2010年10月4日月曜日

Vol.86 芽吹き -3-7

青山3丁目の交差点でタクシーを降りると携帯電話をかけた
「神山です 遅くなってごめんね 今着いたよ」
「わかったわ 迎えに行きます 待っていてね」
携帯電話を切って 直ぐに祥子が現れ
「早いでしょ お疲れ様」
「うん 早いよ どこなの お店って」
「ここよ」
「ははは ここなら早いや」
祥子は交差点直ぐ傍のビル2階にあるイタリア料理店をさした
「このお店って 美味しいけれど あまり人が入っていないのよ」
「どうして」
「うん 多分高いんじゃないのかな」
「そうか 今はリーズナブルなお店が多いからね」
「さあ 入りましょ」
二人は腕を組んで階段を上がると シックな造りのお店だった
祥子が座っていたところに案内されると
「ねえ 今夜はステーキでも頂きませんか」
「おお いいね そうしよう なにかおつまみが欲しいな」
祥子はメニューを神山に渡し見てもらう事にした
「まずは 生ビールとピクルスとサラダがいいな」
「ええ そうしましょう」
神山はボーイを呼ぶと生ビールなどを注文した
「ねえ さっきの運送中の件だけれど こんなに遅い時間なんだ」
「ええ 一旦よそのお店から引き上げるでしょ それからだから」
「なるほど なら仕方ないね でも驚いたよ 無いんだもん」
「林さんから連絡は無かったの?」
「えっ 林さんから 連絡? 無かったよ
って言う事は倉さんには 伝わっているんだ まあいいか」
二人が話していると 生ビールなど運ばれてきた
「わぁー ボリュームが凄いね まずは乾杯」
「受賞 改めておめでとうございます」
祥子と神山はジョッキをカチンを合わせて美味しそうに呑んだ
「美味しいわ 私 呑まないで待っていたの」
「ごめんごめん 美味しいね」
祥子はニコニコしながらサラダを取り皿に盛り付けると
「はい あなた どうぞ」
「うん ありがとう」
神山は自慢話にならない程度に コンテストの事を話した
常連の倉元の事や 店長が喜んでいる事など話していると
祥子は一言も聞き漏らすまいと 真剣にでも笑顔で聞いてくれた
ビールが終わると赤ワインとステーキを注文した
先に赤ワインがワインクーラーに入れられて運ばれた
ボーイが上手にコルクを抜くと グラスにワインを注ぎ
「どうぞ 召し上がってください」
ボーイはそういうと クロスをワインボトルにちょんとかけ戻った

美味しいワインを呑み 柔らかいステーキを食べ 楽しい時間を
過ごせたと神山は心から喜んでいた
デザートを食べている時に 神山の携帯電話がなった
「ちょっと 失礼」
神山は電話に出ると杉田からだった
「やあ お疲れ様 どうした」
「先輩 ニーナ・ニーナの商品がまだ来ないんですよ
それで 倉さんがありそうな場所を探しているんですが無いんです」
「うん 分かった こちらから連絡するよ」
電話を切ると祥子に
「祥子 まだ商品が届いていないんだって」
「えっ いくらなんでも遅いわ もう10時でしょ 可笑しいわね」
そういうと祥子は携帯電話で運送会社に電話をした
「えっ 出ているの どこに向かっているの うん えっ倉庫
ちょっと待って ねえ 倉庫に入ってしまったの どうしよう」
「うん 明日朝一で届けてくれないかな 穴が空くよ」
祥子は頷き
「ねえ そうしたら そのコンテナは銀座の鈴やさんなの そう
うん だから明日朝一番で 鈴やさんに配送して 担当者は
倉元さんよ あとは 杉田さんよ そう催事課でいいわ お願いね
ねえ 何時ごろになるの えっ10時 もっと早くして お願い
うん いいわよ割高でも わかったわ9時ね はーいお願いします」
電話を切ると神山に
「ごめんなさい 明日朝一番で 9時前後に届くようにしました
本当にごめんなさい 折角の時なのに」
神山は直ぐに携帯で連絡を取ると杉田が
「今 倉元部長がいますから 変わります
おう 山ちゃん どこ探しても無いんだ」  





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