2010年10月10日日曜日

Vol.92 芽吹き -3-7

落とさないように持って祥子の部屋に入ると
「はい これだけあるんだ」
「わかったわ 洗濯機に入れてください」
神山は洗濯機に入れるとスイッチを入れた

「ねえ お部屋に戻った時に何か着てくればよかったのに」
「あはぁー まあでも寒くないから 大丈夫さ」
「ねえ シャワーを浴びますか」
「うーん ビールを呑んで遅い昼寝がいいな」
「まあ」
祥子は冷蔵庫から缶ビールを取り出しグラスに注ぐと
「はい あなた ふふふ 今日はありがとうございました」
「もう直ぐすると ソファーが来て テーブルで呑めるんだ」
「それまで ゆっくり寝ましょうね」
二人は窓から入ってくる気持ちよい風に 酔いながらビールを呑んだ

ベッドに入ると どりらからともなく求め合い抱き合い戯れた
「ねえ あなた 私の体可笑しいのよ」
「どうしたの」
「ふふふ あなたがいけないんだから」
「なんで」
「休火山の目を覚ませたの」
「もう 変な事言わないで びっくりだよ
でも それである部分女性が取り戻せたんだから 良しとしてよ」
「まぁ お上手 ふふふ 
ほら ホテルの時にはこうやって男性の人と過ごす時間が無いでしょ
だから 凄く嬉しいのよ」
「そうだね その部分では開放感があるよね」
「でしょ ふふふ」
「さあ 少し寝ましょう」
「うん だいてぇ」
神山は祥子を抱きながら 睡魔の誘いに乗った

けたたましく鳴る目覚ましで 祥子と神山は目を覚ました
「しかし いつも思うけど あの音大きいね」
「いいでしょ 寝坊が無くなるし」
「さあ 服を着よう このままじゃね」
二人は普段着を着ているところへ ドアフォンが鳴った
「はーい 久保です」
「電気屋ですが TVをお届けにあがりました」
祥子は1階の自動ドアを開けると 玄関のドアも開けた
暫くすると 大きなダンボールを抱えた 作業員が
「お待たせしました」
そういって 部屋の中に入り 開梱作業が終わると
「どこに置きますか」
祥子は来るだろうソファーの反対側において貰った
配線をしてリモコンを操作し 確認すると
「ご不明な点がございましたら お電話をください」
「はい ありがとうございます」
作業員はキャップを脱いで 丁寧にお辞儀をして帰っていった
祥子は早速TVをつけると 久しぶりのTVだと言い喜んでいた
暫くすると家具屋が来て ソファーとテーブルを設置してくれた
二人はビールを呑んで 7時のニュースを見た
「いいわね このソファー」
「うん この部屋にぴったりだよ いいなぁー」
「そうね 貴方のお部屋は広いけれど 事務所だもんね」
「うん でも仕方ないか その分ここでゆっくりするさ」
「ねえ お寿司食べようか?」
「いこうか」

二人は そのままの格好で 駅前寿司にはいると女将が
奥の座敷に案内してくれて ビールを持ってきてくれた
「ねえ 女将さん てんぷらが欲しいな 勿論鮮魚のつまみもね」
女将さんは 笑顔で答えると 大将に伝えた
「じゃ ソファーの搬入 おめでとうで乾杯」
「はーい かんぱい」
祥子と神山はビールを美味しそうに呑むと お互い見つめあい
笑顔がこぼれ 神山はそんな祥子にますます引かれた
「ねえ 帰ったら 図面で分からない所を教えてください」
「どうしたの 急に改まって いいですよ」
「うん だって早く仕上げる為に 貴方が来たんでしょ
だからのんびり出来ないじゃない 私もがんばる ねっ」
「うん わかった ありがとう それならポイントを教えてあげる」
「ほんと 嬉しいわ」
祥子は笑うと白い歯が綺麗で 吸い込まれそうだった
(うん 祥子と一緒なら 多分楽しい時間が作れるな)
神山はビールを呑むと日本酒を注文し楽しく呑んだ


「自分なりに直した図面を見てもらいたいの」
「うん いいよ」
祥子は神山にアドバイスをして貰った上原店舗の図面を持ってきた
「この壁にある棚なんだけど どうもしっくりしないのよ」
棚板を支えている支柱が露出しているのが気になっている様子で
詳細図面を見てみると祥子が示した部分の棚は造り付けの
棚には違いないが 棚受けアジャスターを上下する事によって 
棚の高さを変えることが出来る構造だった
祥子が言いたいのは支柱が太く 
棚板との間に隙間が出来る事を嫌がっていた
「経費の関係で出来るか分らないけど 
壁を少し前にすればこの支柱と棚板の隙間は無くなるよ」
「そうなの」
「うん 壁に支柱を埋め込む形にすれば 
支柱が壁から出てこないから見た目も綺麗になるよ」
「そうですね ありがとうございます」
神山は支柱の部分の簡単な断面図を書いてあげると祥子は頷いた
「施工業者に壁と棚の隙間を無くすように指示すれば
そのように直してくれるよ」
「どうもありがとう やっぱりあなたに話してよかったわ
それで 商品配置は決まっていたんですけど 
隙間があるとこぼれてしまう恐れがあるものは置けないでしょ
だから 特に小物を置いたときは心配だわ」
「そうだね わざと隙間を空けて空間を演出する方法もあるけど
この場合の隙間は無いほうが使い勝手がいいと思いますよ」
祥子は心配事の一つが解決したので 顔が明るくなった
この後も神山のワンポイントアドバイスが続いた





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