「大きなサンプルで助かります ありがとうございます」
祥子は壁に置いてあるサンプルを見ながら高橋に言った
今まで見た事が無い大きさのサンプルだったが
自然光が入ってくるこのブティックでは助かった
「そうしたら幸ちゃん 床材のサンプルを置いてください」
「はい そうしたら日が入ってくるこの場所でいいですか」
「うん そうだね そこにお願いします」
床材を置くと壁に立て掛けてあるサンプルの色が変化した
「やはり 百貨店の中と違うのね」
「そうでしょ 外からの光を受けるので違ってきますよ」
祥子は神山に勧められて壁紙の選定にはいった
神山のアドバイスもあり仕様の決定は早く進んだ
床材に付いても従来百貨店仕様のものと
新たに神山が選んだサンプルを選ぶ事になった
祥子が選んだのは従来仕様より一段明るめの色だった
勿論 そこには神山のアドバイスがあった
「今までのだと 光が入って来ない時間帯になると
少し濃すぎて コントラストが強くなってしまう」
「そうね このサンプルでよく分るわ」
「そうしたら 床材はこれでいいね」
「ええそうします 全体が明るくて素敵です」
「従来の百貨店より少し明るくなったと思うよ」
仕様材料が決定した事でアルタの高橋が
「山ちゃん ありがとう 完成が早まるよ」
「よかったね その分丁寧にね」
「任せておいて 後で修正日程をFAXします」
「そうしたら ニーナ・ニーナの筒井さんにもお願いします」
「了解ですよ 筒井さんとは明日お会いしますからその時にでも」
「筒井さんも大変だな 工事ばっかりで」
「違いますよ 久しぶりのゴルフですよ」
「そうか 筒井さんもゴルフをするんだよな」
「そう ほんと久しぶりだそうですよ」
神山と高橋は今後の段取りを決めて祥子に話した
「私のほうは早く完成すればありがたいですわ」
「そうだね 判断が早いから仕事がしやすいよ」
祥子は嬉しそうに神山に小声で
「あなた ありがとう」
祥子は時計を見てもうすぐ10時になるので
「では 私は一足先に失礼します ありがとうございます」
「とんでもないです 朝早くからありがとうございます」
「では 失礼します それと神山さん ちょっと」
「えっ?」
「日曜日の連絡はちゃんと下さいね」
祥子はそう言い残すと皆にお辞儀をして改札口に向かった
神山も一緒について行き改札口で祥子が
「ほんと 気をつけてくださいね」
「うん わかった ありがとう」
神山は祥子を見送り現場に戻るとサンプルを片付けていた
「悪いけど そのまま置いといてくれないか」
「うん いいけど どうして?」
「例えば 関係者が来た時に話をしやすいから」
「全然構わないよ もう材料は決まったしOKですよ」
高橋は神山に少し厚手の茶封筒を手渡した
「ありがとう」
神山は茶封筒の中を覗いたが5万円どころではなかった
「どうしたの こんなにいっぱい?」
「佐藤部長が社長に話をしたらその金額になった」
「しかし まいったなー」
「まあ お金は有り過ぎて困る事無いでしょ」
「それはそうだけど」
「実際にその写真を使わせてもらうし 安いでしょ」
「そうしたら カメラマンにお手当てをあげるよ」
「その代わり 写真はいっぱい撮って来てね」
「うん 天気も良さそうだし」
「では 気をつけて行って来てください」
「うん 何かあったら携帯に連絡をください」
「そんな野暮はしませんよ ごゆっくり英気を養ってください」
そんな話をしながらシャッターを降ろし別れた
神山は部屋に戻ると 早速銀座の事務所に電話を入れた
「おはようございます 鈴や催事課です」
「おはよう 由香里どの」
「おはようございます あなた」
「なんだ 市川君はどうした」
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