二人はまだ何も出来ていない御殿場の話で盛り上がり
鮮魚のにぎりや巻物を美味しく食べ 幸せな気分だった
祥子は何時ものように腕を硬く絡ませ歩いていた
「もう 御殿場の図面が来ているかしら」
「分らないな」
「来ていると良いわね 楽しみだわ」
二人は御殿場の図面を気にしながらエレベーターから降りた
「そうしたら 仕事の連絡を確認するから自分の部屋にもどる」
「ええ 分ったわ 早く済ませてね」
「はい 了解しました」
神山は祥子と別れ自分の部屋に入り
FAXを見てみると御殿場の図面が届いていた
ダイニングテーブルに広げてみると
思ったとおり確定していない部分が多かった
神山は土日の御殿場出張を早める為に由香里に電話した
「神山ですが、、、」
「はい 由香里です」
「こんばんわ 今 大丈夫?」
「ええ こんばんわ」
「由香里どの 明日の夜から出られるか?」
「えっ どうしたの?」
「別に理由は無いけど」
「ええ 私は大丈夫だけど あなたは?」
「大丈夫だ 明日で一段落さ」
「そうしたら どうすれば良いですか」
「何時に東京駅に来られる?」
「遅くても7時には行くことができます」
「分った 明日又連絡します」
「宿泊先はどうされますか」
「うん 明日こちらから予約を入れる」
「はい分りました 楽しみにしています」
「うん フィルムの購入を忘れずに」
「ええ 分っています あなたのお仕事ですものね」
「そんな いじめるな」
「では おやすみなさい」
「うん おやすみ」
神山は電話を切ると部屋着に着替え
FAXで送られてきた図面を持って祥子の部屋に行った
「わぁ大きな図面」
祥子は今まで見た事の無い大きさの図面に驚いた
「まあ 普通の人は余り見た事が無いと思うよ」
祥子のダイニングテーブルも大きかったが図面を広げると
紙がはみ出してしまった
「だけど もうここまで決まっているの?」
「そうだね もう場所は決まっている様子だね」
祥子は図面を隅から隅まで見たが よく分からなかった
しかし神山は詳細を事細かに説明するのは
分らない事を余計に分らなくすると思い説明を控えた
どのような場面にでも当てはまるが話をする相手が
内容の下地が無いときに いくら分かるように説明しても
本質が伝わらない事が多く 間違って伝わった時には
大変な事態を招く事になる
神山はこの様な事態のとき伝える側 伝えられる側で
失敗している時が有ったので慎重だった
「だったら いつ行きましょうか?」
「やはり 祥子が言っていたように夏にでもどうかな?」
「いいわね 嬉しいわ」
祥子は今一度図面を見た後
「ねぇ なにか呑む?」
「うん ナポレンンが有るから呑もうか」
「わぁ 久しぶりよ」
「分った 僕の部屋から持ってくるから待っていて」
神山はナポレオンを取りに部屋に戻った
本来は自身及びアルタ関係者と呑む物だったが今夜の話は
仕事が中心だったので自分でも許す気分になった
部屋を出ようとした時に電話が鳴った
「はい 神山ですが」
「私 由香里です」
「うん どうした?」
「先ほど市川さんから電話があって 別れたって」
「へぇ ほんとかよ?」
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