「ええ だけどそんな事したら ねたまれるから言わないわ」
「あっそうか そんな事で関係が壊れると嫌だよね そうだね」
話が一通り済むと車窓に海が見えてきた
車内を見渡すと 二人だけで女性の車掌は扉の向こう側にいた
時々こちらを観ているみたいだが 席には来なかった
ビールを呑み終わると なんだか物足りなくなったので
車掌を呼んでみると
「はい こちらにメニューがございます」
そう言われ 神山は恥ずかしくなった
アルコールメニューが目の前にあって
『ご注文は赤いボタンを押してお待ちください』と書いてあった
神山はウイスキーの水割りセットを頼み亜矢子も同じ物を頼んだ
「ふぁ~ ここにメニューが有ったなんて 知りませんでした」
「そうね 私か気が付けばよかったわね ごめんなさい」
亜矢子は自分のせいで神山の精神状態を混乱したと思い謝った
「そんなこと無いよ 僕が気が付かなかっただけさ」
神山は亜矢子のほほに口を近づけようとした時 女性の車掌が
「お待ちどうさまでした」
と 水割りセットを持ってきた
小さいサイズのミネラルウォーター 紙コップに氷
ミニュチュアサイズのウイスキー コレがワンセット
神山も亜矢子もびっくりして
「もう少し 大きいかと思ったわ しかしホテルに置いているのも
このサイズだから しかたないでしょ ねぇ あなた」
亜矢子はそう言いながら 神山のセットを作り
「はい 出来ました ウイスキーの水加減わからないので
ごめんなさい」
亜矢子は自分のを作ると さあ呑みましょと誘った
「ねぇ 話し変るけど 教えて」
「なにを?」
「うん 今夜の赤沢ホテルだけど スタンダードが満室で
スイートに泊まるんだけど」
「えっ スイート 凄いわ すごすぎる」
「うん そこで この券だともしかして追加料金が
発生するかもしれないんだって 資金は大丈夫だけど
実際 あのクラスだとスタンダードの倍見ておけば大丈夫かな?」
「そうね そんなとこだと思います だけどそこまでしていいの?」
「うん それは大丈夫だけど ほら何も知らないと
価値が分らないから」
「そうだけど すごいわ ほんとよ 部屋が取れないので有名よ」
「へぇー じゃあ凄いとこに行くんだ~ やったね 亜矢子」
「嬉しいわ 夢見ているみたい」
「夢じゃないよ ほら」
そう言って 亜矢子のほほに軽くキスをした
亜矢子は真っ赤な顔になって
「収まりましたので 今夜は可愛がってください」
神山に顔を向けず俯いたまま 小さい声で伝えてきた
「わかった 分ったからこっち向いてごらん」
亜矢子はまた泣いているのか 何も言わずに顔を胸に付けてきた
優しく髪をなでてあげると リンスの甘い香りが漂った
ほほを両手で優しくはさみ 顔を上げると目が潤んでいた
亜矢子は目をつぶり口を少し出し神山と唇を合わせた
僅かな時間だったが 昨日のように1週間前の情事が思い出された
目を開けてみると こちらを向いていた女性車掌と目が合い
彼女は気まずさそうに 目をそらした
神山は女性車掌にウインクをし 亜矢子の髪をなでた
亜矢子は目を開き 嬉しいと言った
神山はウイスキーを呑むと亜矢子も呑み 明日の観光を話し始めた
「どこに行きたい? 時間はたっぷり有るしどこでも行けるよ」
「そうね 迷うわ 会社では休みになったら どこどこに
行きたいって思う事が あるんだけど、、、」
「う~ん 天気が良さそうだし 近場で遊ぼうか?」
「ええ あなたに任せます お願いします」
神山と亜矢子が話していると伊豆高原駅に着いた
駅前からタクシーを利用しホテルに着くと
チェックインの手続きをした
「先ほど 予約した神山ですが、、、」
受付にそう言ってチケットを渡すと
「神山様 このチケットはどこのお部屋にお泊り頂いても
追加料金は発生しません ご安心下さい」
受付嬢は笑みを浮かべ答えた
「そうしたら 一番よいお部屋をお願いします」
「はい このチケットのご利用は当ホテルの最上クラスを
ご用意させて頂いてます お部屋をお調べいたしますので
少々お待ちください」
受付嬢が空き部屋 それも最上級クラスを探しあて 神山に
「お部屋をご案内しますので ここにご記入をお願いします」
連絡先などが書き込む用紙に 神山の連絡先を記入し
亜矢子のところで迷っていると
「お名前さまだけで 結構です」
神山は同伴者のところに亜矢子と記入し 用紙を返した
部屋まで案内という事で その受付嬢がカウンターから出てきて
「お荷物を お持ちいたします」
亜矢子の荷物を持ち 神山も勧められたが
断り自分で持つ事を伝えた
受付嬢は歩きながら
「そのチケットは 最高級のVIPチケットです
ですから チケット1枚で5名様までOKで何泊でもできます」
「そうすると 夏休みなんか利用できますね」
「はい しかしシーズンインは最大で2週間のご利用なんです」
「それでも2週間はいいね ねぇ亜矢子」
「そうね 素晴らしいわ」
話をしているとエレベーターで7階に行った
一番奥まで進み
「こちらのお部屋でございます 別館スイートルームでございます
尚 このカードがお部屋の鍵になっておりますので
大切にお取り扱いを お願いします
紛失のさいはフロントまでご連絡下さい
あと ご宿泊は本日と明日の2泊3日でよろしいですか」
「ええ お願いします」
「ご宿泊延期の場合 お部屋が変わることもございます
ご容赦ください」
「食事は部屋で頂けるの?」
「申し訳ございませんが 3階のレストランをご利用となります
おタバコは お吸いになられますか?」
「はい 吸います」
「では ご夕食は7時からご用意させて頂きますのでお願いします」
「はい わかりました どうもありがとうございます」
.