「そうね それよりホテルでゆっくりしましょうよ」
「そうだね 社長も待っていることだし」
「そうよ」
由香里がカメラの入ったリュックをさげ駅に歩き始めた
神山も由香里の後を追って駅に向かった
タクシーが並んで乗車待ちをしていたので乗り込み
「ゴテンバ グランド イン までお願いします」
「はい 分りました」
タクシーは先ほどの現場とは反対の富士山に向かった
距離的には同じようだったが早く着いた
タクシーを降りると目の前には白亜の建物が迫ってきて
入り口に待機していたボーイが丁寧にお辞儀しながら
「お疲れ様でした カウンターまでお供させて頂きます」
そう言うとしゃれた手押し車を用意し手際よく積んだ
中に入ると驚いた事に中庭があってさんさんと太陽がさしていた
吹き抜けの脇にエレベーターがあり 4階まで上った
グランドフロアに着くと正面にカウンターがあり
神山達が進むと皆お辞儀をして向かいいれた
神山はアルタから貰った宿泊券を示すと従業員が
「少々 お待ちくださいませ 椿を呼んでまいります」
カウンターボーイはすぐさま電話し
「神山様 ご一行がお見えになられました」
指示を受け頷き受話器を置くと
「神山様 どうぞこちらへお願いします すぐに椿が伺います」
そう言うと窓際の景観がすばらしいエントランスに案内された
直ぐに女性従業員がお茶と和菓子を用意した
神山と由香里は 窓から見える景色に今日の疲れを癒していた
「神山様 遅くなりました こちらが椿でございます」
神山と由香里はソファーから立ち上がり 軽く会釈をした
二人は儀式の名刺交換をした
「神山様の事は 内藤社長から伺っています」
「いえ そんな大した事はしていないですよ」
「いえいえ 部長ご昇進おめでとうございます」
「いや 早いですね」
「ええ 彼とは今でもお付き合いをさせて頂いていますから」
「そうなんですか」
「まあ お座りください お飲物は何になされますか」
「そうしたら 斉藤さんどうしますか」
「私は このままで」
「そうしたら 咽が渇いてしまったので ビールを頂けますか」
「はい かしこまりました」
椿は後ろに控えている副支配人にビールを指示した
「申し送れましたが 彼が副支配人の橘と言います」
「神山様 いらっしゃいませ 副支配人の橘です」
橘は由香里と神山に向かって深くお辞儀をした
「この度は 内藤社長のお仕事で大変ですね」
「いえいえ 私は何もしていませんよ」
「ご謙遜を 伺っていますよ 上原の件も」
「いや 参りましたね 情報が筒抜けですね」
先ほどの女性従業員がグラスビールをテーブルに置いた
神山は椿に礼をした後 ビールを口にした
「美味しいですね どこのビールですか」
「さすが 神山様ですね こちらは当社のオリジナルです」
「やっぱり ホップが利いていて咽越しがいい 美味しいですよ」
「お褒めに預かりましてありがとうございます 斉藤さんもどうぞ」
由香里は神山が美味しそうに呑んだのを見て
「頂きます」
由香里も半分くらい呑み
「凄いわ 美味しい ありがとうございます」
「お二人に誉められて 光栄です」
「いえ 本当に美味しいですよ」
「神山様 アルタの会社から追加のお仕事が有ったと思われますが」
「良くご存知ですね」
「ええ あの仕事は私どもがお願いした話なんですよ」
「御殿場駅もですか」
「ええ それで彼の会社にお願いしました
サイン関係の仕事でもトップクラスですからね」
「そうですね 安心できますしね」
「では ホテル内のサインはどこを考えられていますか」
「いま 考えている所で お恥ずかしい限りです」
「では 色々な角度から撮影しておきます」
「そうですね お願いします お昼は済ませましたか?」
「ええ まだです」
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