2013年5月11日土曜日

Vol.1036 百日紅 -1-62



「うん ごめんね 明日はゆっくり出来ると思う」
「気にしていないですよ お仕事ですから では失礼します」
安堂は丁寧にお辞儀をすると 有楽町駅に向っていった

神山は食品協会の理事室に入ると時計を見て
「香織 まだ充分に時間があるので 30分寝かしてください」
香織が返事をすると ソファーに横になり直ぐに寝た
13時50分になると香織は神山を起こし
「あーあ ありがとう スッキリしたよ」
香織は缶コーヒーを神山に渡すと自分も飲み
「理事 おトイレに行ってきます」
「おお じゃ 一緒にいこう ははは」
二人が部屋を出ると 既に4社ほどが部屋の外で待っていて 神山は
お辞儀をしながらトイレにはいった
香織が戻ると
「では よろしいでしょうか」
「うん お願いします」
香織の合図で最初に面談に来たところと話していたが 要領を得ないまま
10分が過ぎ 神山は悩んでしまった
「おいおい 何を言っているんだろう 分かった?」
「いいえ 私も良く聞いていたのですが ここって生活保護センターの
苦情処理ではないですからね 困ったものです」
神山も同感と思い 先が思いやられた
5番目に例の九州畜産農業が面談だった
「私は神山理事の料理を紹介している記事を読みまして 是非そのノウハウを
我が社で活かしていただきたいと思いまして 伺いました」
「ははは それは無理なお話ですよ だって料理 加工ってそんなに
易しくない事は存じ上げています 現に私はあるところの顧問をしています
しかし 私に出来る事は うんこれは不味いとか美味しいとそんな所の話で
ノウハウのご提供は無理です」
「はぁー それでしたら 加工品の味見をして頂くだけで良いです」
「あのぉー それでしたら私以外にも沢山いらっしゃるでしょ なぜですか」
「はっきり申し上げますと 神山理事のその記事は間違いなく本物で
それが新鮮なんです 今までどこどこ食品研究所の所長とか 色々と
お話を伺ってきました しかしありふれた一般論で ポイントが無いんです
なのでお願いをしているんです」
「はぁー」
「結局 ああいう人たちはどちらにでも転べるような話なんですよ
ところが理事は ここがこうだから焼き方を変えなければいけないなどと
きちんと理論もわかり そのフォローもされている訳です」
「ええ 自分で食べるので そのくらいは気をつけますよ」
「今まで そのようにはっきりといわない方が多くて こちらとしても
非常に困っていました 加工に失敗すれば自分で責任とらない態度など
それがうちでは限界で この春に辞めて頂いたんです」
神山は暫く考え
「分かりました しかし条件があります 失敗の件では私のミスと認め
しかし 味が分からない部分での失敗はどうなりますか 例えば ここと
九州 東北など 味ってさまざまですよ その失敗も私ですか?」
相手は暫く考え
「神山理事 その部分の失敗は失敗ではありません 要はその加工品の
基本的な味をこちらで提示しますので それが本質の味を出しているか
どうかのご判断で良いと思います 如何でしょうか」
「ははは そうこられましたね 良いですよ ははは お受けします」
「では神山理事 本日付で顧問になってください」
「しかし その後の条件を申し上げます まず 顧問就任後 いかなる事が
発生しても私に責任がない事 試食などでそちらの都合で私は動かない
などですがいいですか」
「ええ 充分です 取締役会なども欠席で結構です」
神山は暫く考え
「それでは 顧問費として月1千万円 賞与6か月分 年2回」
「はい 大丈夫です」
「それから専属秘書としてここに居る眞鍋香織を秘書とし 月70万円
賞与250万円年2回 それでも良いですか」
「はい お願いします」
九州畜産農業のその男は名刺を出していない事に気がつき
「神山理事 私は西郷哲夫ともうします 遅くなって申し訳ありません」
西郷は早速用意した辞令に持参の筆ペンで日付など記入し 香織の分は
白紙の辞令用紙に記入した
【神山 龍巳 殿 右のもの 本日を持って株式会社九州畜産農業
    本社顧問を任命する
   平成10年7月11日 株式会社九州畜産農業 社長 西郷 康夫】
給与手当て1千万円毎月18日スイス銀行入金 土日祝日の場合は前営業日
賞与6千万円 7月14日 12月14日年2回 14日が土日祝の場合は
前営業日振込みとする