2011年5月7日土曜日

Vol.301 鈴蘭 -1-22


頼んだ事が無い あぶり焼きや照り焼きも来た しかし量が多かったので
「こんな食べられないよ」
「はい アルタの高橋様が後少しで来られますと電話がありまして
それで毎回同じものだと如何な物かと思いまして作りました」
「そうですよね 普段頂かないもん」
神山と祥子はあぶり焼きや照り焼きを食べた 普段余り食べないので
美味しかった 祥子も照り焼きを食べ喜んでいた
「どう 美味しい?」
「ええ ここの新鮮だから凄く美味しいわ」
「このしめ鯖を食べたら 驚くよ」
「頂きます」
祥子は切り身を摘んで口に運び食べてみると
「ふぁ~ なにこれ食べた事ないわ 油も美味しいし 幸せよ」
「ははは みな美味しい物を食べると幸せになるんだ」
「だってあなただって同じでしょ」
「だから 幸せだよ」
そう言っていると女将がキスや野菜の天ぷらを運んできた
おまけにゲソのから揚げも付いて来た
「ふぁー美味しそう 観ているだけでおなかが一杯よ」
丁度高橋が店に入ってきた 女将や大将に挨拶をして
「済みません遅くなって」
「えっ 早くなってでしょ ねぇ久保さん」
「お疲れ様です 美味しいですよ」
女将がビールとお野菜の天ぷらを持ってきた 神山が
「和風居酒屋兼寿司屋みたいになっちゃったね」
女将はニコニコして戻って ビールを運んできた
「では 今夜は副社長に誉められたで乾杯」
「孝ちゃん そうやって領収書に書くんだ」
「うん でないと理由がつかないじゃん」
「そうだね」
「ところで どうでした 時田さんは」
「うん 涙流して喜んでいた 食べながら美味しいって言いながら」
「そうだよな 実は以前ゴルフの帰りに寿司屋に寄ったんですよ
そこでしめ鯖があったので 大好きだと言われたので注文したんです
しかし一口食べて もう箸を進めなくなったんです 不味かったんですね」
「そんなことが有ったんだ」
「私だってこんなに美味しい しめ鯖ははじめてよ」
「そうでしょ だから魚好きにとってはお宝を頂いているみたいですね」
「そうだよね 僕自身あまりしめ鯖しめ鯖と騒がないほうなんですよ
たまたま大将に聞いたら逸品があるよって言われたから食べてみたんです」
「普段言わないですよね よっぽど好きでないと」
神山ら3人はおしゃべりしながら天ぷらや魚を食べていった


「どうだね 杉田君ここは 居心地がいいだろう?」
「はい やっぱり偉くなって こう言う処に来たいです」
「まあ 頑張れば評価はあとから付いてくる 山ちゃんも言っていただろ」
「はい 頑張ります」
時田と洋子 杉田はこじんまりした小料理屋に来ていた
お客は一日5組までしか居れず営業している
十二畳ほど部屋は月見窓があり外には桜の古木が覗いた
ほのかな月明かりが照らし静かな夜だった
ここは時田の隠れ家で知っている人間は運転手だけだった
この離れは部屋の外に化粧室がありお会計もその離れの玄関で
行われ そこから車に乗れるようになっている
殆どと言っていいほど他の客と鉢合わせしないようお店でも
気を配っている 
注文聞きは最初の飲み物のことだけで後は会席のように
お客の食べる早さに会わせ出てくる
先ほどお銚子が運ばれた時 お酒が早く無くなるので 時田が
「若いのが居るから 多めに持ってきてくれ」
と頼んだくらいで女将は滅多に部屋に来ない
無くなったら持ってくるまで待っていなければいけなかった
杉田も始めての事なので緊張をし お酒が入っているのか分らなかったが
確実に躰に廻っていて 自身が気が付いていなかった
「副社長のように偉くなると 何時もこう言う処来れますか」
「うん 来れる」
「頑張ります すみません トイレに行って来ます」
「うん 部屋を出て右側だ」
「はい 分りました」

杉田が出て行くと時田が
「いい 芯が強い子だ しかし自分でも言っているように
少し 甘えん坊だな どうかな洋子 上を付けるんではなく





.