矢田部はおつりを持参していなかったので
「おつりは明日 お帰りになられる時でもよろしいでしょうか」
「ええ 構いませんよ お願いします」
「はい 承知致しました」
「こんなに夜遅く申し訳ないです」
「そんな事無いですよ」
矢田部は仕事が終った安堵からか愛らしい顔つきで話した
よく観察するとプロポーションなど桜川によく似ているが
若いのだろう 顔に張りが有り胸も少し大きいように感じた
「では 神山様ご注文ありがとうございました
ごゆっくりとお過ごしくださいませ」
「うん ありがとう お休み」
神山は矢田部が部屋を出て行ったあと由香里に
「変な事 言っちゃたよ お休み だって」
「そうね 彼女まだ仕事中ですもん」
「うん、、、」
「しかし 大盤振る舞いされたわね」
「そうかな?」
「ううん 良いと思うわ これからですもん」
「僕はこんなにお金を持っていてはバチが当ると思ってさ」
「いいじゃない その考え方で 素敵よ あなた」
由香里は3本目を冷蔵庫から取り出し呑み始めた
「しかし由香里とこんなにゆっくりするのは初めてだよね」
「ええ 私もあなたをこんなに観察させて頂いたのは初めてよ」
「いつも仕事で話をしているから 分らない部分が多いね」
「そうでしょ だけど私はあなたを観察していたわよ」
「えっ どうゆう意味 それ?」
「だって 店長の肝いりで銀座に来たんだから どんな男かって」
「ふ~ん それでどうでした」
「うん 浮いた話は無いし 真面目だし OKだったわ」
「そうか そんな風に見られていたんだ」
「当たり前よ そんな事」
「それで 僕が酔いつぶれたとき
由香里がどうして介抱してくれたの?」
「あなたが 本当の男かどうか見る為よ」
「えっ そんな」
「そうよ だからあの晩は何も無かったの ごめんなさい」
「そうしたら 朝のあの時が初めてだった」
「いや 言わないで 恥ずかしいでしょ」
「そうなんだ しかしよく話してくれたね ありがとう」
「もう この話は止めましょ 恥ずかしいもん」
「まあ 僕も久しぶりで酔いつぶれたよ」
「ほんと 凄かったわ 呑むペースが速くて それで平気だった」
「だけど 店を出た途端分らなくなった」
「多分緊張していたのね 店長もいたし」
「うん なんか何を呑んでいるのか分らなかった」
「ねぇ もうあんな無茶な呑み方しないで お願いだから」
「うん そうするよ」
由香里は神山にもたれかかってキスを求めてきた
「私を一人にしないでね」
「うん、、、、」
「たとえ浮気をしていても忘れないで下さい」
「えっ」
神山は唇をふさがれ何も言えなくなった
と言うより由香里はその後の言葉を聞きたくなかった
(独り占めできないこと分っているわ だけど愛してね)
由香里は目に涙を浮かべながら神山とキスを続けていた
ほほを伝わる涙が神山の唇に当たり目を開いた
いじらしい由香里をきつく抱き寄せソファーに倒れ込んだ
由香里は神山の背中から手を解こうとはせず
さらにきつく手に力を入れ神山を抱きしめた
神山はこのままベッドに行っても良かったが由香里を考え
「ねぇ バスに浸かろう ゆっくりと」
「そうね 髪も流したいわ」
「そうしたら 準備をしてくるよ」
神山はバスルームで浴槽に湯を張っていると携帯がなった
「ねぇ あなた 携帯電話が鳴っているわよ」
由香里がバスルームに教えに来た
急いで携帯に出てみると祥子からだった
「祥子です こんばんわ 今大丈夫?」
「うん これから風呂に入る所です」
「ごめんなさい 寂しくなって電話したの」
「いや 誰でもあることさ」
「御殿場の現場はどうでしたか?」
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