出勤していて
「おう 奥ちゃんおはよさん 早いね」
「倉さん おはようございます ええ行って来ました」
「おう そうか」
「倉さん ちょっといいですか」
「おう そっちの部屋がいいだろう」
「由香里姫 悪いけれどコーヒー2つ」
「はい 分かりました」

奥村は倉元が会議室に入ると 副社長の事を伝えた
「そうか よかったな」
「それでどうでしょうか 翔に伝えて話してみませんか」
「そうだな いくらなんでも突然より 事前に話したほうがいいな」

「お邪魔します コーヒーです」
「おう ありがとう」
「由香里姫 翔がきたら ここに来るように言ってくれ
それから緊急以外は立ち入り禁止 いいね」
「はい 分かりました」
由香里が部屋から出ると 奥村は仕事の進み具合などを確認した
まず神山が抜けて一番の打撃はお中元装飾がある





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2010年8月4日水曜日

Vol.25 出会い -2-2

「そうしたら私 干物の美味しいのを買ってきますね」

そう言って亜紀は席を外した
二人きりになると 神山は催事課で起きている事を話始めた
金子も呑みながら話を聞いてくれた
「山ちゃん 管財の西野理事が動くって事は 人事だよ
うん 間違いないよ だから山ちゃんか杉田君か
或いは人間が増えるかだろう それしかないな 考えると」
「やはり 人事異動か ひょっとして9等級か俺」
「ははは それはないな だったら理事は動かないよ
でも気になるな 理事とアルタはツウツウだからな」
金子は機械担当だったが社内外事情に精通していて 
人事移動もだいたい予想が当たっていた

二人は考えながら杯を進めていくと金子が
「山ちゃん 御殿場のアウトレットは知っているよな」
「うん その事も考えた しかし来年の秋以降に着工だろ
そうすると この時期に動く理由はないしな
例え 俺が営繕に戻るとしても 時期が変だよ」
「しかし アルタは横浜が大変で人手不足なんだ
特に山ちゃんクラスが そこで山ちゃんの力を貸して欲しい
だってデザインが出来て現場は見れて精算が出来てって
上野と銀座を見ても誰も居ないぞ 山ちゃんだけだ」
「そうかなー」
「きっと出向だよ 今 横浜が急ピッチで進んでいるだろ
アルタではネコの手も借りたいくらいだ
そこで ニーナ・ニーナの仕事は山ちゃんに任せる」
「そうかなー でもニーナ・ニーナの仕事って言っても 来年秋だろ」
「だから今から手を打つわけさ 急に話をしても纏まらないだろ
この秋とかに出向出来るように 人事が終わったこの時期に
理事のところに話に行ったんだよ」
神山はまだ信じられないと思っていた
何しろ昨日の今日で それに倉元のワザとらしい返事が気になった

二人の沈黙は続いたが 突然赤ちゃんの鳴き声で沈黙は裂かれた
「山ちゃん 一緒に手伝ってくれ」
「あいよ」                                                  
二人は駆け足で 赤ん坊が寝ている座敷に行くと
赤ん坊を抱き上げて ゆすっているとぴたっと泣きやんだ
「山ちゃん 上手だね 泣きやんだよ」
「ははは 俺に恋しているんだよ」
「そうだな ははは」
二人はそのまま赤ん坊を抱いたまま 食堂に戻り再び呑んだ

暫くすると亜紀が買い物から戻ってきて 食堂の二人を見て
クスクスと笑いながら 干物やおかずの調理を始めた

すっかり夜になるとマドからは少し冷たい風が入ってきて
それがお酒を呑んでいる二人には心地よかった
海の向こうに伊豆半島が見えて 右側には旅館やホテルの
照明が海面に反射してとても綺麗な光景だった

神山と金子は24時頃まで呑んで 金子が
「山ちゃん そろそろ寝ようか」
と言わなければ 延々と呑んでいただろう

「明日は8時頃でいいかな?」
「うん 充分に間に合うよ」
「こだまで出勤したらどう 45分で東京駅だぞ」
「ははは それも楽しいね そうしようかな」
「うん 朝ゆっくり出来るでしょ」
「わかった じゃあそうするわ」
「じゃあ お休み」
「うん もう一回温泉に入って寝ます お休み」

