「はい神山様 こんばんわ なにかございましたか?」
「遅くにごめんなさい
実は今頂いている日本酒を発送したいのですが」
「はいそれでは配達伝票をお持ちいたします」
「はい お待ちしています」
「由香里はどうする」
「私も頼むわ」
「うん 僕が送るよ」
「えっ いいの そんなに甘えて」
「何言っているんだ これでも安いもんだろ」
「ありがとう うれしいわ」
由香里が手帳を用意しソファーに座ろうとした時に
ドアがノックされた
由香里がモニターで確認すると女性従業員が立っていた
ドアを開け中に入ってもらうと彼女は
「神山様 今晩わ 私がサブの矢田部と申します」
由香里と神山にお辞儀をした
「こちらの日本酒を気に入って下さいましてありがとうございます」
「うん凄く美味しい」
「ところで 何件さまのお届けですか?」
「ええと 全部で10件くらいかな」
「はい ではこちらの伝票にご記入をお願いできますか」
神山が手渡されたのは一括伝票を渡された
個別に一枚一枚伝票に記入するのではなく大変便利な伝票だった
神山は催事課スタッフの住所を書き入れた後自分の携帯で
アルタの内藤社長の住所を書こうとした時
由香里が自分の手帳を手に取り次のページを開けると
アルタの高橋まで連絡先が記されていた
神山は自分の携帯をしまい手帳をみて書き始めた
全て書き終わり確認したとき
ニーナ・ニーナの筒井副社長を忘れているのを発見したが
祥子の住所が分り変な疑いが生まれるのもどうかと思案していると
「では 神山様 今ご記入されましたお届け先に
どのタイプを送られますか 記号を右のマスにご記入お願いします」
神山は矢田部に言われた事を上の空で聞いていた
伝票に記入するのは記号なのにセット数を記入していた
由香里がおかしい事に気がつき
「神山さん ここは記号を記入するの」
「あっ そうか ごめんごめん」
セットタイプは一升瓶3本、2本、1本、
700㏄3本、2本と5種類の
セットが用意されていた
「斉藤さん 課長と倉さん 内藤さんは3本セットで 他の人は
一本で良いよね」
「そうね 気持ちだから 良いでしょ」
「あと ニーナ・ニーナの筒井さんだけど、、、」
「ごめんなさい お取引業者様で無いので書いていません、、」
「うん いいよ 自宅から送るよ」
「ごめんなさい 神山さん」
「うん いいよ あとは漏れないよね」
「ええ ご自分の住所をお届け先に書かないと」
「そうだね それと 斎藤さんの住所も書きなさい」
「はい 分りました」
一括伝票を全て書き終え矢田部に渡した
矢田部は申し訳なさそうに
「神山様 こちらの商品につきましては
サービス扱いが出来ませんのですがよろしいでしょうか」
「勿論ですよ ここまでサービスして頂いたらバチが当ります」
「ありがとうございます 只今計算をさせて頂きます
暫くお待ちくださいませ」
由香里は改めてカタログを見てみると一升瓶1本が1万円なので
送料を加算すると20万円以上の出費になると思っていた
しかし 今回の神山はそのくらい還元してもおかしくないと思った
今のうちに高名を知らしめておけば
これ以上のものが転がり込んでくる事に間違いないと信じていた
由香里と神山は矢田部が計算している間に
もう一本を冷蔵庫から取り出し呑み始めた
矢田部は送料で戸惑ってさかんに胸に付いている小さなマイクで
連絡を取り合っていた
ようやく伝票計算が終わり
「神山様 遅くなって申し訳ございません
合計金額は18万8千でございます」
「はい 分りました 今もってきますので、、、」
神山はジャケットの内ポケットから19万円を出した
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