2011年1月4日火曜日

Vol.178 若葉 -7-14

「ありがとうございます 何かございましたらお電話を下さい」
「どうもありがとう ところで桜川さんは?」
「はい 今は仮眠に入っています 何かあれば伝えますが、、、」
「う~ん では起こすと大変だからそのままに寝かせましょ」
矢田部はくすっと笑って再び挨拶をして出て行った
神山は内藤からの封筒から現金とメッセージを出し読み始めた
【山ちゃん お疲れ様 楽しんで頂けましたか?
一つ 守ってください それはご婦人達の事を、、、
私も椿氏も容認していますが 公にはしたくありません
分っていただけると思います お願いしますね 他言は無用です
明日は田代君と朝食をした後に 副支配人の橘 啓祐氏が
仕事を見ます ほぼ デザインは決まっていますが 
山ちゃんのご意見をお願いします 打ち合わせ開始時間は
9時からです それと田代君は11時前に出てもらいます
山ちゃんには申し訳ないけど 一人で帰ってもらう事になります
封筒には少しばかりで申し訳ないけど 気持ちです
これからも 当社の仕事をよろしく頼みます 内藤一哉】
神山は読み終わった後
今までの謝礼金はご婦人達の件も含まれているのだと思った
大変な秘密を知り得た事に戸惑ってしまった
しかしわりっきって考えれば
あとくされの無い男女の付き合いが出来るので
先方の言う事を聞いていれば
マイナスには成らないだろうと考えた

地ビールの3本目を呑み始めた時に携帯電話が鳴った
ロレックスを覗いてみると24時を少し廻っていた
「はい 神山ですが」
「杉田です 遅くにすみません 今大丈夫ですか?」
「うん どうした」
「実は造花の件ですが、、、」
「造花は今夜は入るだろ」
「ええ それが先ほど社長がきて言うには 
サンプルと違った物を納品できないので 明日の夕方に
サンプル同様の造花を納めます と言われたんです」
「そんな ありがたい話だが 夕方で間に合うのか?
倉さんはどうしている」
「ええ 倉さん 徹夜と決めているのでまだ戻ってこないんです」
「行き先はいつもの居酒屋だろう」
「ええ 先輩に電話する前に心当たりを何軒か
探したんですが いないんです」
杉田はデコレーター仲間に聞いたりして探し回った事を伝えた
「分った 社長の電話は分っているから こちらから指示をする」
「はい すみません お願いします」
「うん 社長も一生懸命で気持ちは分かるけれど
飾り付けの時間の事を考えてくれないと困るな」
「ええ 出来れば 明日の昼までなら何とか間に合うと思いますが」
「分った 社長と連絡をとるから 翔は連絡を待っていてくれ」
「はい 分りました」
神山は電話を切ると 造花屋の社長に電話をした
「神山ですが こんばんわ」
「こんばんわ 神山部長 すみません」
「ところで社長 出来れば明日の午前中に納めて欲しいのですよ」
「そんな 無理ですよ 神山部長
時間が無いのでどうしても夕刻になってしまうんですよ」
「だったら 今まで作った サンプルと違うのもあるでしょう」
「ええ 断られた物はあります しかしご注文の半分程度です」
「それで結構 そしてサンプル同様はどのくらい出来ているの?」
「約半分程度でです」 
「そうすると 注文数は出来ている訳ですね」
「ええ 少し多めになりますが、、、」
「そうしたら 社長 これからそれを全部 納品してください」
「しかし 違うと困るでしょ、、、」
「それは困ります ですから違うのは今のが出来次第交換です」
「ええっ そんな」
「当り前でしょ サンプル通りの仕上がりでない 納期も遅れたし」
神山は造花屋の社長に現在ある造花の納品と
出来次第の交換をきつく言い指示した
電話を切ると杉田に電話をした
「杉田です どうでした 連絡を待っていました」
「話がついた 今夜これから納品してもらう 注文数全部だ
しかし サンプル同様は半分 後は出来次第交換で話がついた」
「先輩 今 倉元さんがここにいます 替わります」
「おう 山ちゃん 大変な事になったな 大丈夫か」
「ええ 今 翔にも伝えましたが 員数はあるので 
これから納品させます サンプル同様が半分でその他は
出来次第交換です なので 1階周りやウインドーなどは正規で
他の階は誤魔化しましょう どうでしょうか?」
「おう そうだな ウインドーで入れ替えはきついからな」
「では 倉さんお願いします」
「おう 大丈夫だ 今夜くれば問題ない」
「はい 翔に替わってもらえますか」
「おう 翔 部長さまからだ はい杉田です」
「いいか 倉さんの振り分けをきちんと聞いて設置してくれ」
神山は造花の各フロア振り分けを
倉元の支持どおり行って欲しい事を伝えた
「それで 先輩 明日はどうされますか?」
「明日は分らないから 翔に任せる 頼むぞ」
「そんな だって先輩がいないと 心細いです」
「ばか言っているな 倉さんも居るだろ 倉さんの面倒をみろよ」
「はい 分りました」
神山は電話を切るとほっとしたが
果たして杉田がどこまで指示通り出来るか不安だった
ほっとしてソファーでボーとしていると携帯電話が鳴った
「はい 神山ですが」
「私です 大丈夫ですか?」
電話は祥子からだった
「うん 大丈夫だよ」
「今 何回も電話したのに話中だったから どうかしたのかと思って」
「はは さては他の女と遊んでいると思ったの?」
「違うけど、、、」
「今 銀座と連絡をとっていた 造花の件で大変だよ」
「今夜入って来る造花?」
神山は経緯を話しニーナ・ニーナのブティックには
どちらの造花がいくか分らない事を伝えた
「大変ね 私は先ほど帰ってきました 楽しかったわ」
「良かったね 明日又 連絡するよ」
「遅くなりそう?」
「うん 多分遅くなると思う」
「はい では気をつけてね おやすみなさい」
「うん おやすみ」
神山はテーブルの上に置いた現金を調べてみた
1万円札が20枚もあった  -------20万円
ご婦人達の口止め料なのか仕事の謝礼なのか、、、
神山は亜矢子もブレスレットを欲しがっていたのを思い出し
このお金は亜矢子のプレゼントに使おうと決めた
眠気がしてきたので 急いでベッドに潜りこむと
亜矢子の透き通る肌を思い出しながら寝入ってしまった





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