2011年1月6日木曜日

Vol.180 青葉 -1-15

一人なのでゆっくり食べていても時間が進まなかった
ロレックスを見てもまだ充分に時間があったが
亜矢子のプレゼントを買うために早めにレストランを出て
ブティック「モテリコ」に行ったがパイプシャッターが閉まっていた
ウインドーを良く見てみると
先日 由香里に買ったブレスレットと同じものが飾ってあった
あの時 最後のブレスレットと言っていたのが、、、
しかし 由香里と同じものをプレゼントするのは如何なものか
由香里のブレスレットと違うものは無いか探すと
少し上品にデザインされたブレスレットが見つかった
小さなダイヤが所々に埋め込まれたホワイトゴールド仕様で
値札を見たら由香里のより高かった
神山は亜矢子がこのブレスレットを腕にはめた格好をイメージし
仕事でも使えるし プライベートでも充分利用できると思った
由香里のはデザイン性で高かったが こちらは材質で高かった
由香里のときも30万円したが こちらは80万円もした
一瞬 由香里と同じものにしようと考えたが 余裕があったので
こちらを贈る事に決め 部屋に戻った

9時前に部屋を出て3階のエントランスにつくと
観光客が精算手続きやおみやげの買い物客で賑わっていた
そんななか橘が目立つところに立ち神山を待っていた
「神山様 おはようございます」
神山が時間前に着いた事が良かったのか にこやかな顔つきだった
「おはようございます 橘さん お願いしますね」
二人は軽くお辞儀をして挨拶をした
橘の後ろには桜川亜矢子が立っていたが 同じ様にお辞儀をした
神山が頭を上げると 亜矢子は少し笑い顔で見ていたが
ここで反応すると色々と問題が生じると思い 見ていないフリをした
「神山さん 先日お話をしました サインの件ですが」
橘は先日神山がホテル内で撮影した画像にサインボードを
はめ込んだプリントを見せた
PCで画像処理されたプリントは素人では合成写真とは
思えない程の精密さできちんと処理されていた
「素晴らしい出来ですね この画像は、、、」
「ええ 私も自分のホテルにある物と錯覚してしまいました」
二人は本題に入り 取り付け位置から決めていった
大きさなど微調整を行いながら行われていったが
亜矢子が時々高さや大きさについて意見していた
橘や神山も亜矢子が言っている事は正しいと思って
調整に調整を重ね3箇所のサインボードが決まった
後は色彩の問題だけだったが 基本ラインは崩さずに考える事にした
アルタから提案されていたのは
ベースがステンレスのヘアライン仕上げに全ての文字が黒色だった
しかし アウトレットのテーマカラーが決まると果たしてどうか?
神山は今までもこのような事に何度も体験しているので
テーマ部分のカラーは差し替えできるようにしておいて
下部に付随するインフォメーションは独自性を打ち出す事を提案した
神山は簡単なスケッチをして橘に示した
「そうですね この方がアウトレットが分りやすいし
そして全体のイメージはこのホテルにマッチしていますね
そうしましょう このデザインで行きましょう」
神山は更に文字の色も黒ではなく 少し明るい藍紺に決めた
夜は照明によって黒っぽく見えるが 朝は太陽光にさらされて
綺麗な紺色に見えるからだった
橘は色彩についても神山の意見を取り入れた
早速 デザイン提案書に神山の言った事を書き入れようと思ったが
「神山様 私が記入すると間違えるかも分りませんので
どうかここは神山様に ご記入頂けませんでしょうか?」
「ええ いいですよ」
神山は デザイン提案書を受け取ると先ほど決定した事柄を記入し
補足説明もホテルの便箋を利用してきめ細かく指示をした
橘は神山の的確なすばやい決定にほれ込んだ
「神山様 今日は本当にありがとうございます
私の考えではとうてい出来ない事でした」
「そんな事無いですよ 普段の仕事と変りませんから、、、」
「しかし ご判断が的確で早いです 驚きました」
「そんな、、、」
「椿支配人がほれ込んだ意味が分ります」
「そんなに誉めないで下さいよ 恥ずかしいでしょ」
「すみません 早速アルタ様にFAXしてきます
暫くお待ちください 桜川君 何かお飲物で寛いで頂きなさい」
「はい 何にされますか?」
亜矢子は 嬉しそうな顔をして神山に聞いてきた





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