2011年10月12日水曜日

Vol.459 薔薇 -6-31



神山は最後まで踊れるようにカクテルを少し控えた
ステージではエロチックでコミカルなショーが始まった
神山はゴテンバ グランド インを思い出していたが
洋子は目の前で繰り広げられる踊りに夢中だった
からだをボディーストッキングだけの男女が踊っていたが
男性が横になって仰向けで寝るともう一人の女性が出てきて
顔を跨いだり腰を跨いだりと洋子が体験したばかりの光景を見て
両手で顔を隠してしまった神山が
「ほら 見てごらん 面白いよ ねぇ」
そう言われて両手の間から覗くと 顔に跨いだ女性はなにやら
用足しをしているように見え男性がいやいやをし結構楽しかった
会場から 盛大な拍手がってショーは終った
流れて来た曲はバラードであちこちのテーブルからカップルが
出てきてダンスを楽しんでいた アレックス氏が
「さあ 踊ってきなさい ワシはここで見ている」
神山と洋子はアレックス氏に送り出されて 先日踊ったように
洋子が神山の首の後ろで両手を交差させて神山が両手を洋子の腰を支え
リズムを取って踊っていた だんだんと足運びがそろうと
神山が動くと洋子も腰をつけてステップを揃えていた
曲も最後になりかけた時に神山は瞬時に廻りに誰もいないことを
確認して 曲のエンディングに合わせて洋子を少し横にして
ひと回りして終った 周りからもアレックス夫妻からも拍手を貰った
席に戻ると夫人が
「私にもしてくれる」
「ええ 良いですよ」
夫人は嬉しそうにアレックス氏にピースサインを出して
神山と一緒にセンターで踊った
この時はやはり夫人が有名人なのか 踊りを遠慮をしてセンターを
二人に明渡しテーブルで見ていた
夫人も洋子と同じ様に神山に腰を押し付けてステップも上手に
神山と息が合ってきた ただ身長が神山と同じ位なので
少し見栄えが良くなかったが それでも踊る格好が決まっていて
いよいよ曲のラストになると神山は先ほどと違い
夫人を少し抱き上げて真横にして一回りし終えると
周りからは拍手が盛大に起こり指笛もなりやまなかった
席に戻ると夫人は興奮していて
「すごいわ 踊っていたら急に天井が見えたの ビックリ」
「ええ 美しかったのでそうさせて貰いました」
洋子も
「凄く綺麗だったわ だけど貴方は夫人に腰を押し付けすぎよ
すこし厭らしかったわ もう 私の時はああじゃなかったから」
「まあまあ 洋子さん ワシも焼いているよ わしの時は
あそこまで腰を付けてくれないよ ははは」
4人は又 大爆笑だった
アレックス夫妻と話していると アメリカナ大使館の高官がやってきて
「アレックスさん 紹介してください なかなかいい男だね」
そう言われてアレックスは 神山と洋子を紹介すると
「そうか そんなに切れ者か 神山さん何かあったら
お力になれるかもしれない 連絡を下さい 
何しろアレックスさんに気に入られる事は非常に珍しい では」
アメリカナ大使館の高官がそう言い帰った
「彼は非常に優秀な人物で日本通でもある 今度一緒に食事をして
親交を深めておけばアメリカナを見方に出来るよ」
「ありがとうございます 近いうちに連絡をします」
「なにしろ 彼は家内の大ファンで結婚と聞いてガッカリしていたそうだ」
神山と洋子は楽しい時間だったがアレックス氏が帰ると言い出したので
帰り仕度をするとアレックス氏が
「ここのカードだ 名前も神山になっている このカードを使いなさい
ここは このカードが無ければ入れない 今後 私がいなくても
山ちゃんのカードで入れるよ では失礼する」
神山と洋子はアレックス夫妻にお辞儀をして席について
「さあ どうする 洋子」
洋子は時計を見るとまだ22時を回った所だが
「少し 静かになりたいな」
神山はバニーガールにチェックを頼むと
「全て 済んでいます アレックス氏のカードで」
神山と洋子はお礼を言って店を出るとタクシーで
代々木のマンションへ向った

部屋に入ると洋子は浴室に行って洗濯物をたたんでボストンにしまった
神山がソファーに座ると洋子が
「ねぇ ゆっくりと湯に浸からない」
「うん そうだね そうしよう」
神山が浴室に行くともう湯船に湯が溜まっていた
先ほど洋子が貯めたのだと感心した
神山が居間に戻って裸になると洋子は寝室で脱いだのか
バスタオルを巻いて出てきた
二人でシャワーを簡単に流し湯船に浸かっていると洋子が
「あ~あ 今日はなんだか大変な一日だったわね」
「うん お疲れ様でした 正直こんなに忙しいとは思わなかったよ」
「そう 気疲れね きっと 普段ならなんてこと無いもん」
「気疲れだね 完全に お疲れ様」
二人は 寄り添って夜空をぼんやりを眺めていた
今夜だけは二人ともこのままゆっくりしたいと思っていた
神山も洋子も仕事のことは口に出さなかったが洋子が
「アレックス夫妻も大変ね さっき聞いたらこの後ロンドンへ行くって
それでパリに寄って帰国すると言っていたわ」
「うん 世界中を分刻みで動いているんだね 大変だ 僕は出来ないな」
二人は再び静かな夜を満喫していた
洋子が立ち上がって浴室から出ると冷蔵庫から地ビールを出して
「はい」
神山に渡し 二人で缶のまま乾杯をしてまた夜空を楽しんだ
「さあ出よう どうするここに泊まれる?」
「うん そうしたいけど 帰ります ごめんなさい」
「わかった」
「怒っている?今夜泊まる事は言っていないの だから」
「うん 分っているよ」
神山は多分駄目だろうと思ったがやはり無理だった
今夜は祥子も実家に帰って居ないので二人でここに泊まろうと思った
二人が帰り仕度を終わり洋子が部屋の中を見回し終ると神山が
「ねぇ 洋子 明日は休んでくれ ここ休んでいないし」
「そんな 貴方は?」
「うん 一応次長室に出るけど休みにするよ だから明日秘書課に
休みと連絡をして欲しい」
「分ったわ そうしたら どこかドライブに行く?」
「ううん 洋子は完全休養に当ててくれ 月曜日から忙しくなるから
アルタのGプロジェクトも動き始めるし 休める時に休んでくれ」
「はい 分りました ほんとごめんなさい」
二人はもう一度部屋を見渡して出た 
タクシーが来たので先に洋子を見送り神山は次に来たタクシーで帰った






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