話が落ち着くと女将が運んできてくれた照り焼きなどを食べたりし
ビールも呑むと日本酒を頼んだりして 和やかに話が進んだ
由貴も桃子もGOLに対し積極的に意見や提案が出され 神山は
デザインに書き込みをしていくと 参考になる事案ばかりだった
おつまみや巻物を食べると由貴が桃子に
「桃子 そろそろ帰ろうよ 後はチーフと神山さんに任せましょう」
「はい そうですね 神山さん ご馳走様でした」
「いやぁー こちらこそ 貴重な意見をありがとう 助かったよ
そうそう もう遅い時間だから これで帰りなさい」
神山は二人に2万円ずつ渡し
「残業代少ないけど 気をつけて 帰ってくださいね ごめんね」
「わぁー ご馳走になって 残業代まで頂いて ありがとうございます」
由貴と桃子は神山と祥子にお辞儀をして お店を出て行った
「ねぇ あなた お部屋に来てくださる」
神山は一瞬考えたが
「うん いいよ」
神山と祥子は駅前寿司屋を出ると祥子のマンションに向かったが
以前のように楽しい会話がなく 神山も祥子も暗い道を歩くだけだった
神山は歩きながら その壁を取り除こうと思い考えていたが 足取りも重く
祥子は祥子でその空気を打ち破ろうと考えていたが 出来ずに
二人は言葉を交わすことなく 祥子のマンションに着いた
「ごめんなさい 私 寂しかったの」
「そうか 僕も祥子が自分から離れていった事が凄く寂しかったよ」
祥子はベッドの中で神山に充分に愛された後 少しずつ話してきた
神山と連絡を取れなくなったのは 別れた夫(黒石)がしつこく迫ってきて
自分一人で解決できず 黒石の当時の上司に相談にのってもらった
その上司は小島真人と言い 黒石と結婚することに反対をしていた
「なんで 僕に前の旦那の事を話してくれなかったの
祥子の悪いところだよ 自分で溜め込んで、、、」
「ええ、、、ごめんなさい」
「それで、、、」
「ええ 黒石の話は結局は財産目当ての話なんです それで 当時上司で
良く相談していた小島さんに 話したら 僕が話してあげると言われ
お任せしたんです ごめんなさい」
神山は祥子の髪の毛を弄りながら聞いていた
「最初は親切に私の悩みを聞いてくれていたの でも そのうちに
だんだんと 彼のことが私の中に入ってきたのよ ごめんなさい
私 寂しかったの だから、、、 ごめんなさい、、、」
神山は祥子と小島の交わりの事を聞きたくなかったが
「うん それで」
「ええ 貴方と会えない寂しさを小島さんに求めました ごめんなさい」
「でも いまさらだよね 今 経緯を話されても納得できないし
逆に 自分だったらそんなことしたら どうなるか、、、寂しいね」
「ごめんなさい」
「で 今も その小島って男と付き合っているの」
「、、、、、、」
「そうか、、、これからどうする」
「、、、、、、」
「まあ 僕は祥子次第だけど」
「、、、だけど 貴方は一杯女性に囲まれているし、、、」
「なんだよ」
「だって 洋子さんだっているし 私なんか必要ないでしょ、、、」
「なんだ その言い方 随分だね
はっきり言わせて貰うよ 仕事とプライベートは区別しています
それに 連絡をしなくなったのは 祥子からだろ
変な言いがかりは やめて欲しいな」
「ごめんなさい、、、、、、」
「それで その小島って幾つなの」
「ええ 52歳です」
「今も付き合っているんだろ」
「ううん それがね 浮気がばれて 逢っていないわ」
「ふーん」
「ほんとよ 横浜の本牧に住んでいるの それで小島さんは婿養子なのよ
財産は凄いわ 小高い丘全部小島さんの土地で 驚いたわ」
「へぇー じゃ 奥さんと別れられないんだ ふーん」
「ねえ 戻ってきて お願い、、、」
「祥子 言っておくが 都合が良すぎるよ いくらなんでも」
「分かっているわ 恥を承知でお願いしているの ねえ」
神山は祥子の寂しい部分を覗いたような気がして このまま泊まるか否か
少し考えていたが 余りにも自己中心的な考えに付いて行けず
「祥子 悪いけれど 今夜は帰らせてもらうよ」
祥子は結果を予測していたのか 以外にも明るい顔で
「そうね ごめんなさい お仕事にも影響するし GOLもあるし
私 あなたの事 待っています 今度こそ本気よ ねっ」
神山は明るくなった祥子の顔を見て少し安心し 帰り支度を始めた
1階のエントランスホールで祥子が
「GOLを成功させましょうね お願いします」
祥子は深々とお辞儀をすると 神山に抱きつきキスをした
二人だけの空間 祥子はこのまま時間が止まって欲しいと思ったが
「さあ お仕事お仕事 ふふふ おやすみなさい アドバイザー殿」
神山も祥子の事を思い
「じゃ おやすみ」
大きなガラス戸が開くと 1回だけ振り向き祥子に手を振り大通りに出た
タクシーを拾い 赤坂のスタジオに戻った
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