「いつもながら 感心するよ」
「ありがとう 誉めていただくと嬉しいわ」
「ビールをいただこうか?」
祥子はビールを注ぎながら
「そうね 日曜の夜まで逢えないもんね」
「そんな たった2日だよ」
「分っていても 辛いものよ」
「日曜日は何時ごろ帰宅する予定なの」
「まだ分らないわ 向こうで夕飯を食べてくると思うの」
「そうすると最終になるね」
「ええ また時間がはっきりしたら電話します」
「うんお願い 僕のほうが早く帰宅すると思うよ」
「今夜は一人で寂しいでしょ」
「そんな事は無いよ アルタと呑み会かも」
「呑みすぎないでね お願いします」
「ありがとう そんなに心配するなよ」
「ところで 今夜は何時の新幹線?」
「まだ取れていないの 会社で取ってもらうわ」
「僕が見送りに行けたらいいのだが ごめんね」
「いいわよ お仕事ですから」
普段と違い会話が盛り上がらない朝食だった
食べ終わった後片付けを神山が行い 祥子は仕度に専念した
「祥子 片付けが終ったから 一回戻るよ」
「は~い この部屋に忘れ物しないで下さいね」
「そうだね 出かける前に点検するよ」
「それと 慌てなくていいからね 9時丁度でOKだから」
「ありがとうございます もうすぐよ」
神山は図面を持って部屋に戻った
仕事用の電話に留守電は何も入っていなかったが
杉田翔から昨夜遅い時間のFAXが何枚かきていた
【杉田です 5月の店外催事の件ですが、、、、、
、、、従いまして売場との打ち合わせが 明日15時になりました
出切れば神山さんにご出席を お願いしたいのですが
お時間の都合は 如何でしょうか】
神山はバーゲン催事なので任せても良いかなと思ったが
【神山です おはようさん 連絡をどうもありがとう
今日の全体会議には出席をさせて頂くよ
販売促進にも伝えておいてください】
FAXで返事を出した
現場打ち合わせが終れば一旦部屋に戻る事ができるので
カジュアルな仕度をして 祥子の部屋に行った
「早いのね もう少しだから待っていてね」
「うん 慌てなくていいよ 忘れ物ないようにね」
「あなたはそんな格好でいいの?」
「うん 現場打ち合わせが終ったら戻ってくるから」
「一緒に行かれないの?」
「祥子の後 詳細を詰めなければいけないから 無理だよ」
「そうね、、、 さあ仕度は終ったわ」
祥子は手押し式のキャリーとショルダーバッグを持って
「仕度出来ました あなたの忘れ物ない?」
「うん 点検するよ」
祥子が出た後 この部屋の戻ることが出来ないので
この3日間必要なものを探したが 特に必要なものは無かった
「大丈夫だよ 何も無いよ」
「では 少し早いけど現場に行きましょうか あなた」
「そうしようか」
祥子は両腕を神山の首に巻き軽くキスをし
「御殿場 気をつけてくださいね」
「わかった ありがとう 友子ちゃに甘えてきなさい」
二人は4月の爽やかな風を受けながら上原の駅に向かった
「おはようございます 今サンプルを運んでいます」
高橋はサンプルが間に合った事を神山と祥子に話した
アルタの社員はサンプルを迅速に並べ終え
「神山さん おはようございます どうぞ見てください」
「幸ちゃんおはよう 朝早くからありがとう」
「とんでもないですよ これでいいですか」
幸三は壁のサンプルを指して聞いた
大体サンプルをこんなに大きく作る事は無かったが
この様に外光を取り入れる所では 出来上がりに近い状態で
判断するほうが間違いが無かった
蛍光灯の下で見る色と自然光で見る色は違ってくる
神山は何度もこの色の違いを経験しているので
祥子に分ってもらう為に大きなサンプルを用意した
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