2011年10月6日木曜日

Vol.453 薔薇 -6-31



「うん 是非帰る前に合いたかったからね」
夫人は洋子にバラの花束をプレゼントした 神山がアレックス氏に
「アレックスさん 僕のがないよ」
「心配するな ほらこれだよ」
アレックス氏が用意したのはアレックスグループで
絶対権力者しか着ることが出来ない噂のブレザーだった
神山は手にとって見ていると
「山ちゃん 早く着ておくれ みせてくれ」
アレックス氏にせがまれ 上着を洋子に渡しブレザーに袖を通すと
進行係が 
「神山さんはここでもう一つ勲章を得ました あのアレックスジャパンの
最高責任者になられました おめでとうございます」   
来賓客たちは予想外の出来事にあちこちでざわざわした
進行係が静めるとアレックス氏の挨拶が始まった
要約すると 神山とはお尻で始まった仲で 大変勇気があり
紳士で 的確な判断力を持っている アレックスジャパンの欠点を
迅速に見つけ再建を約束してくれた 私は彼のために何でもする
ここにいる人たちも神山に協力をして欲しい 
挨拶が終ると拍手が鳴り止まなかった
今度は夫人の挨拶で同じような内容だったが
神山には洋子と言う素晴らしい女性が付いているので
決して 神山を横取りするよう考えは持たないで欲しい
だって 私だって諦めたんだから お願いね 
この挨拶にも会場から拍手が鳴り止まなかった
二人のスピーチは英語で話をしたが 予め翻訳したのを
読み上げたのでタイムラグが生じたがそれでも素晴らしい挨拶だった
アレックス夫妻が席に座ると会場が明るくなり次の祝辞が始まった

神山はグリーンにブルーが少し混ざった素敵なブレザーを脱ぐと
「神山さん このブレザーは世界でパリ、ロンドン、ニューヨーク、
そして東京の4着しかない1枚だ これを着てパリに行けば何でも出来る
ただし向こうのトップと相談をしてからだけどね したがって世界で
4番以内に入ったことになるね おめでとうございます」
「アレックスさん 奥様 ありがとうございます」
「しかし このスーツは素晴らしい 高かっただろう 洋子と同じ生地だし
素晴らしい どこのメーカーですか」
「これは ニーナ・ニーナのスーツですよ」
「ああ ニーナ・ニーナは知っているが 婦人だけだろう」
神山はスーツを着ている経緯の話しすると
「なんと素晴らしい話だ その筒井さんも山ちゃんが好きで
プレゼントをしてくれたんだよ いい話だ しかし世界で3着とはね
この生地でこの作りならば100万円でも出来ないよ 大切にね」
時田は英語を多少出来ても神山とアレックス氏の会話には
追いつけず洋子が同時通訳をしていると また涙ぐんだ
「洋子 本当にいい男だな ワシが女だったら絶対に離さないな」
夫人は時田が涙ぐんでいる訳を洋子に尋ねて
「時田さんは優しい人ですね 時田さんが居るから神山さんも居るのね」
進行係の上手な語り口で祝辞が進められ前半の部が終わり会食になった
ここで倉元が乾杯の音頭を取った
「おう 山ちゃんおめでとうございます 今まで大変お世話になりました
ありがとうございます これからも持っている力を存分に発揮して
山ちゃんらしい仕事をしてください 洋子ちゃんも山ちゃんを
支えてください お二人ともご昇進おめでとう かんぱ~い」
会場の皆が祝福して乾杯をした

食べ始めてからすぐに催事課の時にお世話になった業者が続々と
神山のテーブルを取り巻き順番に挨拶をしていった
副社長の時田に挨拶して内藤社長に頭を下げてアレックス氏に挨拶してと
業者も大変だった
神山と洋子は起立をして対応していたので殆ど食べられなかった
握手をして神山と洋子に二言三言話をするとご祝儀袋をわたされ
「これは お祝いです受け取ってください」
と みんなが置いて行った 
当初受付で預かる事をしていたが神山に直接渡したいと希望が出て
会場内で神山に直接手渡しが出来るようになった
3列で積み上げても相当な高さになり ホテルの従業員が袋を用意して
その中にしまった 
祝儀袋自体飾りがあってがさばり それが100人を超えるから
相当な量の大きさになった
神山と洋子は出された料理を最初の一口、二口しか食べられず
殆ど手をつけていない状態だった
内藤社長がそれを見て進行係を呼んで
「ここで少し中止出来ないか なにも食べていないよ彼らは」
「ええ 私も先ほどから考えていたんですが 後ろが詰まっていまして
中止すると後半の祝辞の時間が無くなってしまうんでよ」





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