改めて神山と田代もお辞儀をした
「さあ それでは席につきましょう」
片側に内藤夫妻が座り 反対側に純子を挟んで田代と神山が座った
5人が席につくと地ビールが運ばれてきた 内藤が
「では 仕事の成功を祈って乾杯」
皆がビールを飲み干すと赤ワインが運ばれ
新鮮な魚介類も程よく焼かれ運ばれた
少し落ち着くと純子も神山や田代と話をするようになった
真奈美が神山に
「純子さんは私と同じ大学だったの」
「そうなんですか ご主人同士も慶応大学の同級生でしょ」
「そうなの 私たちも同級生よ だから昔から良く遊んだわ」
神山は隣に座っている純子を眺めてしまった
初夏を思わせるライトブルーのジャケットに
白いブラウスが眩しかった
神山が見とれていると 真奈美が
「神山さん 箸が進んでいないですよ どうされたのかしら」
みなで笑ってしまった
「真奈美さんも美しいし 純子さんも美しいし 今夜は最高」
この言葉で打ち解け楽しく食事が進んだ
女性同士が大学当時からの付き合いがあると
お互いの旦那の出身校が問題になるところだが
このように旦那同士も同じ大学でそして同じクラブで活躍し
現在 企業の社長という 地位などで比べても一緒だと
比べる物差しが無く 後は子供の進学だけになるが
二組の夫婦には子供が出来ていなかった
真奈美は22歳で多摩美術大学を卒業後
アルタのデザイナーとして活躍
その時 内藤はまだ営業係長だった
5年経った時には製作部門の部長に抜擢され 真奈美を認め始めた
翌年 内藤が30歳のときにプロポーズをし 翌年結婚
一方 純子は広告代理店の博報堂に入社して活躍する
真奈美の結婚式の時に椿を紹介され 付き合いを始める
翌年にゴールインを果たす
結婚の時期については真奈美のほうが1年先輩だが
他の事についてはイーブンで何をとっても差が無かった
4人は家族ぐるみでよく遊んだが 旦那がお互いに代表になると
少しずつ離れていったが 女同士は今でも時間があれば合っていた
神山のロレックスに付いても純子と真奈美が選んだもので
純子も若手でそこまで出来る人間を知らなかったので興味を持った
内藤夫妻 純子たちは余り赤ワインを呑まなかった
神山も控えながら呑んだが お代わりの回数が一番多かった
ステーキを食べガーリックライスを食べ終えると
23時少し前だった
内藤が会計を済ませると
「山ちゃん まだ時間いいでしょ」
「ええ まだ大丈夫です」
内藤が先導して田代と歩いていると
真奈美と純子が両脇から腕を組んできた
神山がびっくりした様子でいると 真奈美が神山の耳元に
「今夜は楽しみましょうね」
そう言って純子と目を合わせていた
純子も組んでいる腕に力を入れ躰を引き寄せていた
神山が連れて行かれたところは2階にあるナイトバーだった
扉が2重になっていて中の音楽が外に漏れないようになっていた
ここは宿泊者しか利用できず
更にホテル側の認めた人しか入れなかった
ある部分 秘密のナイトバーだった
観光情報誌やホテル紹介でも記載されていない施設だった
内藤は内扉にあるカードスキャナーに自分のカードを
差し込み扉を開けた
ホールの造りは真中にステージがあり 壁周りが客席になっていた
客席はボックスシートで隣りとは壁で仕切られていた
ホールマネージャーが内藤をみて挨拶した
「宜しく頼むよ」
ホールマネージャーが頷き5人を席に案内した
席は正面に対してコの字型に作られていた
奥の真中に神山が座り両隣に真奈美と純子が座った
丁度正面を向いた格好で ステージを見ることが出来た
片側には内藤とフロアレディーが両隣に座り
もう片側には田代とフロアレディーが両隣に座った
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