「では また機会があったら出前をお願いします
でもここに来て女将さんの顔を見ているほうが楽しく食べられるよ」
「お上手ね ふふふ 大きい人ってジョークも上手ね」
女将は大きい声で
「は~い 私をどきどきさせたから日本酒サービスよ 分った大将」
「あいよ~ 日本酒大サービス いって~」
まあ楽しい夫婦のやり取りを聞いていると知らない間に食べて
「大将 照り焼きや天ぷらをください」
「はいよ~ 照りと天ぷらだよ~」
おつまみを食べながら 女将や大将と話しながらここら一帯の情報を収集した
話の中に神山が契約した不動産屋の事も出てきて
「あそこの社長はいい人だよ 時々来てくれるけど
ただねマンションの管理人をしている親戚の人がね交通事故で
頭打ってそれからなんか変な行動するっていって
出て行く人が多いと聞いているよ 早く病院に連れて行けばね~」
神山と由紀枝は顔を見合わせて頷いた
そんな話を聞いているとおつまみも食べて神山はネギトロ巻きを注文した
下駄におかれたネギトロを由紀枝はニコニコして神山の顔みて食べた
食べ終わり神山が1万円札をだすと女将が
「いいよ 5千円で また来てね」
そう言ってお釣りを貰い由紀枝のマンションに着いた
部屋に戻ると
「やはり噂が立っていたんだ 怖いね」
「ええ でも亜矢子さんには内緒にしておきましょうよ」
「そうだね これ以上心配させると可哀相だね」
由紀枝は冷蔵庫からビールを出して二人のグラスに注ぐと
「では 今夜をもってこのお部屋とおさらばでかんぱい」
「由紀枝 上手になったね かんぱい」
二人はソファーで乾杯をして一息つくと浴室でゆっくりと過した
6月2日 火曜日 快晴
「あなた起きて もう何回目か分る」
「う~ん 起きるよ もう少し」
「もう駄目よ 起きて でないとおちんちん切るから」
「わかった 起きますよ」
神山は漸く体を起こすと由紀枝の片手にナイフがあるので
「おいおい 本気だったのかよ 参ったな」
由紀枝はキッチンでフルーツを切っていてそのまま起こしに来てしまい
謝るに謝れなくなって
「私だって 本気の時はあります」
そう言ってキッチンでフルーツを調理した
神山は由紀枝の行動をみて 多分本気ではないと見抜いた
由紀枝の顔をみていたら最後に目を伏せて神山を見ることが出来なかった
しかし神山はここは由紀枝のお芝居に乗じてあげようと思った
シャワーを簡単に浴びるとダイニングテーブルに座り
「ねえ由紀枝ちゃん ビールをもらえるかな」
由紀枝はナイフの事を何時 謝ろうか考えていたがタイミングを逃した
「はい どうぞ」
由紀枝は二人のグラスに注ぐと神山に
「さっきはごめんなさい あのナイフはここで使っていたの
あなたを起こす時に置くのを忘れたの ごめんなさい」
「うん いいよ ありがとう さあ食べようよ」
由紀枝は調理器具を使わない朝食を考えてくれた
食パンとサラダ 缶詰の肉類 それらを上手に盛り付けていた
「美味しいね こうすると缶詰も役に立つね」
「冷蔵庫のことを考えると余りメニューがないのよ だからこれだけなの」
「充分さ これだけあれば」
二人はお互いの顔を見ながら食べた
昨夜はベッドに入ると由紀枝がリードして3回も交わり神山が降参をした
神山はこれで祐子に降参をして由紀枝にも降参をした事になる
二人が食べ終わって片付けるとまだ8時30分だった
玄関のドアフォンが鳴ったので神山がモニターを見ると
管理人室の社長婦人が立っていたのでドアを開けた
「庄司由紀枝様 この度は本当に申し訳ございませんでした
本日は主人と相談しましてお祝いを持参いたしました
どうぞ お納めくださいませ 本当にごめんなさい」
由紀枝が
「もう いいですよ奥さん そんなに気にしていませんから」
「でも気持ちでございます あちらに住まわれても宜しくお願いします」
神山が由紀枝に頷くと
「はい 分りました 頂きます ありがとうございます」
社長夫人はお辞儀をすると部屋を後にした
.