2013年8月5日月曜日

Vol.1122 百日紅 -5-66



「ええ 少しずつ前進あるのみです 焦ってもろくな事は無いですから」
「おや 翔 どうしたんだ へぇー」
杉田は少し顔を赤くして
「へへへ 実は美佳さんにも同じ事を言われているんです
なので 焦らない事がいいと そう決めています」
「うん そうだな まあ お金がいくらあっても センスが無ければ
なんか服が歩いているみたいだし ちんどん屋だもの いい心がけだよ」
奈々子が事前に注文した料理や生ビールが運ばれると杉田が乾杯をした
「でも 先輩 催事課ってほんと良く飲みますね 驚きました」
「ふふふ 丁度1週間ね 呑んべいの集団でしょ」
「ええ 流石に私もお手上げです」
「どうしたの そんなぁー」
「ええ 昨夜だって徹夜でしょ それで11時までお付き合いしたんですよ
ところが 9時前からお食事と言って ラーメン屋さんに直行でしょ
それで餃子や野菜炒めでしょ Gプロのスタッフとビールばかり
呑んでいて もうびっくり」
その話を聞いていた神山が奈々子に
「うん これはね 徹夜のときの儀式で って言うと格好いいな
実際は 徹夜作業の打ち合わせを兼ねているんだよ 大切な時間なんだ
普段話せない事など この時間を利用して打ち合わせをしているんだ」
説明を受けた奈々子は驚いて神山に
「えっ そうなんですか 私は全然分からなかったです へぇー」
「ほら 翔が話したように ゆっくり分かればいいよ なぁー翔」
振られた杉田は手を振って
「駄目なんですよ 先輩 人事ではお見通しでして 言い訳無用です」
神山は杉田の顔を見て
「なぁーんだ 早く言えよ まったく 言い訳したのに」

杉田や屋敷などと楽しく食事をすると次長室に戻った
「しかし 参ったね 翔には 折角言い訳したのにさ」
「駄目ですよ そんな言い訳は でもね呑んでもちゃんと仕事しているし
木曜日の開店には飾りつけが間に合っているわけでしょ いいじゃない
みんな知っているもの 大変な部署だって ふふふ」
「そうか なぁーんだ あーあ もう」
「銀座店の店長 池上さんだって 昔は催事課長だったでしょ だから
限られた時間の苦労は知っているし ふふふ大丈夫よ」
「そうだよな 池上さんが課長の時って もっと人数がいて 予算も
今では考えられないほど有ったって聞いた事があるよ」
「ええ ほんと 予算だけ見ると凄い数字だったわ 逆に屋敷君や杉田君は
予算が少ないし人は少ないし 大変は大変ね」
「うん そうだね 8月に来る山崎さんも可哀相は可哀相だな」
「でも 現状としては居ないより居た方がいいでしょ」
「それは勿論さ 翔はこれから軌道に乗れば 僕の分身だよ
それを考えれば催事課だって 人が居た方がいいに決まっているよ
そうそう 8月1日って 人事命課部長列席に参加するのかな?」
「どうなのかしら?でも銀座店の事でしょ 大丈夫よ どうして?」
「うん 協会の面談があるからさ うーん」
「だって 理事だって参加はしないわよ 大丈夫よ」
「そうだね 理事が参加しないのに僕が参加したら可笑しいよね ははは」
「そうよ もう 驚かせないで そんなことしたら 又 本社で大騒ぎよ
お願いだから 静かにしていてくださいね」
「おいおい だってそんな規約みたいに縛り付ける事はないと思うよ」
「あのぉー 銀座で理事が出席されると上野店はどうするんですか
もう 少しは考えてください 常務ですよ トップ3ですからね もう」
「はいはい 分かりました では気兼ねなく協会の仕事をします」

神山がソファーで横になっていると洋子が
「ねえ あなた 起きて下さい 堀田本社総務部長(理事)から電話です」
「えっ 堀田さんから電話 なんだって?」
「ええ 直にお話だそうです」
神山はこの時期になんの用件があるのだろうと考え電話に出ると
「常務 誠に申し訳ないのですが 実は8月1日の人事命課ですが
ご出席をお願いしたいのです」
神山は銀座店の話だろうと思っていたが 本社に外商管理部が新たに
設けられるようになり 本社でも人事命課が行われることになり
儀式に参加して欲しいという社命だった
「はい 分かりました で9時15分でいいのですね」
「ええ お願いします それと田所理事にもご出席をお願いします
尚 正式な文章は本日 お部屋までお届けに参ります」
「はい 分かりました」
神山は電話を切ると洋子に
「おいおい 洋子 本社に外商管理部が出来るんだって それで人事命課の
儀式に参加をお願いしますだってさ 洋子もだよ もう 大変だな
そんな 管理部なんてさ 各店で良いのに 本社が統括したって