2010年11月15日月曜日

Vol.128 若葉 -3-10

「ううん いいの お仕事ですもの」
由香里は そうは言ったものの ここでの夜景を
神山と楽しめない事に残念がっていた
ドアがノックされたので部屋のモニターで見てみると
先ほどの女性従業員がコックを連れて部屋の前にいた
ドアを開けると女性従業員が
「神山様 大変お待たせいたしました
只今から昼食の準備をさせて頂きます 暫くお待ちください」
そう言うとダイニングテーブルに神山たちを案内し
コックに料理を並べるよう指示した
並べられたものはいずれも魚と地元の野菜類だったが
食をそそる料理ばかりだった
「申し遅れましたが 私はこちらの建物の
グランドマネージャーを務めます桜川 亜矢子と申します」
「どうもありがとう」
由香里も気品ある上品な女性に軽く会釈をした
神山は桜川の胸についているネームプレートを見て
「桜川さんは グランドマネージャー 凄いですね」
「はい」
「そうすると この建物の総責任者ですか」
「ええ 一応そうなっております」
「では 宜しくお願いします」
「はい かしこまりました」
挨拶が終るとコックが料理の説明をしたが神山は
桜川の容姿に見とれて説明が頭の中に入らなかった
(素晴らしい 由香里と祥子を足して割ったようだ)
由香里が気が付きこちらにきついまなざしを向けてきた
一通り説明が終った所で
「なにかご用向きがございましたら 
内線の7200までお願いします」
「はい わかりました」
神山が鼻の下を伸ばした顔で言うと 由香里が
「済みませんが 御殿場駅に現像済みフイルムを
取りに行って頂けますか」
「はい かしこまりました 預かり書のような物はございますか」
由香里は席を立ち 店で貰った半券を渡した
「では 18時過ぎに受け取りに行ってきます」  
「料金は今渡しておきますのでお願いします」
神山はジャケットからお金を取り出し桜川に渡した
桜川はどうぞごゆっくりお召し上がりくださいと言って
部屋を出て行った
「なによ あのだらしない顔は きらい」
「なにを怒っているんだよ」
「だって でれでれしていたでしょ」
「そんな事は無いよ 普通だよ 由香里の思い過ごしだよ」
「ば~か 分っているんだから」
「そんなに怒らないで さあ 乾杯しよう」
由香里はこの場で余り怒っても得策でないと考え
「では 乾杯ね」
「しかし 昨日から魚ばかりだね」
「そうね でもお肉を頂くより健康にはいいでしょ」
「何を怒っているんだよ」
「怒ってなんていませんよ」
神山はわざと空になったコップを突き出し
「おねがいします」
由香里はくすっと笑ったが きつい口調で
「二度とだらしない顔しないでね 分った」 
「分った」
突き出されたコップにビールを注ぎ自分もコップに注ぎ呑んだ
「ねぇ このビールを買って 家で呑みたいから」
「うん分った 僕も買うよ 美味しいもん」
並べられた料理にはお寿司も入っていた
「だけど ここでお寿司が味わえるなんて思っても見なかった」
由香里が
「ここのはここの美味しさがありますよ 築地とは違うわ」
「そうだね ご飯とかも違ってきているからね」
「でも あきない味だし おいしいわ また太るわ」
「そんな事 ないでしょ」
由香里と神山はそんな話をしていると1時を過ぎた
桜川がデザートを冷蔵庫にしまったのを思い出し
「はい あなた デザートですよ」
「わぁ 生クリームのデザートですか」
「おいしそうよ いやね」
由香里は目の前のデザートを美味しそうに食べた





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