2010年10月26日火曜日

Vol.108 若葉 -2-9

「今 課長と出て行ったわ 例の話しでしょ」
「よかったな 後はお金か」
「そうね ところで今日はこちらに来られるのでしょ」
「うん 3時に会議だから昼過ぎに行く」
「お昼はどうされますか」
「そうしたら 銀座築地の寿司屋いせ丸に1時でどう?」 
「うれしいわ だけどどうしたの?」
「別になんでもないよ」
「わかりました 1時に待っています」
「込んでいる時間帯だから予約を入れて奥を頼みます」
「分りました 座敷の予約を入れておきます」
「では お願いします」
神山は電話を切るとアルタの佐藤部長へ電話した
「鈴やの神山ですが」
「よう おはよう どうされました」
「佐藤さん たくさん資金を頂きましてありがとうございます」
「いや山ちゃんの仕事だから それに写真の提供も一緒だから」
「ありがとうございます」
「いい写真をいっぱい撮って来て下さいね」
「はい 分りました」
神山はお礼の電話を切って茶封筒の中を改め驚いた
現金50万円と手紙が同封されていて
【御殿場の撮影お願いします このお金は 写真の版権料も
含まれています 少し安いですがお願いします 内藤】
現金の多さにもびっくりだが御殿場にあるホテルの
スイートルーム宿泊券まで入っていた
昨日貰った無料宿泊券よりも更にワンランク上のホテルだった
神山はどうしたものか考えたが 今夜からの旅仕度を始めた
仕度を終え仕事に掛かろうとした時 携帯がなった
「もしもし 祥子です」
「神山です どうかした」
「ううん 今 筒井に今朝の事話したの」
「うん どうなった」
「凄く誉められたわ ありがとう」
「よかったね 本当に」
「神山さんがいるからよ ありがとうございます」
「どうしまして」
「では 気をつけて行って来て下さいね」
「はい 祥子も気をつけて」
「は~い では」
祥子の嬉しそうな声を聞き終え仕事に集中した
今日の会議で必要な書類を揃えると杉田にFAXし
杉田の携帯に電話をした
「神山ですが」 
「はい 杉田です」
「今 今日使う資料をFAXした 後で目を通しておいてください」
「ありがとうございます」
「では 頼んだよ」
神山は電話を切ると 今夜の宿に予約を入れ
他の仕事に集中し何とか出かけられるようになった
小さ目の旅行鞄と仕事の封筒をもって部屋を
出たときは12時30分を廻っていた

これから地下鉄を利用すると間に合わないので車を使う事にした
金曜日の昼間とあって道路は空いていて
13時前に築地のいせ丸に着いた
扉を開けると 思っていた通り歌舞伎座帰りの女性客で
賑わっていたが店員が神山を見つけると奥の座敷に案内した
「ごめん 遅くなった」
「私も今来た所です」
「今夜から出かけることになってごめんね」
「いいえ 嬉しいわ」
そんな会話をしていると襖が開き座卓にビールとお通しが運ばれた
「今日はどうされますか」
「うん 余りゆっくり出来ないから 適当にお願いします」
神山は店員に食事を中心に作ってもらう事を指示した
「では お酒は控えめでいいですか?」
「うん そうだね その代わりビールを2本お願いします」
そう言うと店員はお辞儀をし襖を閉め出て行った 
「どうしたの 今日は すこし豪勢ですね」
「まあ その話は後で ねっ 明日の成功を祈って乾杯」
神山はアルタからの件は後で報告すればいと思って
「由香里と二人きりで来るのは初めてだよな」
「ええ ありがとうございます」





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