2010年10月11日月曜日

Vol.93 若葉 -1-8

4月9日 木曜日 快晴

「おはよう」
「早いのね おはようございます」
「うん 銀座をみて青山だと 時間が欲しいからね」
「ごめんなさい」
「うん 大丈夫だってば もういいよ ほら一応担当者だから
それで顔を出しておけば 円満解決さ 終わり良ければ全て良し」
「私は 9時までに本社なの だから ここを8時15分に出るわ」
「そうか そうしたら一緒にいこうか」
「大丈夫 早くない?」
「うん どうせ催事場で 細かい事言われるから 聞き役ですよ」
「だったらシャワーを浴びて 支度をしてくださいね」
「うん 祥子は」
「私はもう済んでいますよ」
祥子はキッチンで調理をしながら神山に話した
「うん わかった」
神山はシャワーを浴びる為に バスルームに入り
熱い湯を体にかけるとしゃきっとした
バスタオルを巻き部屋に戻ると 焼き魚のいい匂いがして
「祥子 お腹が空いてきた いい匂いだよ」
「ほんと お腹が空くわね もう直ぐよ ビールを呑んで待っていて」
神山は缶ビールを持ってテラスにいくと いつものように
タバコをふかしながら 景色を見ていた 
「あなた 出来ましたよ どうぞ」
「ありがとう ねえ 昨日の洗濯物はどうしたの?」
「ちゃんとたたんで仕舞ってありますよ」
「うん ありがとう でも助かるな」
「もう 早く食べよ」
祥子はニコニコして席に着くと 缶ビールをちょこと呑んで
「はい 残りは味わって 呑んでね」
神山は受け取ると 少し口に含み
「うん 祥子の味がする なにか一味違います 美味しいよ」
祥子はクスクス笑い 箸を進めた

食事が終わると 祥子が支度をしている間に食器を洗い
「じゃ 部屋に戻って 支度をしてくるよ それから
昨夜の図面は忘れないようにね 出来ればコピーをして」
「はーい いってらっしゃい」
神山は自分の部屋に戻ると バッグに図面類をいれて
忘れ物が無いか 確認をした
祥子の部屋の前でインターフォンを押すと直ぐに出てきて
「では あなた行きましょうか」

久しぶりに朝早く出勤すると 気分がよく清々しい気持ちだった
祥子は濃紺のビジネススーツを着こなし 雑誌から出てきたような
美人キャリアウーマンを連想させた
二人で上原の住宅街を歩くのもこれでちょうど1週間になった
「ねえ 覚えている もう今日で1週間も一緒よ」
「もう1週間か 早いな」
祥子は何時ものように固く腕を組み豊かな胸を押し付けて歩いていた
神山もこの1週間は色々な意味で大変な思いをした
自身のニーナ・ニーナ応援 祥子の件 市川の件 由香里の件
思い出すと目が廻るくらい忙しい時間を過ごしていた
祥子もホテル住まいから上原の引越し 神山の件 
上原店舗オープン 林の件 御殿場準備と目白押しの
スケジュールをこなしてきた
二人ともお互いがお互いを認め合い 信頼しなければ
この1週間が無事に過ごせたか否か考えていた
ゆっくりと歩いているのにすぐに代々木上原駅に着いた
ホームで並んで待っているとまもなく電車が滑り込んできた
二人は満員の中で 向き合う形で立っていた
電車がゆれるたびに神山の体が祥子のバストとぶつかっていた
祥子も苦笑いをしていたが 神山は下半身が元気になった
そんな異常を察知した祥子はきつい目付きで
「なに考えているの ば~か」
と周りに聞こえないように言って来た
「なにも考えなくても 自然の力だよ」
神山も反論した
表参道駅に着き銀座線に乗り換えをしたが こちらも満員だった
又 先ほどと同じように向き合う形になってしまった
「こんど元気にしたら 今夜はお預けですよ」
祥子から先制攻撃の一言があったので 神山は何も考えない事にした
直ぐに青山1丁目の駅で 地下鉄の扉が開くときに





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