「あなた 宝くじが当ったわ、、、それも2等、、、」
神山は上原の現場に居る時に携帯で亜矢子から知らされた
「えっ 本当ですか?」
「ええ 本当よ 凄いわ 嬉しい」
「良かった 本当に良かったね」
「ええ あなたが買ってくれたから当ったのよ」
亜矢子はこれ以上ない笑顔で神山に抱きついて来た
神山も亜矢子をしっかりと抱きしめキスをした
ホテルでは椿総支配人などが皆でお祝いの拍手をしていた
4月16日 木曜日 曇り
「ねえ あなた起きて お願いだから」
祥子は神山の携帯電話を鳴らしながら部屋の前で起こした
聞こえてくる声は亜矢子ではなく椿の声でもなかった
神山は遠くから聞こえる祥子の声で夢から覚めた
昨日はアルコールを控えたのだがぐっすりと寝込んだようだった
「ごめんごめん 今 そちらに行きます」
神山は玄関を開けると片手に携帯電話を持った
ルームウェアー姿の祥子が立っていた
「もう 何回起こしたら 起きてくれるの?ほんとうに」
神山は眠たい目をこすりながら
「ごめんごめん ぐっすりとしてしまった」
「もう 心配させないで 起きて来ないんだから、、、」
祥子は神山の返事を待たずに自分の部屋に戻った
神山はそのままの格好で顔を洗って祥子の部屋に行った
祥子はいつになく機嫌が悪く
「なんで そんなに遅くまで寝ているの?」
神山は答えようがなく黙っていると
「昨夜は本当に寝ていたの?」
またまた攻撃である
神山は携帯電話で言った通りだと説明したが
「だけど 何回も連絡を入れたのよ ほんとうに」
神山自身もここまで言われると流石に気になり
「そんなに言われても事実だからどうにもならないでしょ」
今度は祥子が黙ってしまった
神山もこんなにきつく言わなければ良かったと思ったが
いつまた同じ様に言われるのか考えると
言っておいて良かったと思った
「ねえ 本当に大丈夫? いくら起こしても起きて来ないんだから」
「うん 大丈夫だよ」
祥子はいつものように和食のメニューを用意していた
「祥子 今日の現場だけど 床材が入ってくるけど、、、」
「ほんと すごいわ 見に行きたいけど、、、」
「用事があるなら無理する事ないさ いつでも見られるよ」
「でも あの床材がフローリングになるのでしょ 見たいわ」
「今朝は本社?それとも銀座?」
「ええ 銀座なの」
そう言うと祥子の顔は暗い表情になった
「どうしたの うつむいて」
「ええ 今夜お話ししますね」
神山はそれ以上聞いても答えが返ってこないと思った
「では 今夜は何処かで食べようか?」
ようやく祥子の顔が普段の笑顔がもどり
「そうしたら どこか銀座で美味しいところが良いな」
「何にする?和食?中華?、、、」
「お任せするわ」
祥子の笑顔を見ながら話していると現実を忘れる思いだった
ここに居る事も現実を忘れさせているし、、、
しかし 今の時間を大切にする事については
祥子も神山も同じ考え方だった
「そうしたら 電話をするよ」
「ええ お願いね 待っています」
「しかし 終日銀座なの?」
「ええ 今日は一日銀座店にいますよ」
「分った 連絡をしますよ」
祥子と神山は今夜の約束をしながら朝食を食べた
今朝のメニューには納豆がなかったのでキスが出来た
神山は祥子と別れると自分の部屋で上原の仕度をして
祥子の部屋で仕度を待った
「お待たせしました さあ行きましょうか」
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