2011年1月24日月曜日

Vol.198 青葉 -3-17


4月22日 水曜日 快晴

「それでは 孝ちゃん行って来るよ」
「はい いい話を待っていますよ」
神山は上原の現場で高橋と別れるとタクシーで東京駅に向かった
先週 亜矢子と約束をした熱海旅行だが
周りに悟られずに出かける事がいかに難しい事かと思った
東京駅に着く時間が長く感じられた
それでも思ったよりは早く着き余裕が出来た
新幹線 朝8時のプラットホームはビジネス客で溢れかえっていたが
所々に家族連れやカップルも目に付いた
これから行く旅先の話をしているのだろうか 
楽しそうに話をしている
時計を見てみるとまだ時間が有ったので亜矢子に電話をした
「神山ですが」
「はい 亜矢子です」
「これから 小田原に行きます 今 東京駅です」
「はい 分りました」
「昨日も伝えたとおり 熱海の駅で待っていて下さい」
「はい 何かありましたら お電話くださいね」
「分りました では」
神山は1週間ぶりに合う亜矢子の笑顔を思い浮かべながら話した
新幹線こだまの乗車が始まり指定席に着くと地ビールを出し呑んだ
小田原まで僅か40分足らずの時間だが目をつぶってしまった

この1週間が頭の中で走馬灯のように廻った
祥子との話や由香里との話しなど 
今までこんなに苦労をして言い訳をした事がなかった
考えている間に 眠ってしまった


4月16日 木曜日
店に着いた神山を待っていたのは23日の銀座会の打ち合わせだった
銀座会は銀座1丁目から9丁目までの商店が参加している
販売推進と親睦を目的にしている会で銀座鈴やは理事になっていた
銀座通りで統一された季節ごとの飾付けやイベントなど
すべてこの銀座会で決められていた
勿論 みゆき通りや他の筋でも同じことが言える
今回 4月23日の会合は10月に行われる銀座祭りの
初回打ち合わせで 新規参加者などとの顔合わせが主であった
「しかし 課長 その話は全然聞いていなかったですよ」
「そうなんだよ 本来ならば 販促部長が出席するはずだったんだが」
「だめですよ 課長」
「しかし 山ちゃんが昇進した事もあって 部長がぜひともと言って」
「分りますが 実はその日に 上原の什器を確認しに行くのですよ」
「そうか、、、どうしてもずらす事は出来ないか」
「ええ 一番大切なときですからね」
「そうだよな 運送の手配まで何とかしたしな、、、」
「そうですよ それに今回は顔合わせでしょ」
「うん」
「それでしたら 今までのように販促部長でOKでしょ」
「うん、、、」
「そうしましょ ねっ 課長」
「そうするか」
「そうですよ 実は24日も休ませて頂きます」
「えっ」
「だって ここ暫く休んでいないのですから」
「そうか 仕事は大丈夫だよな」
「勿論ですよ 来週は大きな催事がありませんから」
「そうか」
「それに 翔が頑張っているし 大丈夫ですよ」
「分った 23日の件は販促部長に出席してもらおう」
「ありがとうございます」
神山は銀座会の打ち合わせを欠席する事になったが
それを聞きつけた由香里は
「何故 出席しないの もったいないじゃない」
「うん それはそうだけど 上原のほうが大切だし」
「だって その次の日もお休みでしょ 怪しいわ」
「由香里姫 僕だってゆっくりとしたい時がアルのです」
神山が由香里に責められているのを見かねて 倉元が
「おう 由香里姫 もう勘弁してあげなよ
山ちゃんも ここのところ休んでいないしさ なぁ」
「それは分るけど だったら私も一緒に行こうっと」
「だけど 銀座会の補佐をしなければいけないじゃないか」
「そんなの大丈夫よ 販促にも人材は豊富よ」
「おう 由香里姫 23日に仕事があるぞ」





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