2013年1月13日日曜日

Vol.918 紫陽花 -11-56



「えっ 120個で18万だよ」
仕入れ課長は電卓をはじき
「山ちゃん 2160万円だよ 大丈夫なの」
「ええ 大丈夫ですよ」
「うん わかった」
「もし良かったら 今日にでも伺いますよ 商品券でもOKですか」
「うん いいよ 臨時口座を大至急作って待っています」
神山は内藤に経緯を掻い摘んで話をすると
「そうしたら 14万円の60個分840万円を明日 口座に振り込みます
しかし 18万円でもいいのに」
「ええ そこは鈴やの儲けの部分ですから 私が払います」
「さすがですね それで追加の場合は 教えてください
披露宴の方ですが 少なくなった場合は返金されます 又 連絡します」
「はい お願いします」

神山は電話を切ると洋子に
「今夜は上野でとんかつでも食べるか」
「嬉しいわ お願いします」
「そうしたら 悪いけれどポルシェをスタジオに届けて 祐子と一緒に
とんかつ屋で待っていてくれるかな」
「わぁー ポルシェも運転できるのね いいわよ」
神山はタクシー代1万円を洋子に渡すと商品券を2160万円分用意した
祐子に電話をして洋子と一緒に 上野に来る事を伝え 
今夜行くとんかつ屋へ電話をいれ 部屋をキープした
「じゃ お願いしますね 上野で30分ほど話があります
もし先に着いたら 呑んでいてね」
「はーい 分かりました」

洋子と神山はビルの出口で別れると 神山はタクシーで上野店に行った
鈴や上野店の5階にある特選雑貨に行くと 仕入れ課長が待っていて
「山ちゃん 良く来たね さあ」
課長は仕入れ席に案内して 口座開設書を見せてもらった
「では 先に入金しますよ」
「ははは 2ヶ月先の話で 今月の売り上げとは関係ないが
保留金で入金しておきましょう」
神山と仕入れ課長はレジに行き 商品券で2160万円分を支払いした
商品券を勘定するのに 手伝い店員も呼び 3回数えると
「山ちゃん ぴったしだよ ありがとうございます」
神山は馴染みの課長や係長と挨拶をすると みな気軽に話しをしてくれ
銀座と随分と違い 心の暖かさを感じた
神山は地下の酒売場で冷えたビール2ケースを買い求め催事課へ行った
部屋に入ると みな神山を歓迎し仕事を止め テーブルに集まった
課長がみんなに
「山ちゃんからの プレゼントだ 呑もう」
催事課課長は今年4月に名古屋店から 転勤できた課長だが
上野の催事課は少し元気が無いといい 率先して仲間と呑んだ
神山の噂は全店規模で伝わっていて 課長もいいチャンスだと思い
「山ちゃん 成功の秘訣を教えてください」
「ははは そんな ないですよ ただ一生懸命仕事をすれば
結果はあとから付いてくる でしょうか」
「あーあ そうだな みんな分かった お願いしますね」
神山は事務と経理を担当している 中田圭子を呼んで
「どう 課長のケチって有名だけど 大丈夫」
「まぁ ご存知なの でも ここに来てからはそんな事ないわよ」
神山は商品券100万円分を渡すと圭子は驚いて
「いいの こんなに頂いて」
「うん みんなでどんどん呑んでくださいよ 課長には内緒だよ」
「ふふふ 分かりました 大切に使わせていただきます」

神山はこれから仕事が有るといい 部屋を出るととんかつ屋へ向かった
受付で神山と名乗ると 3階の部屋に通され
「わぁー 漸く来ましたね」
「ははは ごめんね 催事課で話し込んで 遅くなりました
でも なにも注文していないの」
「だって なにがお勧めか 分からないじゃない だから来てからって」
神山はおつまみで とんかつの盛り合わせと 揚げ物の盛り合わせ
サラダの盛り合わせを注文した
祐子は洋子から 美佳のことを掻い摘んで話を聞いていたので
「美佳さん 驚いているわね ふふふ 私だって泣いちゃいますよ」
「そうか そんなに嬉しい事なんだね 少しだけ乙女心が分かりました」
「いつも周りに乙女ばかりなのに もう ねえ洋子さん」
「ほんと この人ってそこが鈍いのね でも鈍いところが厭味じゃないから
女が付いてくるのね きっと」
「おいおい 褒めているのか 貶しているのか もう」
3人は大わらして生ビールを呑んだ
「失礼します」
仲居がおつまみや日本酒を運び 座卓に並べると洋子が
「美味しそうなとんかつですね」
「ありがとうございます 揚げたてですから 気を付けて
お召し上がりくださいませ」
とんかつの発祥は一説に上野と言われ 御徒町から上野地域には
多数のとんかつ屋が存在し 今でもその味を求める顧客がおおい
洋子と祐子が一口食べると
「わぁー 美味しいわ 柔らかくて衣はパリパリ 中はジューシーよ」
「お肉も 甘くて美味しいわ 幸せぇーってね」
祐子のおどけた格好で みんなで大笑いをした






.