2011年1月25日火曜日

Vol.199 青葉 -3-17


「えっ なに 倉元さん」
「おう 数字を出さなければいけないだろ」
鈴やでは毎週木曜日には今までの個別累計経費を出したり
月の予算に対しプラスマイナスを計算する大事な日だった
「そうですね 倉元さん 神山部長どうぞお気をつけて」
由香里は倉元と神山に聞こえるように言い自分の席に戻った
由香里の後姿を見た杉田が
「大丈夫ですか 先輩?」
「うん? 何が」
「だって 怒っていますよ」
「分るけど しょうがないだろ 怒らせておけ」
「へえー 先輩 強気ですね」
「ばーか 何言っているんだよ」
「だって 由香里姫を怒らせると大変じゃないですか」
「大丈夫だって 心配しないで来週の火曜日頼むぞ」
「任せてください 大丈夫ですよ」
神山は杉田と話し終えると倉元に語りかけた
「倉さん ありがとうございます」
「おう 気をつけていって来い」
「はい」
「お土産は 熱海の温泉饅頭かな」
「ええ 由香里姫の分も買ってきます」
「おう そうだな 頼むぞ この頃機嫌悪いからな」


「お客さま 切符を拝見させて頂きます」
神山はどこから声が聞こえてきているのか分らなかった
最初は由香里の声に聞こえ なぜ起こすのだと思い
その次には亜矢子がわざと起こしているように思えたが
もう一度はっきりした声が聞こえた時に目を覚ました
自分は今 新幹線で小田原に向かっている事に気がつき
目を開けると車掌がそばでこちらが切符を出すのを待っていた
眠たい目で切符を出し検札が終ると又 目を閉じ眠ってしまった


4月21日 火曜日 朝 上原のマンション
「では 気をつけて行ってきて下さいね」
「うん 祥子もたくさん友子ちゃんと遊んできなさい」
「はーい」
今週 祥子は火曜日の仕事が終ってから名古屋に帰ると言って来た
先週16日の夜に自分の苦悩している事を神山に話してからは
毎日が機嫌がよくなり仕事に熱中していた
通常は土曜日の夜 会社が終って名古屋に帰るのが普通だったが
今週と来週の週末は上原の仕事が有り
今回は火曜日に帰る事になった

4月16日 木曜日 夜 銀座築地寿司屋いせ丸
「実はね 浜野由貴に上原の件を
任せて良いものかどうか迷っているの」
「どうして?」
「ええ この頃 私に反発をするの」
「それは仕方ないだろ 若いし やる気あるし」
「ええ それなら 私も全然構わないわ
しかし 今の彼女は天狗になっているの 分かる?」
「うーん、、、、」
「前にも話したけど 自分の感覚で商品展開をするの」
「うーん 困ったな、、、」
「そうでしょ 本部フランスの意向を取り入れようとしないの」
「しかし祥子が注意すれば済む事ではないのかな」
「そうなの 注意をすると 持論を持ち出すんだけど
その持論がまるっきり外れている訳ではないので 躊躇するの」
「逆に 彼女に何もかも任せてみれば、、、」
「大丈夫かしら、、、」
「何を心配しているの?」
「ええ だって 彼女 その事で少し天狗になっているから」
「そうか、、、 そうすると少し難しいかな、、、」
「そうでしょ」
祥子と神山は しばし言葉がなくなった
神山は祥子をこの寿司屋に早いうちに連れてきたいと思っていた
いつも 祥子の知っている所とか駅前などなど
自分で『ここはいいお店だから 一緒に食事をしよう』と
誘う時間がなかった
神山は自慢できる築地に誘えてよかったと思っていた
暖簾をくぐって奥座敷に行く時





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