2013年1月12日土曜日

Vol.917 紫陽花 -11-56



「ええ 最低でも10万でしょ 課長だし大変ですね」
「まあな しかしもっと安いところなら こちらの出費も抑えられたのに」
「まあ 一世一代ですから お願いしますね」
神山は奥村と話を終えると杉田を呼び
「翔 引き出物はもう決まっているのか」
「まだなんですよ でもクリスタルガラスのグラスセットにしようかって
一応 案は出ているんですが 僕の給料ではとても手が出ないんです」
「そうか クリスタルグラスセットか」
「ええ あれって氷を入れると 音が綺麗でしょ
美佳とデートした時 初めて同じ意見だったんです」
「そうか そんなエピソードがあるんなら 大事にした方がいいな」
神山は以前 上野店に居た時に クリスタルグラスにサウンドブラストで
絵を彫っている会社と話した事があった
クリスタルグラスに一つ一つ手彫りで絵を作るので 同じものは無く
5客でも6客でも 並べると物語になると言われた事を思い出した

「翔 そのクリスタルグラスにサウンドブラスト加工して
それを引き出物にしたらどうだ オートモで使う引き出物だから
多少 それなりの物でないといけないしな」
「でも そんな高いのは手が出ませんよ」
「うん そうしたら内藤さんと 話してみるよ 大丈夫だよ」
杉田は自分が知らないうちに 挙式の準備が行われて行くのが 不思議で
頭の中では 判っているつもりだが 嬉しさを表現できなかった
神山は次長室に戻ると 先ほどの会社をPCで探し電話をした
「鈴やの神山と申します こんにちわ 社長はいらっしゃいますか?」
社長は神山の事を覚えていて
「それでしたら 私どもの処でやらせてください
世界で認められている技術を その若い人たちに提供させて貰います」
「良かったです それで絵柄はなんでも構いません 1組送って頂けますか」
社長は快く引き受けてくれて
「値段はいくらになりますか?」
「ええ 私どもではグラスで12万円 桐箱2万円 14万円で出します」
「そうすると 店に納品して頂くことも可能ですね」
「ええ ただ口座が無いものですから そこだけです」
「分かりました 口座は私が責任を持って作らせて頂きます
それで 6客最低120組ですが 9月20日まで間に合いますか?」
「えっ 120組ですか、、、」
「ええ 最低です 上限は200組ですが」
「200組ですか、、、はい 何とか頑張ります
お目出度い席で 失敗は許されません 頑張りますよ 神山さん」
「では 届くのをお待ちします 出来れば代引きでお願いできますか」
「ええ 多少手数料が掛かりますが」
「ええ 構いませんよ ではお願いします」
「はい 明日 お届けできます これから手配します」
神山は電話を切ると 特選雑貨課の仕入課長に電話をした
「はい 神山次長のお話でしたら 喜んで口座を作らせて頂きます」
「うん ありがとう それで仕入れが14万なんだ どうだろう」
「えーと 普段ですと215000円ですが、、、」
「うん 分率を下げていくらになりますか」
仕入れ課長は電卓で計算し
「どうしても 20万円を切るのは難しいです」
「分かった 120組などトータルで考えて欲しかった
20万円を切れないようなら 話は無かった事にしてくれ では」
神山が電話を切ろうとすると
「次長 おいくらだったらいいんですか?」
「もういい 時間の無駄だ 利益ばかり求めているから 先日の
ホテル催事も赤字になるんだ もっといい商品を仕入れなさい では」

神山は電話を切ると上野店の特選雑貨仕入課長に電話をした
「やあ 山ちゃん どうしたの 次長直々に」
「ははは 相変わらずですね 先輩も」
「まあな なので進級できないよ ははは」
神山は事情を掻い摘んで話をすると仕入課長の渡辺晴智は
「ははは 自分の事じゃなくて 部下の事か いいよ
分率なんて関係ないさ でも銀座も天狗になっているな」
「まあ そこは言えませんが そうしたら18万円でいいですか」
「うん 15万円でもいいけど でもな うちにも儲けさせてくれ」
「ははは そうしたら 上野で口座を作って頂けますか」
「了解 それで今回は臨時口座になる しかし2回以上取引があれば
普通口座になるよ」
「それだったら 最初の120個を収めさせ 追加分を収めさせれば
普通口座は作れますね」
「まあ そうだな でも120個を収めた時に 入金がないと難しい」
「あっ そうしたら明日にでも入金しますよ」






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