2011年1月26日水曜日

Vol.200 青葉 -3-17


「ここすごく 雰囲気が良いわね」
祥子は喜んでいた
プライベートな話などにはもってこいの隠れ家であった
座敷に上がると 仲居がいつも通りビールとコップを用意し
何も聞かずに襖を閉めて下がった
「ねえ 何も注文しなくいいの?」
祥子は不思議そうに神山の顔を覗いた
ビールを呑んでいると襖が開き 鮮魚の盛り合わせが来た
お盆には冷酒が入った花器が乗っていた
普段は生け花に使われるであろう花器に氷と冷酒がセットされていた
紫陽花の花びらと冷酒の器が美しい色彩をかもしだしていた
「この紫陽花と器の調和ってここに合っているわね」
祥子は食材だけではなく食器類でも満足をしていた
神山も祥子がここの雰囲気に満足した事に喜んだ
ビールの後に冷酒を花器から取り出し冷酒グラスに注ぐと
日本酒の誘う香りが漂ってきた
紫陽花の花器と日本酒の香りで初夏を感じていた

「筒井さんはなんと言っているの?」
「まだ話をしていないの、、、」
「そうか、、、」
神山にはどうしたら良いものか最善策が浮かんで来なかった
「そうだ シュミレーションをしてみれば」
「なあに それ」
「うん だから浜野さんが本当の店長をするのさ」
「えっ」
「ほら 消防署とか警察署で一日署長があるでしょ」
「ええ」
「だから 本当の店長をしてもらうのさ
しかし お客さんはこちらで準備をしておくのさ」
「良く分らないけど、、、」
「実際の職務を体験してもらう 本当の店長なので
お客さんの苦情処理や 商品在庫の確認や全て行ってもらう訳です」
「う~ん、、、」
「要は商品の販売に長けていても全体をまとめる力があるかどうか
総合力のテストをするわけですよ」
「ええ その話は分るけど、、、」
「どうしたの?」
「彼女の総合力判断テストでは私と同じくらいのレベルなの、、、」
「えっ そうか そうでないと祥子としても店長候補として
上原を任せられないものな、、、」
「そうでしょ だから余計に困っているの、、、」
「しかし 浜野さんは本部の販売政策と外れている訳だろ」
「ええ」
「そうしたら その部分を筒井さんに話をして
本人が納得をして改善してくれればいいんじゃない」
「上手くいくかしら」
「大丈夫だよ 筒井さんの事だから 安心して」
「そうしたら 明日にでも筒井さんに相談するわ ありがとう」
「僕は上手く行くと思うよ 筒井さんのことだから」
「分ったわ ありがとう なんかすっきりしたわ」

神山と祥子が一つ問題を解決した時に襖が開き
「お待たせいたしました」
仲居が鮮魚の盛り合わせを持ってきた
祥子は捕れたての魚をみて
「凄いわ まだ動いている」
神山も美味しそうな鯛などを見て満足していた
「さあ いただきましょう」
「ええ 本当に美味しそうね 頂きます」 
二人は冷酒を味わいながら 鮮魚を口にした
楽しく話し食べて一段楽した時に
「祥子 実は今度の水曜日に小田原出張です」
きょとんとした祥子に神山は説明した
4月25日土曜日引渡しの件や什器の確認などを説明した
「だけど 24日までそんなに長いの?」
「う~ん 小田原だけでなく 御殿場もあるから、、、」
「ふ~ん」
「うん 御殿場で誘われているのです」
神山はうそを言いたくなかったが 心の中で謝っていた
「そうすると 22日から24日までお出かけなの?」
「什器の確認が終ったら 温泉です そして又 確認です」
「大変ね、、、」
「まあ 急いでいる時は監督者が見るのが一番だよ」





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