神山は温泉でもう一度汗を流して床に就いた





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2010年8月3日火曜日

Vol.24 出会い -2-2

金子は神山が温泉に入っている間に 亜紀と一緒に料理を作った
「わぁー ごちそうだね ありがとう」
「かあちゃんは子供が寝てから お付き合いできるよ」
「そうだよな まあ無理しないでいいよ 顔見ただけでも嬉しいよ」
「綺麗だろ 今でも」
神山は正直綺麗と思ったので頷いた

「ごめんなさい 遅くなって 子供が寝ました」
「いいよ亜紀ちゃん さあビール」
「すみません 神山さん 先ほど電話が鳴りっぱなしで
それで起きちゃったんです」
「いいですよ そんな 一緒に寝ていても」
「そうそう それでね その電話ですが よっちゃんから話して」
「うん 明日ね 上野の電気とサービス課合同の花見があるんだ
それで 俺と山ちゃんが誘われた訳さ
俺は勿論断ったけれど 山ちゃんは近いから是非参加して欲しい
って その電話だったんだ」
「えっ なぜここにいるのが分かったんだろう」
「ははは 俺が教えたのさ 銀座店に電話をしたら
もう帰りましたと言われ 自宅に架けても居ないし
携帯に架けても出ないので どうしましょうって悩んでいたから
ははは 今 来ているよって教えちゃった まずかった?」
「ううん いいけど携帯かぁー 寝ていたから分からないな」
「ははは それで起きていたら 横浜だよ」
「そうだ その通り」
「じゃあ 山ちゃん サービス課の可愛い子ちゃんが一杯来るけど
肌着だけでも着替えたほうが いいんじゃないか」
「そうよ 何があるか分からないわ」
神山は金子と亜紀の二人に言われると その気になって
「じゃあ 駅前のデパートで買うか」
「山ちゃん 買うんだったら 下の外商で買ってあげたら」
「えっ 外商で買えるんだ」
「今はお得意さんの関係で 肌着からスーツまで販売しているよ
それに社員割引できるし そうだジャケットもいいのがあるよ」

神山と金子は呑むのを一時中断して 熱海外商部の売店に入った
「おや 珍しい山ちゃん どうしたのその格好は」                
迎えてくれたのは 売店長の高野肇で上野店のとき良く呑んだ
仲間だった 年は神山より4つ上だが話がよくあった
高野も2年前の人事異動で熱海にきたが住まいは
二ノ宮のままで毎日 熱海まで通勤している

「ええ 乗り越しで伊東まで旅行しました」
「またやったんだ さては犯人はネコちゃんだ どうだ」
「ははは 当たりです」
「で どうしたの 浴衣半纏姿できてさ」
「ええ 明日お見合いがあるんですよ それでここで買おうかと
下着からシャツまで」
「えっ お見合い、、、山ちゃんが、、、」
「高野さん 冗談ですよ 山ちゃん 明日花見があるんです
それでサービス課が来るんですよ なので今日着たものだと
何があるか分からないから せめて肌着は着替えようって」
「なんだ 驚かさないでよ そうか でもLL判は種類が
そんなにないんだよ」
「大丈夫ですよ L判でも 多少窮屈でも」
「スーツはないんだな ジャケットの素敵なのがあるよ
少しおしゃれなシャツと一緒にいれたんだ」

神山はシャツやジャケットを試着しちょうど良かったので買い
肌着類も購入し 決済はすべて社員カードを使った

金子は帰り際に高野を誘うが 家庭の事情で断られた
神山は寮に戻ると金子の勧めで 今日着たものをダンボールに
詰め込み 宅配便で自宅に届くよう手配した
食堂に戻り ひと段落すると亜紀がやってきて
「今夜のおかずはどうしますか よっちゃん?」
「おかずって言ってもなぁー」
「ははは いいですよ これだけあれば充分です」
「まあ 神山さんって優しいのね 昔と変わらないですね」
「おいおい 確か上の子がお腹の時に合っているじゃん
そんなおじさんにしないでよ まだ若いつもりだし」
「今年 幾つ?」
「42ですよ ネコと同い年 これも忘れたの? 困ったな~」
みんなで大笑いした





