「ええ 親を頼らなかったわ ごめんなさいね 変な話をして
次は ちゃんと私の中に入ってくださいね」
「うん しかし上手だよ それって商売でも生かせるよね
人間の心理を巧みに利用するわけだから」
「ええ だから私久保チーフより売上は全然上ですよ
それで皆が私に付いて来ていたんです でも神山さんに怒られてから
やはり上司は上司 そのように考えを改めたんです
結局 自分ひとりじゃ何も出来ないでしょ 上司がいるから」
「うん そうだね たいしたもんだ そこまで分れば簡単だよ」
「ええ ありがとうございます だから今はお仕事が楽しいの」
「うん そして新居だ 頑張ろうね」
「ええ お願いしますね また教えてください」
「うん ではお休み」
「は~い おやすみなさい」
神山は浜野 由貴が少しずつ大きくなっていくのが分った
このまま行けば祥子より上に行くのではないかと感じた
神山は浴槽に湯を張ってビールを呑みながらリラックスした
仕事が順調に進んで怖いくらいだったが後はデザインを纏めなければ
今までの事が全部無駄になると考え気を引きしめた
洗濯機に入っているものを浴室に干して自動乾燥機で乾かし
神山は冷蔵庫からビールを出してテーブルで由貴を考えた
今度のマンションは駐車場があるので車を買ってあげても良いと
思っていたが果たして本人の気持ち次第だった
ベッドに横になるとすぐに寝てしまった
5月12日 火曜日 雨
薄暗い朝だった 目を覚ました神山は夕方と勘違いした
今日の予定が無い事を思い出して横になっていると携帯が鳴った
「はい 神山ですが」
「私 祥子です おはようございます」
「うん まだ寝ているよ」
「ごめんなさい 今朝はなにも出来ないの」
「うん 気にするなよ で昨夜は何時に帰宅したの?」
「ええ 遅くまで仕事をしていてそれからみんなと呑みに行ったの
それで随分と遅くなったわ」
神山は昨日上原の件は言わないで
「分ったわよ 朝はどこかで食べるさ 気にしなくて良いよ
それで 僕は明日から仕事で静岡に行く 15日には帰ってくる」
「えっ また静岡ですか」
「なんで 仕事だからしょうがないでしょ」
「ごめんなさい」
「今 何処に居るの」
「うん お友達の家に来ているわ」
「会社の人?」
「ええ 浜野さんのところよ なぜ?」
「いや そんな遅くまで何で呑んでいるのかと思ったのさ」
「それでは 失礼します」
神山はこれで完全に誰かと外泊と確信した
念のため祥子の部屋を訪ねたが誰も出てこなかった
神山は由貴に探りの電話をした
「やあ おはよう 神山です」
「ふぁ~おはようございます 朝から嬉しいわ」
「うん 昨夜言うのを忘れてしまったけど カーテンはどうする」
「そうか 考えていなかったわ どうしよう」
「代々木にとりあえず持って行くか それであとで選べば良いよ」
「そうですね そうします」
「うん 寸法が多少足りなくても最上階だから見えないよ
僕はここから望遠鏡で覗くけどね」
「ふぁ~ 神山さんてショーツの趣味だけじゃなくて
そんなHな趣味もあったんですか」
「だとしたら どうする」
「う~ん でも神山さんの事だから許すわねきっと」
「そうか ありがとう ところで朝食はなんですか」
「今朝は 一人だから何時もと同じ簡単よ」
「食べに行きたいけど時間が無いな」
「そうね やはり昨夜来てくれれば良かったわ」
「どうしたの」
「ええ 非通知の無言電話が何回かあったんです 怖かったわ」
「酷い話だね それは そうしたら携帯の設定を非通知拒否に
すれば掛かってこなくなるよ 出来る?」
「ええ 昨夜 設定しました でも嫌よね」
「うん そうしたら買い換えるか」
「ええ 考えています 初めてだから怖かったわ」
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