知らされていなかった奥村は慌てて仲居に聞いて納得した
19時頃になるとアルコールが廻ってきたのか 隣通しや向かいの人と
話が弾み部屋の中はざわざわとしてきた
山崎絵里華が細川に
「今夜の専務って 素敵なファッションですね そう思いませんか」
「ええ 私も普段と少し違うように思えるのよ 格好が良いわね」
「そうそう ジーンズが今までと違って 細くなっているでしょ」
「ええ それとあのジャケットは何処のかしら 素敵ね」
「ほんと 嫌らしい輝きかたじゃなくて上品ですよね」
「そうね 光りすぎていないし でも何処のブランドなんだろう」
ニーナ・ニーナのフランス人デザイナーと内野も神山のジャケットを
話題にしていた
「へぇー ニーナ・ニーナのメンズ 試作品ですか 綺麗なシルエットで
男が見ても 惚れ惚れする作品ですよ うん綺麗です」
「ありがとう あの人の体型はモデルより素敵よ ふふふ」
「へぇー そうなんですか いつも格好がいいからそこまでは
気が着きませんでした へぇー モデル以上の体型ですか」
久保祥子の隣に座ったのはリース什器の支店長だった
この支店長は上野店の頃から神山と付き合いがあり よく呑んでいた
「へぇー 神山さんとそんな昔からのお付き合いなんですか」
「ええ 今日ここに来ている支店長は殆ど神山専務と呑んでいる仲ですよ
その頃は僕等はまだ営業部長だったり課長だったり ははは」
「へぇー 長いお付き合いですね」
「ええ あの人も苦労していますよ 今では口に出さないと思いますがね」
「へぇー そうなんですか」
「しかし 今日の山ちゃんは格好がいいな 専務になると変わるのかな?」
「ふふふ 種明かしは 実はニーナ・ニーナのメンズで試作品です
神山モデルで来年の4月に販売します」
「えっ ニーナ・ニーナさんって ご婦人ものでしょ それが紳士ですか」
「ええ 神山さんと契約を結んでいます それで第1弾です」
「へぇー だからか ジャケットのシルエットが今までと違うし 生地も
なにか上品な輝きがあるし どうしたのか考えていたんですよ
ほら 山ちゃんって一流ブランドは着ない人でしょ でも着こなすでしょ」
「ええ これからはNNブランドを着ていただく事になります」
「へぇー 素敵だな ところであの輝きはなんですか 凄く上品ですよ」
「ええ シルクが入っています」
「えっ シルクですか へぇー 素晴らしい うん」
「そうだわ あのぉー あのジャケットを着せるマネキンってありますか」
「ええ 大丈夫ですよ でも山ちゃんの体型ではウエストがどうだろう」
「って言いますと」
「ええ 山ちゃんの体型って 胸は厚いでしょ でもウエストが絞られて
いるので普通のマネキンだと ウエストがきついんですよ」
「へぇー そうか どうでしょか あの人のマネキンを造れませんか」
「えっ だって 大変ですよ」
「ええGOLで展開するのにフィットしたものが良いと思いまして」
「そうですか 分かりました 少し時間をください」
「それで 出来ればリアルマネキンじゃない方がいいんです あのぉー
顔がのっぺりしている感じ その方が表現しやすいと思うんです」
「そうですね リアルだとイメージが固定されますから はい分かりますよ」
祥子と吉本マネキンの東京支店長と名刺交換をした
「あらっ 確か吉本マネキンさんって 第二貨物さんを使ってますよね」
「ええ 上原の時にお手伝いをさせて頂きました」
「どうもありがとうございました あの時は助かりました」
「ええ もう山ちゃんの話しでは断れませんから はい」
「お陰さまで 上原は順調な売り上げです ありがとうございます」
「そうですか よかったです」
そこへ神山がやってきて
「清水さん お久しぶりです お元気そうですね」
「ははは 山ちゃんこそ 随分と偉くなったね 専務だって」
「ははは たまたまですよ」
「そうそう 今ね 久保さんと話していたんだけど 山ちゃんのマネキンを
造ろうって そんな話をしていたのさ」
「えっ なんでまた」
「うん ほらGOLでこの紳士を展開するんでしょ そこで久保さんは
フィットしたマネキンが欲しいと言う話なんですよ」
「そうか でもどうだろう 僕の体型に合わせた服ばかりじゃないからね」
「あっ なるほど 了解 そうしたらさ こちらもちょっと造ってみるね
それでよかったら使ってくれるかな」
「ははは 良いですよ なにしろこれはあくまで試作品だし 商品は
シルエットが多少変わってくるんじゃないかなと思っています
どうだろう 久保さん」