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2010年8月2日月曜日

Vol.23 出会い -2-2

玄関の中から女性の声が聞こえてきた
「どちらさまですか?」
「銀座店の神山です」
扉が開くと そこには昔のまんまの亜紀ちゃんがいた
「わぁー 神山さん いらしゃい」
「おー 久しぶり 元気そうだね 昔のままだ」
玄関で話していると 奥から義男が現れて
「ようやく来たな まあ上がれよ」
「うん 失礼するよ 赤ちゃんは?」
「先ほどから 昼寝をしているよ 見てみる?可愛いぞ」
義男は顔を崩し 子供を早く神山に見せたかった
奥の座敷にはいると 2台のベビーベッドに赤ちゃんが寝ていた
「しかし 大変だな 2人とも小さいと」
「でも 楽しいもんだよ 年子だから 双子のようさ
片方が泣くともう片方も一緒になって泣くし 不思議だな」
「そうか ふーん」

座敷を離れると 金子が
「こっちの座敷を使おう こいよ」
金子が案内したのは 寮として食事の時に使う座敷で
50人くらいが入れる 大広間だった
ここは障子を開けると 熱海の海が見渡せる最高の場所だった
金子は 障子を全部解放し ガラス窓をあけた
「わぁー 気持ちがいいなー」
「そうだろ 眺めも最高だし 申し分ないよ」
「ははは 浦和とは環境が全然違うな」
「うん 空気がいいから 子供達も喜ぶよ きっと」
「そうだ これ持って来た」
神山は日本酒2本とビール1ケースを差し出した
「手ぶらでいいといったのに」
「ははは 俺が呑む分だよ」
「酒やビールは 倉庫に腐るほどあるよ 心配するな」
「そうか そうだよな 次から持ってこないよ ははは」
二人は神山が用意したビールを呑み寛いだ

「まあ 早いのね もう呑んでいるの よっちゃん」
二人が呑んでいるところへ亜紀がお茶を持って来た    
「ははは 今日は開店休業だ 設備関係の仕事はないし」
「そうか 今度は自分で点検までしないといけないんだよな」
「まあね しかし 前の人が素人だったから ここに来る前に
工事屋に全て点検させて 修繕は済んでいるんだ
だから安心は安心だよ 新品まではいかないがな」
「ねえ 神山さんに温泉に入って頂いたらどう」
「そうだな 山ちゃん 温泉にはいってこいや」
「そうするか」
「じゃあ 今夜の部屋を案内するよ」
金子の案内で 今夜寝る部屋に通された
部屋に入り 金子が障子を開けると先ほどと同じ風景だった
「一つ上だけ 見晴らしがいいと思うよ」
「ありがとう いい眺めだな」
「風呂は知っているよな」
「うん 一番下で 廊下を曲がったところだろ」
「今日は女風呂に入ってもいいぞ」
「ははは 時効だろ」
「温泉も入っていないし 何も無いよ よかったらどうぞ」

神山は タオルを借り温泉に入った
ここの温泉は天然温泉で源泉を引いていて 温泉効果も充分だった
この浴室は源泉を引く関係から海側とは反対側の位置にあり
マドをあけても 山肌の斜面しか見る事が出来なかった
もう少しお金をかければ 海側に温泉を持ってくることが出来たと
業者が話していた

結構大きい浴槽で 20人くらいは充分に入れる広さだった
一人で入っている気分は贅沢をしているようで 気持ちよかったが
少し汗が流れてきて 長湯は出来なかった
神山は脱衣所で扇風機を回し涼んでから浴衣に着替えた
部屋に戻ると 座卓にメモが置いてあり読んでみると
「山ちゃん 食堂で待っている ネコ」
一瞬 食堂?と思ったが 先ほどの座敷の事と思い出し
タオル片手に 食堂に入ると金子が手招きした
「どうでしたか 長旅の疲れはとれた?」
「気持ちよかったよ」
「こんな時間だから 余り料理が無いけれど 呑もうよ」





