2010年11月10日水曜日

Vol.123 若葉 -3-10

「お魚は焼き方が難しいので、、 私も失敗していますのよ」
若女将は焼き魚のほかに焼いて食べるものを
由香里に説明していた
焼きあがると 取り皿に盛付け部屋を出て行った
若女将から教えられたとおり食材に火を通していった
二人は今日の予定や御殿場の話しなどをしているうちに
朝食を食べ終えた
「そうそう 忘れる所だったわ」
由香里は自分のバッグから茶封筒を取り出し神山に手渡した
「なに」
「今回の出張前借金よ」
「なに それ」 
「部長になると出張経費が事前にもらえるのよ」
「へえ そうすると交通費とか宿泊代とかも貰えるの」
「そうよ それと部長になると出張手当てがすごいの」
「そんなに凄いんだ」
「だって 課長で7千円でしょ 部長は3万円よ」
「すごいや」
「それから宿泊代も無制限だから
といっても一泊5万円までOKかな」
「それも凄いね」
「だから 宿泊を3万円程度のホテルにしておいたわ」
「領収書はどうするの」
「結果報告書に記入するだけだからいらないわよ」
「へえ 課長と部長だと大違いだ」
「そうよ それに交通費だって タクシーが認められているもの」
「それも記入するだけでいいの」
「そうよ」
「しかし 悪用するのも出てくるんじゃないか」
「そうね あなたが銀座に来る前にやめた塩谷部長がそれで解雇よ」
「へえ そうすると 僕なんかやばいじゃん 今夜のホテル」
「ううん 大丈夫よ地域名しか書いていないから 
それに3万円だもの」
「大丈夫かな」
「私が 報告書を書くのよ 大丈夫に決まっているでしょ」
「わかった ところでいくら入っているの」
「交通費と宿泊代ともろもろで14万円入っているわよ」
「えっ そんなに貰っていいの」
「ええ だから部長さんはいいでしょ」
「そうだね ありがとう」
神山は由香里を抱き寄せキスをした
「さあ 仕度をして写真を撮りに行きましょうね」
「そんな」
「何言っているの アルタのお仕事も兼ねているのでしょ」
「それはそうだけど」
「はい では仕度をしましょう あなた」
由香里は神山の手を取って立ち上がらせた
もう一度由香里を抱き寄せようとしたが くるりとかわされた
神山も着替えを始め出発する準備が整うと
由香里も薄化粧を済ませ仕度ができたと言った
部屋を見渡し 神山はタオル掛けに由香里のショーツを見つけた
「由香里 これ忘れ物」
「わぁ 恥ずかしい 何やっているの早くちょうだい」
わざと由香里の目の前でぶらぶらさせたが直ぐに返した
「嫌だわ 若女将に見られたわね」
由香里は顔を真っ赤にし俯いてしまった
(なんで 忘れたの おばかさん)
「さあ では出かけましょうか そろそろ9時だし」
神山は電話で出発する事を告げ 熱海までのタクシーも頼んだ
玄関脇にある受付で会計を済ませると タクシーがすぐにきた
若女将が 
「またのお越しをお待ち申し上げています」
丁寧にお辞儀をすると 仲居達もお辞儀をし送ってくれた

タクシーの窓を開けると海の香りがして気持ちよかった
「今日は これから三島まで新幹線でしょ」
「うん その後は沼津まで行って御殿場線で御殿場だよ」
「随分と大変な所ね 御殿場って」
「だけど アウトレットは東名高速の御殿場インターから
すぐと言っていたよ」
「そうなの」
「それに オープンしたら御殿場駅と会場は無料の
シャトルバスが1時間に何回も出るそうだよ」
「そうよね でないと集客が大変よね」





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