「ええ 綺麗ですよ 頭も切れるし」
「おう ワシが仲人するから 式を挙げろよ」
「ちょ ちょっと待ってくださいよ 店長 それは無理ですよ
会社の人事のように 自分の駒を動かすのと違いますから」
「そうか 俺が口説けば 間違いないぞ」
「ほら そうしたら僕じゃなくて 店長の奥さんになっちゃう」
「ははは 上手だな わかった 上原は絶対に失敗しないでな」
「はい 分かりました」
「そうそう 時田さんも喜んでいたよ 電話があった
さあ 元気な山ちゃんを見たから 帰るとするか」
池上店長が立ち上がったので 神山は部屋の扉を開けると
「うん」
頷いた後に 耳元で
「今度は二人きりで呑もう こちらから連絡する 頼むよ」
神山は笑顔で頷き 店長をエレベーターまで見送った
席に戻ると 課長が神山のところに来て
「山ちゃん よかったでしょ 店長があんなに喜んでいるって
おれ久しぶりに見たよ」
「おう あんなにご機嫌なのはひさしぶりだぞ 山ちゃん」
「そうなんですか」
「おう きっと時田さんから褒められたから余計に嬉しいんだ」
「しかし 山ちゃんを見習いなさいって 言われてしまった」
「ははは 見習ったらどうだ」
「もう 倉さんも 苛めないでくださいよ」
「でも由香里さん なぜビールって分かったの?」
「うん それはね 以前一回あったのよ 確か夏だったわ
暑い暑いというから アイスコーヒー出したの そしたら
今日は気分がいい といわれて 答えようが無かったの
そのうちに ビールが呑みたいって言い出したの
だから 偉い人にそこまで言わせないように 気を使うわけ」
「なるほど そういう事があったんですね」
「だって 言いたいけど なんとなくいえない時ってあるでしょ
特に偉くなると だからぴーんと来たわけ」
「翔 分かったか」
「はい ようく分かりました」
神山は店長から貰った封筒を開けると 現金10万円入っていた
由香里が見に来て
「凄い 私 初めての経験よ」
「おう 俺も初めてだな あの人がお金を出すって聞いたことない」
「わぁー これで又 プレッシャーがかかるな」
「おう いいじゃないか 励みになって」
「まあ そうですね」
「おう 帰りに耳打ちしたのはなんだ」
「それはまずいでしょ だって店長の耳に入ったら大変ですよ」
「ははは そうだな 悪かった ごめん」
暫くすると 入れ替え準備のために業者が 催事課の部屋に来て
催事担当者と什器など入れ替えの確認をする
神山も部長昇進の挨拶を受けながら 確認作業を進めた
7階の大催事場は閉店時間より早く閉めて 撤収作業に入る
神山は時間を見て 大催事場に行く時 倉元に
「倉さん 7階と地下を見て 大丈夫なら帰ります」
「おう 明日は出ないよな」
「ええ 倉さんはウインドーですよね」
「おう お決まりのウインドーだ」
「では 失礼します そうそう 木曜日はNNビルに行きます
多分 午前中だと思いますが 連絡は入れます」
「おう がんばってな」
神山は業者の人間と部屋を出ると 催事場に向かった
「しかし 山ちゃん凄いですね 部長と受賞」
「うん まあついていただけさ」
店内に入ると 若い女性がお辞儀をしてくるので
神山もお辞儀をして挨拶をした
催事場に行くと商品撤収の最中で什器屋も待っている状態だった
什器屋の担当者に
「いつもの事だけど 多少の余裕は持ってきているよね」
「ええ 大丈夫ですよ」
催事場の什器は必ずといって良いほど 過不足がでる
原因は商品撤収の時に メーカーや売場が催事場に返さないで
そのまま持って帰るのが大きな原因になっている
特に売場の場合 商品撤収を借りている什器で売場にもって行き
木曜日にその什器が空くと そのまま放置しておくという
什器屋泣かせの売場も 結構ある
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