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2010年8月1日日曜日

Vol.22 出会い -2-2

「久しぶりにしゃぶしゃぶなんか食べたいなー」
「また しゃぶしゃぶかよー この間食べたばかりだろ もう」
二人は楽しそうに話しながら 銀座通りを歩いた


一方 催事課では奥村が倉元を会議室に呼んだ
「倉さん 基本OKですよ」
「おう 店長もOKだった」
「それで 今日中に東京の意見を名古屋に話をして
結果は今夜出るそうです 多分OKだと言われていました」
「良かったな」
「ええ でも みんなに話すタイミングが」
「本人が居てもいいじゃないか」
「そうですね」
「そうしたら 明日午前中に返事が貰えるんだな」
「ええ 秘書室から呼び出しがあるそうです」
「タイミングとしては 夜だな そのまま何処かに流れてもいいし」
「そうですね そうしましょう
そうそう 先ほど 筒井さんから電話があって 
入居は5日で OKですって それで横浜から荷物を運ぶのは
アルタが運ぶ段取りをしているそうです」
「なるほど 備品は横浜から入れるんだな
だとすると 5日は休ませて そちらに専念した方がいいな」
「そうですね 荷物といっても緊急なので とりあえずは
ここ当分の着替えで済むでしょ 備品類は結構揃えるそうですよ」
「羨ましいな」
「でも 事務所件住居ですからねー 落ち着けるといいですね」
「そうだな 落ち着いたら 御呼ばれしよう」
「そうですね」


「じゃあ 翔 しっかりとがんばれよ」
「はい 先輩 ごちそうさまでした」
「うん じゃあな」
神山は杉田と別れると有楽町駅まで歩き東京駅に向かった
東京駅に着いた神山は発車まじかの電車を見送り
キオスクでビールを買って次に発車する電車に乗り込んだ      
神山はしゃぶしゃぶ屋でもビールにワインも呑んでいて
相当気持ちがよくなり ビールを呑むと発車前に寝てしまった

「お客さん 終点ですよ お客さん」
神山は眠たい目をこすり
「終点? えっ終点ですか?」
「ええ 終点です 降りてください」
「どこですか?」
「伊東です」
「伊東?」
神山は熱海を通り過ぎ 伊東まで乗り越しをしてしまった
東京駅発伊東駅終点の電車は2時間に1本しかない電車だ
その電車に乗車した事は 不幸中の幸いだった
もっともお昼の時間帯は 小田原や熱海が終点になっている

神山は電車を降りると ベンチに座り考えた
このまま横浜に帰っても何も出来ないし さあどうするかと
(そうだ ネコのところに泊まろう しかし予約しないと、、、)
会社の寮は原則 福利厚生課へ事前に申し込みをしないと
いけない事になっている しかし友人という事でどうか、、、
暫く考え 熱海の寮に電話をした
「やあ 山ちゃん 昨夜はありがとう 早速どうしたの」
「ははは 今さ伊東にいるんだ 今夜泊めてくれる?」
「ああ 来いよ 手ぶらで来いよ」
「分かった 伊東からだと45分くらいだね」
「うん そんなモンで大丈夫だよ でもどうして?」
「うん 寝過ごした」
「ははは またいつもの癖が出たね」
「ああ お昼に呑み過ぎた」
「いいよ 今日は泊りが無いからいいよ ただ料理は期待するなよ」
「分かったよ ありがとう」

神山は上り電車の時刻を調べてベンチに座った
暫く待つと入線した電車に乗り熱海駅で降りると
酒屋へ行き日本酒やビールを買い求め 寮に向かった
寮は駅から歩いて5分ほどの小高い山の上にあった
階段を上るとようやく寮の入り口がみえ 呼び鈴を押すと





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