「そうか うーん でいくら掛かったの」
「ええ 450万円でした」
「えっ そうすると高い花瓶だったの そんなに高くない物だと思うけれど」
「ええ 花瓶自体は140万円ですが 周りのものとセットで 壊した花瓶が
もう現行品でどこを探しても無くて セットで入れ替えをしました」
「そうか それでアルタの内藤さんは知っているの?」
「不動産屋から直ぐに電話をして頂き 快くこの話を受けて頂きました」
「そうか わかった じゃ 電話をしておきます」
神山はアルタの内藤社長に電話をすると
「ははは 山ちゃん 大丈夫ですよ そんなに心配しないで 先方も
代替品を用意すると話してくれましたし 故意ではないですから」
「はい ありがとうございます」
電話を切ると祐子に
「よかったよ 怒っていなかった さあそれでは夕食にしようよ」
祐子が渋谷にある串揚げ屋に行きたいと言うのでタクシーを呼び向った
渋谷の繁華街にある串揚げ屋は女性週刊誌でも取り上げられた店で
店内に入ると 確かに会社帰りの女性グループが多かった
若いカップルも見掛けるが 男性だけのグループは少なかった
「しかし 大きなお店だね」
神山が驚いたのは 揚げている場所が3箇所あり そのうちの1箇所は
座敷専用に揚げていた
テーブル席は4人掛けだったが6人座っても充分な広さで 2人で
利用していても相席はされていなかった
丁度 カウンターが空いたので 座ると威勢のいい掛け声で迎えられ
仲居が注文聞きにきた
夜でもコースを設けていて 串揚げをリーズナブルに味わう事が出来た
「うーん そうしたら 梅コース2人前とお好みでお願いします」
仲居が厨房に注文すると直ぐに生ビールと枝豆が出てきた
「じゃ 乾杯 しかし安いね ランチメニューと一緒じゃないの?」
「なにしろ美味しくて安いが ここのモットーですって
ランチは一番安いので700円ですよ それも凄いでしょ」
「へぇー 確かに安いよ ワインだって安いし 良く見つけたね」
「ええ ほら練習場のカフェなんかで女性週刊誌が置いてあるでしょ
それで見つけたの ふふふ」
「へぇー 大したものだ」
夜の松コースは1500円 竹コースは2300円 梅コースが3000円
それぞれにご飯やサラダ お吸い物まで付いてきて御代り自由の安さだった
あと女性に人気なのは明朗会計で メニューも細かくお品書きされていて
選ぶ楽しさも受けている一つの要因だった
「しかし 美味しいね うん久しぶりだよ」
「良かったぁー 喜んでもらって ふふふ」
神山たちはワインを1本貰い 梅コースを一通り食べると お好みで
何本か注文した
コースには入っていない松や竹の串揚げを注文し ご飯を食べ終えた
このお店でもギフトカードが使えたので精算すると神山が
「祐子 あそこのラウンジで カクテルでもどうだ?」
「わぁー 嬉しいわ ふふふ」
ふたりはシブヤハイアットホテルに向ったが祐子が神山の腕を絡め
楽しそうにヒットソングをハミングしながら歩いた
「祐子 夏休みを取ってもいいよ どう? だって5月の末から働きどおし
そろそろお母さんに会ってきなさい」
「ええ 大丈夫ですよ 母とはちょくちょく連絡を取っていますし」
「そうか 分かった 休みたくなったら遠慮しないで言いなさいね」
「はーい ここに居るほうが楽しいですよ 適当に刺激があって」
神山は祐子の顔をまじまじと見ながら
「こっちの事かな」
小指を立てるとクビを横に振り
「そんなぁー それだったら由紀枝さんと一緒よ 頭が幾つあっても
パニクッて 可笑しくなりますよ そっちは全然平気です ゴルフにしても
新しいお友達が出来るでしょ 練習をしないと駄目だし ふふふ」
「うん なるほど」
「それに この体形を維持したいし 一杯刺激があるわよ ふふふ」
「そうだね うん 分かるよ」
「今日もね メイドクラブの部長さんとお話しをしたんです そうしたら
いいオーナーさんや神山さんに恵まれているって 他の人はもっと
きついお仕事を言われたり 自由な時間が無くて辛い思いをしている仲間が
多いって そう言われたの だから幸せです ふふふ」
「ふーん でも祐子の仕事って そんなにきついのかな、、、」
「だって 奥様がいる家庭だと重箱の隅をつついた感じの苦情や 友働きで
夜遅い時間にお料理を準備したりって 結構大変ですよ あなたのように
こうやって食事に連れ出してくれる人って 殆どいないみたい」
「そうか まあ 金銭的にも気持ちにも多少余裕があるからね」