「おお 堅苦しい話は抜きじゃ ほらみんな腹をすかしている 乾杯じゃ」
みんなが乾杯すると もう部屋の中は笑いの渦で一杯になった
杉田が奈々子に
「ねっ 催事課っていつもこうなんですよ ははは 煩くて元気がよくて」
「いいですね 羨ましい環境です 早くなれるようにします」
「うん ゆっくり焦らないでね」
隣に座っている時田が奈々子に
「どうだ 楽しい所だろ」
「ええ 凄く楽しいです」
「これはね 普段仕事がきついから その反動なんだ 覚えておきなさい」
奈々子は急に俯いてしまい ビールも進まなくなった 杉田が
「時田さん 駄目ですよ そんな嘘を言って プレッシャーかけて もう
奈々子さん 大丈夫だよ ほらビール呑んで いつもこんな感じさ」
倉元も
「おう 奈々子ちゃん 時田さんがちょっと苛めたかったんだ 大丈夫だぞ
おれも居るしテツだって居るし なあ翔」
「もう なんで倉さんやテツが出てくるんですか もう 私の秘書です
僕が守ります だから奈々子さん お寿司を食べたり元気出して」
神山は洋子とニヤニヤしながらやり取りを見ていたが洋子が
「ふふふ 大人になったわね もう大丈夫ね」
「そうだね アルタでも部長だろ 大丈夫だ ねえ考ちゃん 翔のこと
お願いしますね まだ頼りない所があるけれどさ」
「ははは 大丈夫ですよ さっきもちょっと話していたんですが 結構と
しっかりした意見を言われてました 安心して付いていけます」
「へぇー 考ちゃんが褒めるなんて珍しいね」
「ほんとですよ ええ うちのデザイナーだって付いていきますよ」
「そうだ 内野君 昇進おめでとう」
「あっ 神山さん ありがとうございます よかったですよ」
「なにが?」
「静岡転勤だと思っていましたから」
「ははは 本当に思っていたんだ 大丈夫さ 頑張ってね」
「はい 頑張ります 杉田部長の足を引っ張らないようにします」
「そうだね お願いします」
奈々子が廻りに慣れてきたのか 明るい顔に戻りみんなを笑わせていた
今夜だけは杉田も奈々子の飾り役に徹している様子で あまりお酒を
口に運ばなかった
香織が神山に
「楽しいのは分かるわ でもお仕事は本当にきついのね でなかったら
こんなに楽しくみんなと呑めないと思うわ」
「うん そうだね デザインと予算って相反しているから妥協点を
探し出すのに大変な努力をしているわけさ その仲間意識がこのように
団結力を生むのだろうね うん」
「そうね 抱えている苦労がみな同じものだから その苦労をこの場で
発散しているってそんな感じね」
「ははは デザインってみんな同じ所があるんじゃないかな 特に商業で
予算が決められているデザインはね」
「そうね 芸術部門だと又違うでしょうしね」
「うん ここは芸術を産むところじゃないから でもそれなりの技術が
無いと置いていかれるけれどね」
「大変な部署ね へぇー初めて見ました 勉強ですね」
「もともと僕もこの部屋に居たんだよ でも何かのきっかけで
あそこに居るようになったんです」
「へぇー 理事がここにいらしたんですか へぇー」
神山は香織やGプロの面々に食べるよう勧めた
1時間くらい経つと時田と池上が席を立ち帰ると言われたので神山は
「社長 店長 本当にありがとうございます 感謝しています」
「うん 山ちゃん頼んだよ ではお先に失礼します」
神山と洋子はエレベーターまで見送りに行った
「洋子 じゃ僕らも帰るか どこかで食べなおしだ」
「そうね 香織さんは」
「うん タクシー代を渡しておくよ」
洋子が頷き神山は香織に先に帰ることを伝え タクシー代2万円を渡した
「そうしたら 私も一緒にお部屋を出ます それでタクシーを拾います」
「うん 分かりました」
神山は運転があるので 殆ど呑んでいなかったが 洋子も最初のビールを
一口呑んで 全然のんでいなかった
神山はGプロの高橋に先に帰ることを話 もっと呑むよう進めた
「山ちゃん 僕らはほらまだお仕事が残っているので ご飯は頂きますが
お酒の方は程ほどにしておきます」
「ははは そうだね お願いします」
神山は奈々子に帰ることを伝えると 席を立ち
「常務 洋子先輩 本日はありがとうございました これからも