「でもさ 投げてもいいよ それで何回も撮影になるから 体力温存してね」
「へぇー 了解です ははは 任せてください」
エキストラや催事課の面々はカメラマンの指示で席に着き カクテルを
呑みながら撮影開始を待っていた
内藤が各カメラマンや音声と最終打ち合わせを済ませると
「では これから撮影を行います カメラマンから指示がありましたように
私語は厳禁です お願いします それと踊りの時は正面ステージを
見ていてください お願いします」
エキストラや催事課の面々が頷くと照明が一気に落ち ステージの
周りだけスポットライトが当てられた
予め決められた場所からスモークが薄く出てくると いつも聞いている
60年代のアメリカンポップスが流れてきて 内藤が
「スタート」
この合図で 神山と洋子 由貴や桃子 エキストラのモデルがセンターで
踊り始め カメラマンはイメージした映像を追いかけ撮影した
この後も何曲か踊り終わると内藤が
「カット」
この一言で音楽が消えると みんな席に戻った
「あーあ しんど 大変だね 洋子 由貴や桃子ちゃんは大丈夫?」
「ええ しんどいです 緊張しました」
「だよな ほんと普段と違うからね」
内藤がカメラマンのところでビデオを確認すると神山を呼んだ
「ほら どうかな 僕はOKだと思うけれど」
全てを見た神山もOKサインをだし
「しかし 綺麗に撮影されていますね」
「ははは だってプロだもの 山ちゃん」
「ははは そうですね」
「しかしさ 山ちゃんと洋子さんがお尻で挨拶して ニコニコしている
この場面って 凄く良いよ 使えるよ うん 最高だね」
「ははは もう 何回もやってますから 息が合ったんですよ」
「この洋子さんの笑顔がなんとも言えないよ それでさ 目線が
ジャケットにいっているでしょ これいいよね」
「うん いいですね 素晴らしいな スター誕生」
「じゃ 山ちゃん 少し休憩したら バラードでお願いね
それで洋子さん 由貴さん 桃子さんと踊ってもらいますから」
「はい 体力温存 了解です」
休憩が終わるとバラードの曲を流すよう指示し内藤が
「山ちゃん スタート」
この合図で神山は普段どおり洋子の手を取りセンターに行った
洋子もニコニコして神山のステップに合わせていると 神山がステップを
段々早くして スカートの裾を広がるよう工夫した
曲が最後になると カウントを始めエンドに合わせ洋子を放り投げ
上手に受け止めるとポーズを決めた
ホールからは指笛や拍手が鳴り止まなかった
神山はこれで終わりかと思ったが 又 曲が流れ踊る事になった
カメラマンは先ほどの位置と違う角度で撮影を始めた
「しんどいね」
「ううん 大丈夫よ」
踊り終わると内藤はモニターを見て神山に
「山ちゃん 出来ればさ 愛しているって言ってくれるかな しんどいって
ビデオを分かるんだよ ははは」
「えっ そんな」
神山はモニターで確認すると ズームアップされたビデオで確かに分かった
「了解です でも ここまでアップするんですか」
「ほら 選択肢が一杯あったほうが良いでしょ ストーリーは出来ている
しかしバージョンを考えた時に 撮りだめしたほうがいいしね」
「了解です ははは 愛しているですか 参ったなぁー」
神山は洋子にこの事を伝えると驚いた後に笑ってしまった
「良いわよ 大丈夫 噴出さないよう演技するわ ふふふ」
再び踊ると神山が洋子に
「愛している」
「うん 私もよ」
このシーンでも洋子の嬉しそうな表情が良かったのか一発でOKになった
今度は由貴と桃子に変えて踊るが真剣すぎて表情が硬かった
結局暫く休憩して もう一度踊る事になり 今回はOKが出た
撮影が終わると内藤が出演者一同にお礼の挨拶をして解散になった
「山ちゃん ありがとう こんな遅い時間まで」
「いえいえ自分の事ですから しかし急で驚きましたよ」
「うん 手配も急でこちらも大変だった でも良かったよ うん」
「ほんとスタジオではこの雰囲気は出ないでしょうね 良かった」
「うん 山ちゃんに感謝をしています」
内藤と神山 洋子の3人は 最後まで残りカクテルを呑んでいた